私は、ほそぼそながらも郷土史に関する依頼を受ける為、打ち合わせなる行為がある。決まって同じスナックだ。
全く金銭にならぬ仕事な故、担当者か山師だか、暇潰しか、みたいな六十歳の男と会話する。その時間はタダ酒は呑める故に「郷土史。諸々な労力を時給に換算して二百円か……」なる頭脳を否定し朗らかに、その間は笑ってハナシを聞く。タダ酒だから。
郷土史に関しては、まあ嘘、誇張が多い故に、杉良太郎の台詞を借りれば「正直正太郎」の私は「戦って死ぬ」みたいな台詞を吐き、当然、その界隈から嫌われている。このナガサキに坂本龍馬関連像、有りすぎ、馬鹿が。坂本、ナガサキ産まれじゃないし、みたいな。
その馬鹿が「よかね。また連絡するばい」と帰り残された私は郷士の身分な故に慌てたがスナックのママより「後、三十分、時間はありますよ」と聞かされた。更にビアをサアビスして呉れた。
私は複雑な家庭環境で育っていて、その内容をママにチョロっとしたら、ママが「私が母親になるばい」と似非でも語って頂き信頼はあった。やがて私は泥酔した。
スナック。私みたいな乞食が集まる、ふきだめ……のイメージがあるだろうが昨今は違う。如実に直ぐ、私と同年代ガールが二人、訪れた。
スナックな為、ベルリンの壁は無い。私達は直ぐざにチープトーク。延長! 金銭不味いけど。
ガール二人は、地元のファッキン・テレヴィのレポーターらしかった。確かに、ルックスは良い。諸々なハナシをした。然し無論、いくら地方局でも華やかな世界には横暴が罷り通るなるのを聞いた。私は酔っていた故「杉良太郎に、頼むしか無い」と答えた。
最後。ポケットに二百円しかないなあで帰り。
そう云えばさ、俺はココのスナックのママに「母親だとおもって」なる台詞を貰い有り難く感じたのだよ。
ガール曰く「え? それ皆んなに言ってますよ。」
「そうなんだ。君も?」
「当たり前」
「そっか俺は息子。君は娘。大勢の家族が増えたね」
「アハハ、そうばい」
このまま、いっそ、このレポーターのヒモになろうか? と鑑みたが早くも見透かされた。
「プライベートで会うとかは噂を聞いているので無理。家族でも〜」
あの山師、諸々なトコロで私のハナシをしているのか……。ブン殴りに行こうとしたが、良く考えれば悪名は匿名に勝る、である。私は大家族なスナックを離れ帰宅した。
大家族になりたかった? に関しては私は猫さえ居れば良いから否定する。居ないが。
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