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超短編小説「猫角家の人々」その38
猫角姉妹がチャレンジした成年後見人詐欺は、手間が掛かるばかりで、思わしい結果が出なかった。採算が合っていない。だが、これに司法書士や弁護士が一枚噛んでいると、格段に効率の良い、頭のいい犯行が実行できるのだ。
猫角姉妹が考えたことは、ホースエイジ社の中華麺社長の属する裏社会組織「朝鮮悪」はとっくのとおに実行していた。朝鮮悪には、名古屋の弁護士事務所が共犯者として常にともに行動しているのだ。その弁護士事務所、四つの葉弁護士法人には、弁護士以外に司法書士もいる。社会保険労務士もいる。万全の陣営なのだ。
弁護士は、エリートの職業と思われているが、それは昔の話だ。新司法制度で世に出た弁護士たちは、世間の荒波に晒され、四苦八苦している。仕事が全然ないのだ。
国の司法制度改革で司法試験の合格者が増え、2003年には19000人だった弁護士の数が、2012年には32000人に増えている。一方で、刑事・民事訴訟の数自体は、2003年の611万件から、2012年には379万件に激減している。
日本を裏から支配する「外国勢力」は、日本を米国のようなせちがらい訴訟社会に変えようと企んだのだ。弁護士を増やせば、仕事のない弁護士が発生する。そうなると、弁護士は無理やり仕事を作って収入を得ようとする。「訴訟社会」の誕生である。対立の嫌いな日本人を米国のような好戦的な人種に変えようというのだ。日本人の「和」を壊せば、日本人の「集団力」は減衰する。日本人の底力を恐れた外国勢力の姦計。それが、新司法制度だったのだ。
結果、仕事の奪い合いになり、困窮した弁護士は、ろくに仕事もなく巷をうろついている。中には、切羽詰まって、やばい仕事に手を出す弁護士先生もいる。顧客の反社会的要求に応じて、禁じ手を使う。はっきりと法を冒す。社会の底辺のゴロツキの悪事の手伝いをする弁護士が、夜の闇の中を徘徊しているのだ。
必定、弁護士の不祥事が多発する。除名、業務停止といった懲戒処分は、2004年の49件から2013年には98件に増えている。まともな弁護士が、弁護士会に嵌められる「冤罪」は別として、間違いなく不良弁護士は増加傾向にある。懲戒処分がなされない「隠れた不正行為」の方が、マジョリティーであろう。弁護士の不正は、発覚しにくい、おいしい分野なのである。
弁護士は、困れば、なんだってやるはずだ。保険金殺人の幇助ですら。(続く)
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