オリオン座の吐息

猫が眠る

エセー

741文字

短い未恋愛小説です。

少女は夜中に自転車に乗りながら星空を眺めた。オリオン座が見えた。冬だと思った。息が白かった。空を見上げながら自転車を漕いでいたものだから前に気を付けなかった。少女の自転車はもう一台の自転車とぶつかった。

「イテテ……」青年が自転車ごと倒れていた。

「あっ、ごめんなさい!」少女は自分も膝に怪我してるのに構わず、青年のもとに駆け寄った。青年は立ち上がって言った。

「僕の方こそ、ごめん。空を見上げていたから気が付かなかったんだ」

少女は驚いて言った。「私も空を見上げていたのよ……」

青年も驚いた表情をして言った。「奇遇だね!」

青年は少女が膝をすりむいているのに気づき、「大丈夫かい! 怪我をしているじゃないか」

少女は答えた。「ええ、こんなの何でもないわ」。

 

青年と少女はしばらく見つめあった。青年がやがて口を開いた。「僕の家は近くにあるんだ。実家だけどね。そこに救急箱があるからそこで応急処置をしたほうがいいよ」

少女はしばらく考えて答えた。「そうね、そうしようかしら」。

 

二人は自転車を引いて同じ方角へと向かった。「僕は風間っていうんだ、よろしく」。

少女は答えた。「風間さんね、よろしくお願いします。私は高橋、高橋かずみといいます」

「かずみちゃんね、よろしく」青年は続けた。「それにしても今日は星が綺麗だね」

「お月様が隠れているから星が綺麗なんだわ、きっと、風間さんは星座の名前を知っていて?」青年は答えた。

「僕はオリオン座くらいしかしらないよ。オリオン座はわかりやすくていいね」

少女は言った。「また、奇遇ね。私もオリオン座しか知らないのよ」。

 

二人の間に沈黙が流れた。

二人は一緒に自転車を同じ方向へと引いていった。

 

 

 

 

2020年12月25日公開

© 2020 猫が眠る

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