珈琲と煙草

猫が眠る

エセー

380文字

僕と恋人はスターバックスで珈琲を飲みながら本を読んでいた。僕は夏目漱石を読み、彼女は村上春樹を読んでいた。「それから」は冗長な小説だった。「1Q84」も恐らくそうであろうと思う。彼女がふと顔を上げた
「あなたの書いたもの、最近面白くない」
僕は言った
「それは分かってる」
「申し訳ないけれど……」と彼女が続ける。
「分かってる」
「分かってるんだ」
僕は頷いた。そしてまた本に目を落とした。
「お手洗い行ってくるわ」彼女が席を立った。
僕は頷いて再び本に目を落とした。
彼女はしばらく帰ってこなかった。
この出来事を記録したらよかろうと思った。
そしていまこれを書き続けている。
彼女はすでに帰ってきていて村上春樹の「1Q84」を読んでいる。僕はいまひたすら煙草が吸いたい。マルボロが吸いたい。
しかし僕はまだ珈琲を飲みながら夏目漱石の「それから」を読み続けるであろう。
分かってるんだ。

2020年11月26日公開

© 2020 猫が眠る

読み終えたらレビューしてください

この作品のタグ

著者

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

"珈琲と煙草"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る