初・ガールズバーについて

山谷感人

エセー

1,417文字

 最早、娘に接していた感慨。

 昔。
 或る偉人が「金銭は無い時ほど使え。何かが降りて来る」と述べていたのを思い出し、私は昨日、夜の街に繰り出した。
 よくよく鑑みたら、この三ヶ月程、素麺か袋麺しか食べてない暮らしなのであった。最低でもアルコールで日々、八百円は使うし本来、食に関しては「仕方なく食べるか」なる感覚な故、拘泥はなかったが、ふと思った。ガールと暮らしていた往時、テレフォンにて「ゴメン、今夜は多忙で食事を作れないわ。スーパーに寄るけど何が良い?」に対して、寿司か鰻か冷やし中華と返句していた。たまに「スーパー閉まっていた」で、すき家の牛丼を持って帰宅したら、私は頑として喰らわなかった。
 そんな私が今や、素麺と袋麺の美味しんぼプロであった。料理人が良く云う「茹で時間は感性」それをマスターしつつあった訳だ。
 昨夜、有り金を全て持ち巷に降りた。
 私は現在、坂道の上に住んでおり、夏の暑さで三回、転けている為、タクシーのヘヴィユーザーである。
 運ちゃんに「ガールズ何処が良い?」と聞いた。お判りで有ろう。出陣した私はタクシーの運ちゃんも連れて行こうとした訳である。運ちゃんには朝まで労苦、仕事と断られたが店に案内された。
 私は友人やらを誂う為にキャバクラには若い時に良く行ったが、ガールズバーなる箇所はヴァージンであった。
 私は初対面のガールズの前では所謂、ロックスターを演じる故、モテるのである。特に、偶々であるが猫か兎か判断しにくいテーシャツを着ていた故、実際にキャアキャアの嵐であった。先に入店していた、スーツのサラリーマンからギロリと睨まれたのは仕方ない。
 ガールズの話しをすれば、危惧したのは個人情報を漏らし過ぎである、本人の。客の男性は良いだろうが、ガールズが「何処の大学に通っている」「誰某と知り合いだよ」とトークしたら心配する。私は再来年には五十歳になる訳で、そのガールズ達は娘が居たらの齢である。無論、私の「ホストが客で来ているのかよ」なる話術も有ってで奥でボソボソとガールズを口説く、ホワイトカラーには云わないで有ろう。偶々、私が現在、滞在している直ぐ下に九州では有名な、お嬢様向けの大学が有り、そこを出たガールと近辺のハナシをしたが、共通ワードが多すぎて「俺は良いが、余り個人情報……、大丈夫かよ!」と、すがちゃん最高ナンバーワン的にツッコんだ。
 ガールズバー。
 まあ結句、私に愛らしい娘がいたらなる年齢の集まりである。私は基本、自ら若い女性に親密になろうとはしない。ライン交換を紳士的に、お断りした。だが三時間は愉快に滞在した。
 帰り、その、お嬢様向け大学卒のガールが「あの大学、ミッション系なのですが、私、日蓮宗なんです」と語り、コイツは年齢に関係無くセンスが有りイイなと思い「また、会えたらライン交換しようぜ」と投げキッスをしたが、部屋までの道程、最早、タクシー代も使い果たし、どうしようも無いから、延々と続く坂道を歩きながら、あのガールは秀逸だなあ、明日、どっかから借財して行き、ライン交換するかあ。と考えていたら、事実として、その大学が或る手前で転けて、顔から血を出した。二十分くらい坂道で倒れ、ロングアンドワイディングロードで帰宅したが現在、顔にキズあるし、そもそも娘みたいなガールと「明日も会いに行こうかな」なる発想が、神様からしたら噴飯だったのだろう。月夜だったし。
 バッチリ、罰を受けました。素麺の茹で時間に悩んでいる方は、いつか相談に乗ります。

2024年9月19日公開

© 2024 山谷感人

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