新・ギズに捧ぐ

山谷感人

エセー

1,112文字

 猫カフェ論をかいて浮気してないよ! の流れで

 ちょうど三年。私が猫と暮らした日々は、公園の段ボール経由で五月二十九日、そこを退去したのも奇しくも三年後の五月二十九日な故、忘れる筈がない。
 飼い猫は馬鹿に似ると云う。往時、私はヒモ、良く云えば家事を一切、やらない主夫であった。当然、猫(ワイフがハリウッド映画のグレムリンからギズモと名付けた、拒否権は無論、ない)、ギズとほぼ二十四時間、一緒に居た訳である。それは私のように、耽溺、思い込みでは非ず、なる。
 良く言われる猫は懐かない、寝てばかりだ等々は、ない。ギズは初日から私にダイヴしてきた。そうして私が寝るまでヤンチャしていた。元ワイフが「寝るへ」とベッドに連れて行くまで一睡もしなかった。匂いでコイツ、飼い主、従おうなる従順なトコロも私に似ていた。
 やがて、ボスが居る間はお淑やかになった。悪い意義じゃない、甘え上手な一面を魅せるのである。
 元ワイフが仕事に行くと派手に来る。一日中、暴れる、一睡もしない。トイレに行くとドアの前に居て封鎖、シャワーを浴びていると勝手に入り追従(猫は水を忌み嫌うとは都市伝説)、小説を読む為、無視していたら遠くから狙い猛ダッシュで猫パンチをして隠れる。おいで、と呼べばダルそうに来て、私の膝に乗り、ちょうど小説の台になるように頭を本の上に乗せる。やがてスプレー(尿を漏らす)。愛くるしいかった。なお、元ワイフには逆らえないのも同じで(良い意義で)彼女が寝るて云えばくっついて寝るし、あれは猫の本能として謎なのだが、元ワイフが帰宅する時は、どんなに私とじゃれていても、サッと玄関前に赴き「大人しく待っていましたニャー」をする。多分、元ワイフの事は母親、私の事は所謂、馬鹿な遊び相手、と認識はしていたのだろう。三階に住んでいたが、隣の部屋にも来客はあるのだから足音だけで元ワイフ帰宅! なる習性には、驚くしかなかった。
 ギズと別れて三年半。申し訳ない、私は近隣の野良猫の大スターだけど、君に注いだ愛情の、半分も与えてない。さもあらず。ギズ、今も起きたらストーカー・レヴェルで君の写真を観てから動く。
 これ以上のギズ愛語りはカラマーゾフの兄弟ほどの大作に、なる為、泣きながら省く、残念だ。
 追記・私が最初に部屋を出た時、ギズが咥えては持って来ていたライオンのぬいぐるみを、これは渡さない、パンツ等は後日なる台詞を吐いてグッドバイしたのだが、本年、四月。非暴力で有名な私が、千葉から来た友人に「この、ぬいぐるみギズの面影だよ」と渡した時、陋屋の壁に投げ付けられた時は、初めて、殺意を憶えた。
 

 グッドバイ・ギズモ。コンビニにアルコールを、買いに行く道程、野良猫に会うだろうがオールウェイズ、君だけを愛してやまない。

2024年9月1日公開

© 2024 山谷感人

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