この世で最愛で最低な君へ

この世で最愛で最低な君へ(第4話)

実琴

小説

835文字

人を愛する事が出来ない事に惰性していた私が初めて人を愛した人は優しくて最低な人でした。堕ちていく…愛に憎悪に

管理職になる前の私はただのパートリーダーだった。パートから始め1年もかからずリーダーに昇進。1年後には女性上司に管理職やらないかと言われて、給料が安定するから管理職になった。パート時代は皆と同じ様にキッチリ休憩時間を取っていたが、管理職になってからは休憩時間がバラバラになった。

お昼休憩も時間通りに取れる事はなくなっていた 。でも私はその方が楽だった。人前で食事をしたりぎゅうぎゅう詰めの喫煙所はストレスでしかなかった。管理職になって休憩時間が自由になり人が居ない時に休憩する事がほとんどになった。お昼ご飯に関してはお弁当を作るのは自分。母と弟と暮らしてたけど母は体調を崩し働けなくなって、弟は高校生。必然と私が働くしかなかった。給料さえ貰えれば特に苦もなく働いていた。年齢の割には手当もついていい給料だった。

いつもの様に一段落ついて喫煙所を見たら誰も居なかったので、私は休憩する為に喫煙所に入った。

1人だけの空間、なんて楽なんだろう。

仕事は時に厳しい事もあったけど、こうやって1人煙草を吸ってる時間は私にとって大事な事だった。

煙草を吸いつつ携帯電話を見ると、彼氏という関係性の彼から

(今度いつ会える?)

とメールが来ていた。

その文面を見て私は思い切り溜息をついていた。なんて返そうか悩んでる時に

ガチャ

喫煙所の扉が開いた。反射的に見たら、その人物は大田さんだった。

「お疲れ様です」

と軽く挨拶したら

「お疲れ様です」

と返ってきた。

私は部屋の隅に座っていた。大田さんも気を使ってか私と反対の隅に座った。

私は携帯電話は見つつ煙草を吸い続けた。

2人だけの空間に沈黙が流れる。

気まづいし、そろそろ仕事に戻ろうかと思ってた時に、

「石渡さんて彼氏居るの?」

と思いもよらない言葉が出でいた。

「はい、一応。では私は先に仕事戻りますね」

と言って喫煙所を後にした。

それが仕事以外での最初の会話だった気がする。

彼氏が居るかどうかなんてよく聞かれるし、いつもの事だ。大した意味なんてない、そう思ってた。

2022年2月13日公開

作品集『この世で最愛で最低な君へ』第4話 (全28話)

© 2022 実琴

読み終えたらレビューしてください

この作品のタグ

著者

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

"この世で最愛で最低な君へ"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る