第一章 始まりの時
これは僕が体験した、不思議で歪んだ世界の物語。ここから、ただのいじめられっ子だったこの僕、上野飛華流の人生が大きく変わり始める。
皆、狂っていた。そんな狂った者達が、日常に潜む非日常へと僕を少しずつ引きずり込んでいく。
一年D組、帰りの会の時間。
「一宝中学校、三年C組の男子生徒が行方不明になりました。ここ数年、この町ではそういった事件が多発していますね。残念な事に、うちの学校でもついに、一人目の被害者が出てしまいました。ですので、寄り道せず、気をつけて帰りなさい」
顔面ニキビだらけの男子教師が真剣な顔をして、僕達にそう警告した。この人は、担任の加藤先生だ。
身近な人間が被害に遭う事で、事件がより身近なものに感じる。
「えっ ? その人、俺の部活の先輩なんだけど……」
「まじか……誰かに誘拐されたのか ?」
「いや、殺人事件かもよ……」
「遺体が、どこかに隠されていたりして……怖すぎるー」
周囲の生徒が、ざわざわと騒ぎ出す。そんな中、透き通った茶色の瞳を持つ、華やかな顔立ちの美少女が口を開いた。彼女は、花崎凛。クラスのマドンナだ。
「神隠しなんじゃないかな……」
凛の言葉で、しばらく教室は静まった。
一宝町の住人が、次々と姿を消すこの怪事件。行方不明になり、発見された者はいない。それに、死体も何も見つからない。全て、あっさり消えてしまうのだ。
だから、神隠しと信じる人もいるらしい。
「あーあ、飛華流が消えれば良いのになー」
閉じている様な細い目で、こちらを睨みつけてくる、小柄な男は佐鳥黒也。学級委員でありながら、僕の事を虐めてくる。
僕は運悪く、こいつの隣の席にされているんだ。黒也が、消されてしまえば良いのにな。
「こらこら、よしなさい……アッハハハハ」
加藤先生は、黒也の心無い発言を注意したかと思えば、いきなり笑い声を上げた。
すると、それにつられてクラス中が笑い出す。
このクラスの担任は、生徒と共に僕の事を馬鹿にする様な腐った人間だ。
そうだ皆、僕が存在する事を許さない。確かに、生きていても何の役にも立たない僕は、消えるべきだよな。
僕も、神隠しか何か事件に巻き込まれてしまえば良いのに。
悲しくて苦しくて、今にも泣いてしまいそうだ。だけど、必死に涙を堪え、じっと耐えた。
しかし、どうして黒也は僕をいじめるのだろう。僕は、彼に何も悪い事をしていないのに。
黒也とは、小学生の頃から関わっていたけど……昔は、こんな奴じゃなかった。僕が困っていたら助けてくれたりする、良い奴だったのに。それなのに何故、彼は変わってしまったのだろう。
"MARVELOUS ACCIDENT 未知の始まり"へのコメント 0件