組本部の最も奥まった部屋は、二つに区切られていた。
ドアを開けて手前側にアサシン、その向こうに若松と賢之助がいる。
十人のアサシン達との戦いは、熾烈を極めた。
興味本位で透視を用いたことを悔いる。
アサシン達の幼年期・青年期は、異常の一言に尽きた。
親からの思い出が、体中にタバコを押し付けられただけの者。
隣の寝室で、生計を立てるために毎晩、男と寝ていた母親を持つ者。
父親に無理矢理犯された者。
児童施設で、老いた女性施設長に毎晩レイプされた者。
首吊り自殺した母親の小便と便を、雑巾で掃除した者……。
腐った人間達が作り出した腐った世の中で腐っていった者達。
彼達に感情など無い。
無論、善悪も無い。
機械の如く人間を殺し続けてきた彼達は、手強かった。
破壊する瞬間だけは、ステルスを一旦解除しなければならない。
そうしなければ、こちらの攻撃が相手を素通りしてしまうから。
アサシンの一人を斬り殺す。
ステルスで姿は消しているが、帰り血でワタシの体の輪郭が紅く浮かび上がる。
その一瞬を狙ってくる。
ワタシの柔肌に撃ち込まれる、二十発以上の弾丸。
トカロフ、マカロフ、ベレッタ、ショットガン、サブマシンガン……。
同士討ち防止のポジショニング。
的確なタイミングと命中精度。
ワタシの体から飛び散る鮮血。
体中に鮮血の噴水ができる。
激痛に支配される寸前、ステルスの「すり抜け」を起動。
床に倒れこむワタシ。
ステルスで誰もワタシを破壊できない。
全てがすり抜けるから。
この能力が無ければ、鉛の玉を体中に撃ち込まれ、ナイフで切り刻まれていただろう。
アサシン達はワタシの特性を把握している。
これまでの破壊に関する報道、一階でのヤクザ達との戦闘。
それらから情報を得ている。
常人なら信じない超人的な能力。
だが彼達は違う。
彼達は戦力評価をするだけ。
ただ、それだけ。
ワタシの超人的能力を奇異に思わない。
恐怖も抱かない。
彼達は、ただ依頼された「マト」を破壊するだけ。
こんな人間達も存在するのか……。
人を殺すこと。
人の命について考えること。
それらに全く興味を持たない。
かつて幼少の頃、彼達が周囲の人間から顧みられなかったように。
少年時代から、世間にその生存を疎まれ続けたアサシン達。
彼達は知っている。
人間なんて、その程度の動物だと。
その命に、価値は無いと。
だから彼達は手強い。
平和、人権と耳障りのいい言葉を念仏のように唱えていれば、本当にそんな世界が実現すると妄想を抱いている人間達とは、一線を画す。
生き残るために、真に必要なもの。
それは絵に描いた理想にあらず。
力。
他を凌駕する力。
それを使いこなす能力。
残りのアサシン、九人。
全能力を駆使し、破壊し尽くす!
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