【 30秒で読める話:06】1999
1999年7月 恐怖の大王は、確かにやってきていた。
ただ、誰も知らない話がある。
海沿いの工業地域には更地が広がっている。
そこに、おれたちは集まった。
直管マフラーのけたたましい音が夜のしじまを破る。
煌びやかな特攻服の刺繍が揺れている。
総長の合図だ。
おれたちは、叫んだ。
「恐怖の大王、でてこいや!」
夜空にメンチを切って、怒号が響く。
しかし、いつまで待っても何も起こらない。
タバコが切れ、小競り合いまで始まる。
ラジカセに合わせ、Cウォークの練習をする者もいる。
誰かが言った。
「これってつまり、おれたちに恐れをなしたってことじゃねえ、大王?」
「だな。おれら、撃退したな。すげえよ、地球守ったじゃん!」
どっと歓喜の叫びが上がった。
総長は、チーム一の頭脳を誇る参謀に合図をした。
参謀は不敵に頷き、ガラケーをパカリと開いた。
「あっ、おまわり?
おれらいま、恐怖の大王いんじゃん、あいつ、ぶっ倒したんだけど。
うん、そー、そー、ダムスのやつ。で、賞金とか、そういうのどうなってんの?」
遠くから、静かな潮騒だけが聴こえる。
「はあ、お前何いってんの?
誰のおかげでぬくぬく暮らせるって思ってんだよ。
だめだ、バカとは話ができねえ。話わかるやついねえの?
おま――、切りやがった」
参謀は総長を見た。
「これがバビロンのやり方だ」と総長は重々しくいった。
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