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僕たちは「紫色の鏡」という言葉がどうしても忘れられない

破滅派25号「児童文学」応募作品

たかひろ

破滅派25号「児童文学」応募作品
15歳以下(中学生)対象

ホラー作品を書いてみました。
ツッコミどころは大量にありますが、そういうのもホラー作品の醍醐味だと思っております。

タグ: #破滅派25号「児童文学」

小説

8,008文字

「紫色の鏡」という言葉を知ってる?

この言葉を20歳の誕生日まで憶えていると死ぬと言われている、昔からある都市伝説。

僕たちも少し前まで本気では信じてはいなかった……

夜のレンタルスペースで、僕、達樹と幼馴染の翔太が持ち込んだ大量の段ボールを開梱している。

今回借りたところは、本来はオフ会や少人数でのパーティーなどに使用する、広めで小奇麗な部屋である。ここを借りたのは、大量の除霊グッズを広げたりする場所がここしか思いつかなかったからだ。

「これ、失敗したら、明日の朝に僕たちの死体が発見されてニュースになるのかな」

「失敗したらな。大量の除霊グッズと一緒に、誕生日が同じ幼馴染の大学生が二人、レンタルスペースで謎の死を遂げているわけだ。ニュースどころか、謎の未解決事件として俺たちは永遠にネットでオカルトネタ好きに語り継がれるだろうさ。まぁ、それもいいかもな。」

翔太は明るい口調で言っているが、空元気であることがまるわかりであるため、見ていて少し辛くなる。

僕も翔太も不安と緊張で体も心もボロボロになっているが、翔太は僕に気を使って少しでも雰囲気を明るくしようとしている。翔太はあいかわらず強いな。昔からそうだよ。僕は昔から体も小さく、虚弱体質の上、メンタルも弱い。昔から弱虫や泣き虫と言われていた。翔太は体も大きく、中学・高校と柔道部で県大会の上位まで行ったフィジカルエリートだ。柔道は高校でやめちゃったけどね。

「しっかし、二人でこういう作業するのも久しぶりだな。高校の時、教室で遅くまでだべってたらあの先生に捕まって、二人で教材が入った大量の段ボールを運ぶのを手伝わされて以来か」

「懐かしいね。先生元気かな」

「多分元気なんじゃないかな。そうだ。もし俺たちが無事だったら見に行こうぜ。なんか俺たちが卒業した後に整形したという噂を聞いた」

「マジで、それ絶対見に行こうよ」

僕も翔太につられて空元気を出して言った。たとえ空であっても元気そうに振舞うと、気分が明るくなってくる気がする。部屋に二人の空っぽの元気から生み出された笑い声が響く。

段ボールの開梱が終わり、大量の除霊グッズなどがレンタルスペースの部屋に散らばっている。ここからは除霊グッズ使って結界を張る手はずになっている。翔太が床にベニヤ板を敷き詰め、その上に、僕は家にあった古いオカルト本を見ながらチョークで大きな魔方陣を書く。結界を張る下準備だ。

 「文化祭の準備みたいでちょっと楽しいな」

相変わらずの空元気で、翔太が無理やり表情を作って笑う。

壁にかかっている時計を見る。まだ僕たちの誕生日、20歳を迎える深夜0:00までは時間がある。この調子なら準備は十分間に合うだろう。

 「そうだね……って、翔太、柔道の大会が近いからって、全然文化祭の準備に顔出してなかったやないかーい」

こちらも空元気を出して、無理やり大きな声を出して翔太にツッコミを入れる……

何でこんなことになったのかな。

忘れろって言われても、忘れられるわけじゃないじゃないか。

話は1年前にさかのぼる。

僕と翔太には、1年年上の大輔という中学時代からの先輩がいた。

そろそろ大輔先輩が20歳の誕生日だということで、地元のファミレスで前祝いをすることになった。今までの思い出話に花を咲かせた後、神妙な顔で大輔先輩が言った。

「お前ら、紫色の鏡って知ってる?」

「知ってますよ。有名な都市伝説じゃないですか。ちゃんと20歳の誕生日までに忘れてくださいね」

翔太がフライドポテトを頬張りながら言う。

「いや、あえて『紫色の鏡』と連呼しながら20歳の誕生日を迎えようと思う」

「なんでやねん!」

僕は先輩に突っ込む、先輩からは俺がぼけたらツッコミを入れろ、それが後輩としてのお前の役割だと、口を酸っぱくして言われていた。

「いや、俺、Youtubeのチャンネルやってるだろ。それを動画に撮ってアップしようと思うんだよ。そのネタは20歳を迎えるその瞬間にしかできない。絶対にバズるよ」

大輔先輩は自信満々に言った。

「いいじゃないですか。ようやく先輩のチャンネル過疎ってるって言われずにすみますね」

「辛辣なツッコミ……成長したな」

しかし、その動画が大輔先輩のYoutubeチャンネルにアップロードされることは無かった。

大輔先輩の20歳の誕生日に届いたのは、訃報だった。

僕も翔太も通夜や告別式では茫然とするだけで、お互いほとんど話はしなかった。

「死亡状況が不自然なので、不審死として警察が調査しているらしい」「遺体の状況が酷いので、お棺の蓋が開けられないらしいよ」参列者が嫌な噂を口にしているのが耳に入るが、言い返したり問いただしたりする気力はなく、俺はただ大輔先輩が居なくなった喪失感と、大輔先輩と過ごした思い出に浸っていた。

最後に大輔先輩に会った時「紫色の鏡」の話をしていたことを思い出したが、口にする気にはなれなかった。

1週間ほどしてから、翔太からメッセージが来た。

「もし落ち着いたようであれば、会って話をしたい。今すぐ」

正直なところ、落ち着いてはいない、大輔先輩がいなくなったショックで、授業にも身が入らないし、何も手につかない状態だ。だが、今の気持ちを話せるのは翔太しかいない。そう思って「わかった。僕も話したいと思っていたところだ」と回答した。

最後に大輔先輩と会ったファミレスで、翔太と向かい合って座っている。

偶然なのか必然なのが、案内された席は、最後に大輔先輩と会った時の席だった。

 翔太は少し憔悴しているように見える。僕は何と声をかけていいかわからず、脳がフリーズしていた。

僕が話しにくそうにしているのを察したからか、翔太が口火を切った。

「ちょうどこの席だったな、先輩と最後に話をしたの」

「そうだね……」

気の利いた返しができないのが申し訳ないと思いつつも、何とか返事だけはした。

「すまない。俺も気持ちの整理がついていなくて申し訳ない。ところで、紫色の鏡の話、先輩がしたの憶えてるか?」

「うん……それがどうかしたの」

嫌な予感がしつつも、翔太の話の続きを聞くことにした。

「あの話、もしかしたら本当かもと思い始めてきた。お前オカルトネタ好きだろ、ちょっと話を聞いてもらいたいと思ってさ……」

「やっぱり、先輩の死に不審なところがあったらしく、警察が事故と自殺の両方で捜査しているらしいがかなり難航しているらしい。あと、葬儀の時にお棺の蓋を開けなかっただろ、あれ、遺体が相当惨い状態だったらしいんだよ。誰かが侵入した形跡は無かったそうだ。そうなると自殺だが、自殺でそんな惨い状態になるものなのだろうか。あと、先輩は絶対に自殺はしないと思う。もしかしたら、紫色の鏡なんじゃないかと思う。あれ本当だったのかもしれない、俺たちで何か調べられないかな……」

頭の中が整理できていないからか、とりとめのない話が続く。翔太が話疲れたあたりで僕は言った。

「辛いのはわかるけどもうそのあたりにしようよ。不審死として警察が調べたらしいとかいろいろ噂は聞いたけどさ、警察がわからないものを、ただの学生である僕たちがわかるわけない。紫色の鏡も都市伝説にすぎないよ。」

たしなめるように翔太に言った。

「そうだよな。ごめん。」

翔太はめずらしくシュンとした。

「こっちこそごめん」

二人の重い空気を遮るように、ウエイトレスがハンバーグ定食を二人分運んできた。

先輩の好きだったメニューだ。お互いあまり言葉を交わさないまま、黙々と食べて解散した。味は覚えていない。

その後、何か月か経って、ようやく大輔先輩のいない世界を受け入れることができるようになった。

大学の講義を受け、バイトをし、時々お互いの家でスプラトゥーンをやって遊んだりする、何気ない生活を取り戻していた。

2週間前まではね。

2週間前、トークアプリで通知が入っていることに気が付いた。

「紫色の鏡グループに招待・登録されました。ユーザー:達樹、翔太、大輔」

グループの投稿には、ユーザー名:大輔が投稿した動画があった。

不審に思いつつも気になったので、おそるおそる動画をクリックし、再生してみた。動画の再生ならフィッシングやコンピュータウイルスに引っ掛かる可能性は低いだろう。

動画には見覚えのある人物が映っていた。

大輔先輩……!?

そして、見慣れた大輔先輩の部屋に、大きな姿見の鏡が置かれていた。

「今11時58分ですね。12時を越えると20歳になります。紫色の鏡という言葉を20歳まで憶えていると死ぬという都市伝説があります。それが本当かどうか、今から試してみたいと思います。さあ行きますよ『紫色の鏡』『紫色の鏡』『紫色の鏡』『紫色の鏡』……」

大輔先輩は大声で、姿見の鏡を指さしながら、ひたすら「紫色の鏡」の鏡のワードを連呼し始めた。

「紫色の鏡」「紫色の鏡……」「さあ、そろそろ12時ですね」「紫色の鏡」

長針と短針は11:59分を指しており、秒針は50秒あたりを進んでいた。

「紫色の鏡」「紫色の鏡」「紫色の鏡」

徐々に大輔先輩のテンションが上がっていく。秒針が真上を通過した。

「紫色の鏡」「紫色の鏡」「紫色の鏡イエー!!」

大輔先輩のテンションは最高潮に達した。

「20歳になったぞ!!紫色の鏡なんて迷信だったんだ!!」

「紫色の鏡イエー……」

その瞬間、姿見の鏡部分が不気味な紫色に染まった後、大きな音を立てて割れ、紫色に染まった大量の破片が大輔先輩に襲い掛かるように、全身に突き刺り、生き物のように皮膚を駆け回り、全身を切り裂いた。破片の一つが頸動脈を切り裂き、首から血が噴き出して、大輔先輩は苦悶の表情で絶命した。

「なにこれ……」

僕が茫然としていると、翔太から電話があり、電話に出ると開口一番「今すぐ会えないか」と焦った声が飛び込んできた。

例のごとくいつものファミレスで僕と翔太が向かい合って座っている。

偶然なのか必然なのが、案内された席は、またもや最後に大輔先輩と会った時の席だった。

「動画見た?」

翔太が先に口火を切った。

「見たよ……」

その瞬間、トークアプリの紫色の鏡グループ着信があった。

「大輔:こんなことになってしまって本当にすまない。動画は勝手に送られてしまった」

僕と翔太は顔を見合わせた。

翔太は口をだらしなく開けて呆然としている。

先に冷静になった僕が、大輔先輩(?)からのメッセージに返信した。

 「達樹:本当に大輔先輩なんですか?」

何者なのか手掛かりをつかみたい、本当に大輔先輩なのか、突然の通知に気持ちの整理がつかないままメッセージに返信した。

即返信があった。

「大輔:そうだ。お前ら動画を見ただろ。頼む。『紫色の鏡』という言葉は絶対に20歳の誕生日までに忘れてくれ」

「……」

「……」

「いやいやいやいや!」

僕たちは立ち上がって大声を上げた。他のお客さんの視線が一斉にこちらに向いたことに気づき、申し訳なさそうに席に座る。

これ絶対大輔先輩だ……

僕と翔太はいつの間にか、その前提で対応していた。今座っている席のせいかもしれない。

「翔太:こんな動画を見せられて忘れられるわけないじゃないですか」

「達樹:そうですよ、何考えてるんですか。死んでください」

「大輔:いや、もう死んでるしw久々だな達樹のツッコミw」

「大輔:そうだよな。お前ら、どうしても忘れなれないのであれば、20歳を迎える日に紫色の鏡と戦うしかない」

「翔太&達樹:はい?」

「大輔:俺は不意を突かれたからあっさり負けたが、紫色の鏡の霊としての力はそれほど強くないと感じた。達樹、お前オカルト好きで時々除霊とかしてたろ、事前に準備して臨めばワンチャンある」

大輔先輩が神妙な顔をして語っている姿が目に浮かぶ。こういう場合はきっと、そういう顔をしているはずだ。

「本当かよ」

僕と翔太が顔を見合わせる。翔太は困惑した顔をしている。きっと僕もそうなのだろう。

「大輔:健闘を祈る」

そういうわけで、2週間かかって、古今東西の除霊法を調べ、除霊グッズを買い集め、紫色の鏡との対決の場として、このレンタルスペースを借り、万全の準備で今日を迎えた。

魔方陣を書き終えた僕は、散らかった除霊グッズを整理してきちんと並べることにした。

お札、水晶、パワーストーン、数珠などさまざまな除霊グッズが揃っている。我ながらよくここまで集めたものだ。

魔方陣のまわりに、線香やパワーストーンを並べていると、

「達樹、このファブリーズは何だ?」

除霊グッズと一緒に置かれたファブリーズを指さして言った。

「ファブリーズが除霊に効くという都市伝説があってさ、一応持ってきたんだ」

「そんなの効くわけないだろ」

相変わらず、空元気で無理やりひねり出したような笑い声を上げた。

夜の11:43分、紫色の鏡の鏡を迎え撃つ準備は完了した。

魔方陣のまわりには、線香や水晶など、様々な除霊グッズが並んでいる、砦を守る弓兵を思わせる。これが僕らの身を守る結界だ。

僕と翔太は、結界の中で紫色の鏡を迎え撃つことにした。結界で身を守り、隙をみて魔除け用の刀、お祓い棒、お札など、攻撃用の除霊グッズで退治する。それが僕たちの計画だ。

 「いよいよだね」

夜の12時が近づくにつれ、心拍数が上がってくる

スマホに通知があった

「大輔:今からでも例の言葉を忘れれば、何も現れない」

「達樹&翔太:やかましいわ」

11時59分になった。

僕も翔太も、ただひたすらに時計を眺めて備えている。

11時59分40秒……11時59分45秒……11時59分50秒……11時59分55秒……

11時59分56秒……11時59分57秒……11時59分58秒……11時59分59秒……12時00分00秒……

「来るっ」

緊張は最高潮に達した。魔除け用の刀を握る手に力が入る……

翔太も数珠を握って震えている。

12時00分10秒……12時00分20秒……12時00分30秒……

「え」

何も起きない……

12時00分40秒……12時00分50秒……12時01分00秒……

もしかして助かった?

「翔太、もしかして助かったかも……」

翔太の顔を見ようとした瞬間、視界が強い紫色の光に覆われた。

光が弱まり、周りが見えるようになった。

結界は消し飛び、並べていた除霊グッズも吹き飛んで部屋中に散らばっていた。

ポケットのスマホに通知があった

「大輔:すまん……思ったより強かった……」

当然ながら、僕にも翔太にも見ている余裕は無かった。

気が付くと翔太がうめき声を上げている。

大きな紫色の手に胴体を握られているようだ、翔太が苦しそうにしている。

「うあああああああああ!」

やけくそで、手に持っている魔除けの刀で紫色の手に切りかかったが、いともあっさり吹き飛ばされ、刀も折れたが、翔太のことは離してくれたようだ。

「ありがとう」

息を切らしながら、苦しそうに言った。

紫色の手が変形し、何やら人の形になろうとしているようだ。

翔太は部屋の隅にあったお祓い棒を手に、横から殴りかかる。人型になる寸前にお祓い棒がヒットし、お祓い棒は折れたが、効いた様子はない。

手らしき部分で殴り飛ばされ、壁まで飛ばされて倒れた。

そうしているうちに変形が完了し、人の形になった。

紫色の人間だが、顔の部分は目、鼻、口のないのっぺらぼうである。紫色の着物と袴を着用しており、薄く光を放っている。

何なんだこれは……?

翔太がよろけながら、立ち上がった。

「この格好のお化けなら、もしかしたら、倒せるかもな」

マジで……?

あっ……

翔太は正面から近づき、一瞬で懐に入り込み、着物を掴んだ。

背負い投げ……

紫色の人間は、宙を舞って激しく地面に叩きつけられた。

さらに手を取って、十字固めの体制に入る

紫色の人間の肘が極まる。徐々に紫色の人間の動きが鈍くなっていく。

さすが、元柔道部の県大会上位。

まさか、こんな形で除霊できるのか?

そう思っていると、紫色の人間が徐々に溶けていき、紫色の霧状の塊になった。当然ながら極まっていた肘の部分も溶けて霧になった。

「だめだったか……」

翔太が起き上がりながら残念そうに言った。その瞬間、紫色の物体に吹き飛ばされた。

さてどうする。

周りを見渡すと、ボロボロになったお札、バラバラになった盛り塩、割れた水晶など役に立ちそうなものはない。

部屋の隅に損傷のないきれいな数珠を発見した。あれだ、手を伸ばしそうとした瞬間、紫色の物体が立ちふさがり、強い衝撃が体に走った。

体中が痛い……足に力が入らなくて立てない……

まだ意識があった。

隣に翔太が倒れているのが見える。

紫色の物体が目の前に漂っている。

まるで、こちらが苦しんでいるの見て楽しんでいるかのようだ。

周りを見渡したが、目につくところに使えそうな除霊グッズは無い。

もう終わりなのか……

紫色の物体が近づいてきたので、思わず座った姿勢のまま後ずさる。

手に何かがあたる。掴んで手元に引き寄せる。

 「ファブリーズ……」

思うところはあったが、他に頼れるものは何もない。

ファブリーズを手に取り、ノズルを紫色の物体に向け、レバーに手をかける。

レバーを握り、ファブリーズを噴射しようとしたが、震えて手に力が入らない。

その間にも、紫色の物体はにじり寄ってくる。

もう、終わりだ……

「大丈夫、一緒に倒そう……」

いつの間にか翔太が後ろから僕を支えていた。

ファブリーズのレバーにかかる手が、後ろから伸びた翔太の手に包まれる。

手の震えが止まった。

ノズルを紫色の物体に向ける。

今度はちゃんと手に力が入りそうだ。

レバーを握る。「シュッ」という音がして、霧状のものが噴射され、清潔感のある香りが漂う。

いける……

 「うああああああああああああああ」

二人でレバーを握り、ノズルを紫色の物体に向けてファブリーズを噴射し続けた。

人の話し声で目が覚めた。

ふと、時計を見る。

7時45分20秒……

「やった…..」

横にいる翔太も目を覚ます

「生きてる……」

部屋の外に人の気配がする。

ドアを開けるとヨガマットを持ったマダムの集団がいた。

「あら、散らかってるわね。どうしたの。もしかして映画研究会でホラー映画でも撮影してたのかしら」

「そうなんですよ……申し訳ありません。僕たち疲れて寝ちゃったみたいで……」

「あらあら」

その後、マダム達に片づけを手伝ってもらった後、レンタルスペースを後にした。

外は抜けるような青空、鳥のさえずり、あたたかな陽の光、まさに絵に描いたような「朝」だった。

その時、スマホの着信音が鳴った。

「大輔:お前ら20歳おめでとう。よくやった。これで俺も安心して天国に行けるよ、そろそろお別れだ。天国でまた会おう」

「達樹&翔太:そんな……」

「大輔:辛気臭いな、せっかく生き延びたんだ、もっと明るくいこうぜ」

「達樹:それでは失礼します……」

「達樹:僕たちを変なことに巻き込んでくれちゃって、なんで天国に行ける前提でいるんですか?僕たちは天国に行けますけど、先輩は行けませんよ」

「大輔:いやいやいや天国に行くって……いいね、そのツッコミ、免許皆伝だよ。絶対また会おうな」

……大輔が退会しました

無機質なメッセージと共に先輩は去っていった。

「ハッピーバースデー僕たち」

「20歳おめでとう俺たち」

僕も翔太も大声で笑っていた。ただ、目からは大粒の涙がボロボロこぼれていた。

さらに笑い声のボリュームを上げて、青空の果てまで届くように笑った。

© 2026 たかひろ ( 2026年9月30日公開 )

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