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しや(現代詩5篇)

arai

あわい。ひとつぶん さげて、ひらく

タグ: #現代詩

詩

2,583文字

彡(かげ)
 
 
これら 籠城する 暁光を かなえる
生として死として 逃げていったあとで
海原から 来る 声は 高さや長さで ある
 そこをわたる。
律儀な もので 畏れを 抱え
藍の えのぐも あわせて 崩れる
 
ポケットの
つるんと
虹をつくる
ペダルを握る
 
ながいまにわたし まるくなっていった
 わたし、
灰色の獣 蝙蝠 蛇 魚 雨露 洞 鶏頭
スロープを駆けあがる はだしについても
なにも思い出さない
 私も。
同じときを見ていた 速度は我儘を好むから
 
二双舟はピンと張り 脱力して横切る
ソーダ水を飲みながら 観覧車を見上げた
採集の針をケント紙へ遷し、木枠に列べ 
ひとつぶんの視野が ぬくんだ身に抜ける
 
杖を 手に 歩く 首を 傾げ
コインが 瓦屋根へ のぞく
幾つもの 掌が 恋しがる 
八重歯を 障壁に 置いたとき
太った鞄が手を貸したに過ぎない 
 
これはどうせなだらかな坂である
 そこからつづける。
やぶれかぶれ 呼び継ぎ足され
すくいあげた 先から抜けて 
ねんねこを透かし床へ下る晴れの日は
約束を糸かがり 火が潤む たわみしなり
 
眺望がよい手を洗わずに朱線を引き 
時計塔の避雷針に引っ掛かっている 
艶を消した背景を製陶し向こうに包みながら
 
まぶたに浸る太陽だけがまだ
罪を犯していない者たちの代わりに
瞳を閉じること
ふと、気圧計も銅板も人間も
天気を読んでいるのではないかと思った
 
 
 
 
  候鳥
  
 
身体が重力を選べない  
ああ  
とおすぎるって  
にげる きえる  
せんどうはない  
   
恐れゆくみちは 
丁寧に たたんだ皺を  
いちまい、薄くなるように  
はねは あとから ついてくる  
剥がれたからだ。さわりないように  
   
駆り立てる水位もあまい  
いやだ。耳を切り落として  
手話に肉づけして  
店先に残った  
レトロなおもちゃで  
さっき来た客で  
怒鳴りつけてくる、母親  
   
寂しかったのかな  
もうすこし 理由があったら  
ワルツで 旅に 出るのに  
   
木々たちが 走らせる  
祝日らしい 波だが ただ  
双丘に晴れていました  
山肌に さんざめき 満ちては  
芒は 去っていくのを 感じている  
   
つむじ風、わたし  
髪の根だけが遅れていた  
袖口が追いつかない  
また指先が濡れて滲んだ  
   
いまや小鳥を包んでいる  
隔たりを吐きもどすばかりに  
有線が零れ
ガーゼも空を切る  
しぜんと しせんの こもれびから  
へたくそな ぬくもりも かたむきも
また窓際にて 
みどりごと、おやすみ  
   
わずか 聖画の縁を見紛うように  
よるは ちいさなうみだけれど  
ひかりを はなさないで  
ただ あなたが座っているのは  
いまが来るじかんだ  
手を 繋いでもいい
 
  
  
 
   眩 
 
 
(たちどまると、くずれていくこと)
おどろいて着崩したまま、
鈍すぎるほど近づいてくる
 /ごめんなさい、
 /と咲き誇るとほざいてしまえば日車 
 口にして。/かまうもんか、
 とおして、微笑いながら(それでいい、
笹舟は未だ、
火を入れていない迷宮のような水たまりを
すり抜けたら、
もともと浅い泥の距離で膨れ上がる厚みで、
さざ波のような渓谷を横切る。
 
道越しの冷たさが撫でると℃の家も
雨金の鬣。だと、散乱してアウラを纏う
 
〝置いていかれた私がやっと止まることが
  できて、私と認識できるようになる〟
  けれど、(関節がいっこ足りない)
  立ち込める陰りもまた軸はそのまま、
  足場だけ文漬けられた、幸、今に。
 
 わからない
 短くて軽いものは あてがってみる
   
 ばたばたと めためたと   「駄目だ、
 わらい、ころげる    間に合わない」
 
 「昶」をかぶるわたしと「塒」の群れに
  
電気ケトルの蒸気がおって増す。
今はフォークソング『いかがわしくよこし
 まな花束という肉塊に、あれはなんだ』
 と名を与え、
 びっしょりとゆがんだ ひとさしゆび
 もう一度 静かにさせたすがたをけした
 
川に沿って弧をえがく。
目の奥で水位が止まる。
ちょうつがい「コーヒー以外で」 
 
 
 
 
  /pendʒʌlʌm/
 
 
腰を下ろしてみて 
雨が降る火曜日
大きな音がする  
ひざまずくラジオ
焼けこげた匂いがする
 
すがたかたちも みかがみに伝染され
ただパステルの摩擦音が ぱっと散った
空に洩れる微笑じみたひとに酔い
屁糞小便天象と勇魚兆候だけが
すばらしいよだれのえだ
 
生きている場所で 好きなものたちが
机上の場で 台形の和を 求める
かたく目に映る赤いモンタージュも
ちいさな 手が届く 夏蜜柑に似て
積み木の列車に 目立って見えてくる
 
支えて 運ばないと 転んじまう
ザラ紙の祈鳴がひおおいから伸びをする
重力を失った声が薄くまばたかせる
 
どうか
上機嫌な
ケモノが
骨を咥えて
いった
 
トタン屋根 シーソー 熱気球 
おかしいな
スプーン ハンカチ じべた 
シャッターを押し遣る目頭
うつくしいミモザ
 
肉づきがよく 桟橋もなく 手摺りへゆく
私と、しろい空気は 丁重に組まれ
呼び止めた残照が 夜の背中を叩いてくる
 
煮立っている鍋も 鼻歌も
教室もしづみ
回遊していたヌルい風にふれ
 
このましく 鼻を近づける 私
暗さが増していく水平線でただ泳ぐ
海になり過ぎぬために母を名乗る
収容所を窺うような 花、把。華
 
じっと確かめていた
珍しそうに耳を澄まして
吹きこぼしの犬はそこね
 
あるく信号と 前あしを尾とした
弾痕の町並みは砂が溜まってた
海峡のたもとから荷物を引き寄せ
 
くすみをきしませて
さわると さわがれ 
つまむと つかまる
 
 
 
 
  おどりこ
 
 
まやかしながら鳩や うす汚い鋒鋩
耳だけが異様な片鱗たち 紙風船
丁寧に誘う声が 押し戻す手をひいて 
 
近さの裏側で横切る間 永く、ぱち、と幼く
破裂音を立てるたび、もっとも、曖昧なもの
耽っていた
 
これじゃあ 
00:17、00:18、00:19おもいがあるからだ
急がないで
 
空腹を吸って愛嬌が死ぬ
少し笑うよう しづむ 鈍さで
容赦のない亀裂が 縦に引き裂いた
光の忘却には しばしば 模様が或る 
呼吸を覚えた棚が肺になり
届かぬほど細い 隙間からで冴え
穴ひとつ見当をつけ、意識して放す
 
ひどく静かな憂いをつくる
甘やかな薫りで雲の逸れ際に絡まり
忘れたかずだけ殺してしまった
人形を てばなしては いけない
うたに手口はないけれど
 
繊細な茎や 斑な根が 空気を求め
さきから通り看板と 緑の月深く
滑走路に紡績された 彡かげが軽すぎて
息ひとつ零すだけで したしびれ 
背中は濁るのではなく 後ろに煮凝り
襟足も裏手より 満ち欠けを告げる
インクの咲いた果樹園 染みだらけの
アトリエで 石を蹴る 床は平らだ
 
ときに 膝を抱え ただ 見ていた
少し先、少し前、豊かさに広がる
重心を隠し 明るい声で のたくる
今、思いだしている として停泊し
賑わせる為の、視線はズレていく
 
結び直す指先に ふきだすぐらい
まぶたを押すように 濃ゆいオレンジ
なにかしら。瞬きを くりかえしてる
かたちよくはねるときは歯車の上に
なにか探すよう ばったりあったから
 
指先が膝から外れるとき
持ち直した 飛行船 見せてよ)
 
かかとに傾く どうして 恋しているか
毎朝きちんと 新聞を読んでいるからだ
こびりついた水垢も、地図めいていく

© 2026 arai ( 2026年9月5日公開 )
※初出 https://esoraaoi.hatenablog.jp/entry/2026/09/05/014312

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