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生活の中の断片的な詩集Ⅷ

人間賛歌(第69話)

山雪翔太

受験期に書き溜めた短歌や俳句集です。

タグ: #俳句 #短歌 #自由詩

1,683文字

我は濡れ聴こえる雨音はノイズ沈む絶望夕立に似て

 

夕立の音と匂いは死神が現る気配によく似ている

 

夕方と夜の間の空は絞り染めした竜胆色の布

 

皆同じ姿になりたきと皆同じ向きを進まむとする行先は奈落 不安を煽りて不安に殺さる

 

草を焼く匂い漂うホームにて命が無くなる気配がしてる

 

鈴虫やふと風過ぎる秋の夜

 

夜長にて鈴虫の声聞こえては月の光に照らされる君

 

ビル群の合間を貫け爽籟よ

 

ふと薫る蚊取り線香かの夏よ

 

紅葉月秋の夜風の冷たさに自らの死を重ねて想ふ

 

紅葉の夜小夜風が吹く淋しき世我の眺める道の赤さよ

 

月も無し秋の夜長に吹く風は我の虚しさやけに教えむ

 

月の下孤独な夜に陽色の灯今の淀川夕焼け見ゆる

 

真夜中に爪を切る親不孝者の末路

 

道端にワイパックスをふと見つけ持ち主の幸祈ったりする

 

中秋や人は面上げ月拝む

 

名月の輝きの程太陽に及ぼうとせむこの愚かさ

 

ビルの間に顔を出したる満月は我を見つめて立ち止まらせる

 

寺の跡芒の原に十六夜月

 

掌が血生臭く顔顰める

 

ゆすりかが大群に目を奪われる

 

楠葉宮神の如くある樟葉ビルモールの上から現世を望む

 

葉を散らし我を出だせし俄雨秋の夜長の月を隠して

 

暗き部屋夜風が我の身体撫で未来の不安に震えて眠る

 

声を聞きふと前を向く秋の空遠く見えない春の影想ふ

 

見る度に暗くなる窓無慈悲にも

 

仕切り無く雨音続く窓の外夜更け差し込む青き光や

 

夕焼のひに山燃ゆる秋の空

 

晴れの日も時に憂鬱なるものと人は知らぬや冬の寒空

 

塔の灯が点滅をするその様で我の心も虚しくなりぬ

 

何もせず唯生きるのは罪なりや

 

娯楽さえ何も成せない絶望よ

 

怠惰なる今と未来の絶望が我の足元鎖と成りて

 

また一人立ち止まる人増えてゆく進まぬ時に道を塞がれ

 

この灰色の世でふと目を閉じて男女がもたれあい愛育む

 

老夫婦の重ね合う皺だらけの手は何を知り語るのか我には思いつかず

 

全てを手放した先に残るものを問う

 

全てを捨て去りたいが捨て去り難き現実

 

人間が身に持つ全てを取り払って仕舞えばどれだけのドブの塊が現れるのだろうか

 

幼児が走りては徒に隠れるさまに我な見捨てそと声にならぬ声出でぬ

 

電車の揺れに揺さぶられる程意志軽き我

 

雨止みて微かに先の跡残り手摺りに触れて手は濡れにけり

 

寝過ごして目覚めた後の知らぬ世の我を見る目の余所々々しさよ

 

胸を締め付ける得体の知れぬ未来への恐怖我の不安が止まることなく

 

自己否定により為される我の不安は長い冬の夜の如く

 

信じていた人々が一斉に我に背を向けたある日

 

道化師が化粧を落とし自分のみ孤独であると気付きし涙

 

子供の清らかな感情は我にはナイフになりて突き刺さる

 

健やかに童が寄りて近付くを我は密かに避けむとする

 

泣き叫ぶ喜びを忘れ大人は物陰でふと涙を流す

 

明王の如く燃えたるもみぢ葉は我の死に様いかに見給ふ

 

今秋の憂ひの深さすさまじくもみぢの赤も慰めならぬ

 

冬は明け青空に日が差すけれど桜のみが咲かない季節や

 

ホームを間違えるそれだけで人は目指す方向見失うもの

 

壁に這ふ羽虫の如く我もまた未来彷徨う羽虫なるかな

 

冬の夜凍える寒さ我が孤独に似ているのは障害灯よ

 

ふと見ゆるイルミネイト我の目にはただ燃ゆる木の有象無象か

 

席を立ち譲らんとして断られわざと咳をし立ち尽くす人

 

空虚さと自己否定へ落ちむ時煙草の匂いのする人がいた

 

廃寺となりし後にも雨宿りさす御心の情け深さよ

© 2026 山雪翔太 ( 2026年3月22日公開

作品集『人間賛歌』第69話 (全73話)

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