墓場の詩

人間賛歌(第47話)

山雪翔太

428文字

墓参りに行きました。墓場はもの悲しくて、好きです

手が凍えて寂しい

石に触れる冷たさよ

人の墓場はもの悲しい

息までも人に支配されて

僕まで霊みたいに人を待つ

何だか人の社会と変わらない

幸せと不幸せがはっきりとして

花に飾られ、幸せそうにする墓石

草木に囲まれ、悲しそうにする墓石

でも変わらず皆、家族が来るのを待つ

人間達も皆、誰かが来るのを待っている

冷たい灰色の風が吹いて死者を凍えさせる

墓場に極楽浄土は無いのだ、皆墓場に入れば

富があろうと、才があろうと灰色の骨になって

ただ誰かが来るのをじっと待つさだめを受けおう

人間は皆、自分が一人でないと思い込んでいる

死者は人間のさだめを知り尽くしているのだ

結局死ねば骨壷に入って悠久の時を過ごす

そうしてそこから動けずに、ただ眠って

誰かが来るのを待つしかなくなるのだ

花が添えられて、墓場は人のエゴで

埋め尽くされて、見えなくなった

花は死の匂いの煙でいぶされて

石は冷たい水で洗われている

墓場は悲しみの匂いがする

墓場は灰色の香りがする

墓場はただ眠り続ける

彼はもう目覚めない

手が凍えて寂しい

2024年12月30日公開

作品集『人間賛歌』第47話 (全48話)

© 2024 山雪翔太

読み終えたらレビューしてください

この作品のタグ

著者

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


5.0 (1件の評価)

破滅チャートとは

"墓場の詩"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る