ネグリジェの客は三日目だった

arai

1,351文字

ひろがりのぼりながらふれていた

(どこから)名を叫びながら 取り落とした、風は また途切れてしまうよぅ。震え声は燃えていた

(落ち着いて)あれは乏しくて、役者やったって。低い声になり 芯を揺らし文句をいいながら私を消した。同室の机にひとは滑り込んで見たけれど、数えるまでもない。

 

喫煙室の古い雪のほころびの掛け時計、赤く破れてゆく。暗いまんなかに閉まらないはなしを抱きしめていい。といえば、うすいべにやこがねや焦香こがれこう

慌てたひかりの烟が何かを探っていたようだった。頬杖をつき 打ち明けないで。もしかしたら 殆どは消えた水菓子と無限に引き換えして、物珍しさに潰れ、安穏と手招いてしまうから

翌日をさらす しかけや。どやどやとよぎない ための 結び。しゃがんで 背負う幻。それはうたかたで咲くや 意味する

 

「水素9.5%、炭素18.5%、窒素3.2%、酸素65.0%、ナトリウム0.2%、マグネシウム0.1%、リン1.0%、イオウ0.3%、塩素0.2%、カリウム0.4%、カルシウム1.5%、鉄0.005%、その他1.7%」

 

ひろがりのぼりながらふれていた ひかりを、遮ることによって壊れたものの一篇なり。くろいふくの、指で 未練や思慕が。ひけたのか、バスは、波が 手放さなかった

また似たようなこれからを考えた。滅びたトランクの隙間に。私はとっさに、冷えたベージュの習慣と、水を張った口を(ひらいた ための ふじゆうに)垂れ込める空気 壊れた朱鷺が、巻き上げられる

 

あなたが膝を崩さないで、街燈を消して

かわいた石でできていることを知った

倦怠を躰に埋めた おそらく、さめはじめている

 

またとすべての眠たげな 夜の色に別れてから、見分けもつかず。無理にわらうとどうかいってのけて。おおつごもりと稿本する、メッキの被写体をうつす月の光が「またここにいてもいいか」

辯舌のひどく身分の乱雑で、呆け。たてつづけの銀砂で呼吸は天使にも明度。外は牡丹雪が舞うように黙って、やや暫くのあいだ大きく手を振りました

(どうして)聞いてない素振りをした。穏やかな表情ですぐには火をつけず、脹れた氷雨と薄い少女にやさしいほかげが 倦怠と腰を掛けているだけで

もうすぐ/もうちょっと/またそのさまは。まだ或るモノに白けない硝化綿の華に。しかし熱して融かすまで惨んでいる

うしろからみれば胚となって ただ黙って口にしないだけで、それでなにがかわるの。東に没しようとしている フロアランプの延長線に。だれも踏み入れることのない明後日へ

 

宇宙ソラをとぶゆめをみるよ。おおくのものの中で、それでは包んだものの。(砂とじゃりと水。)おおかた灰、千尋とちらつくゆきとしよっか。こんな夜中にさ 知音の肌ざわりで、赤銅色の 枯葉蛾の転覆した星辰が 脳裏をやわく産み付ける、ホゾだから惚れた

でしゃばりな挿花など、そのおもさは腫れ物に障るなぁ。口元から反響する空洞が、うつ伏せに倒れ 濁った熱意で失う荷物が今に育てられ、瞬きを繰り返すけれど

影絵のフィルターが拝と漠然として ずっと前から隔たる、畳まれた時間と目をやるに。金の鍵の文字盤はからっぽ。ただ座するように空いて庇と為すだった

駆け込むように入ってきた風が体重のすべてで。真鍮の窓の吹き曝しは まいります、フザケた拍子に歌い出すと まいりますから

2024年12月29日公開

© 2024 arai

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