最初に思いついたのはライフル銃だったけど、国内でライフル銃を手に入れるつてなんて俺にはないわけで、ダーク・ウェブ上のシリア人とかリビア人とかパレスチナ人なんかがやってる武器販売サイトで購入して、こっちで組み立てるから出来る限り小分けにして送ってくれと言っても、金属製の銃身や引き金、薬莢なんかはそのままの形で送ってくるだろうから、まず間違いなく税関で引っかかる。中国や北朝鮮経由で税関検査がゆるゆるな北朝鮮船籍の船を使って密輸すれば税関は越えられるかもしれないけど、それには朝鮮人の知り合いが必要になるわけで、俺には朝鮮人の知り合いなんかいないし、これから朝鮮人の知り合いを作る時間なんてない。それにダーク・ウェブに接続するのにトーアを使ってもトーアに繋ぐまでの記録は接続したプロバイダのスイッチに数カ月間残るから、MACアドレスを偽装した端末でカフェやコンビニ、駅や新幹線、家庭用WiFiルータを購入したままの状態で使用して意図せずフリーになっているWiFi、パスワードを掛けずにテザリングしているスマホのネットワークから時限でアドレスが変わるプロキシを何重に噛まして接続しても、MACアドレスはユニークだから規格外のアドレスや重複したアドレスをしらみつぶしに探せば偽装端末を見つけるのは容易いし、不審なアドレス宛への接続を日々監視している警察が接続があった場所の監視カメラを調べたら面すら割れてしまう可能性がある。公共施設やその周辺だけでなく至る所に監視カメラが設置されている日本は中国を馬鹿にできないほどの監視カメラ天国で、トーアに接続する入口はどうやっても隠すことができない。もちろんトーアへの接続履歴だけで捕まることはなんてないけど、海外から物を送ってもらうとなると話は別で、運よく税関検査をすり抜けたとしても警察庁サイバー犯罪対策課はトーアやそのほか匿名性の高いネットワークを日常的に使っている数万人をリストアップしているから、そのリストにある人間宛に海外から荷物が届けば宅配員の背後に二人組の警察官がいて宅配員の横をすり抜け玄関に押し入って、俺が警察官に「なんか事件があったんですか?」と聞いてる間にもう一人の警察官が札なんか持ってないのに勝手に届いた段ボール箱を開けて中を調べられることもある。偽名で借りられる貸しロッカー宛に送ってもらっても、警察は貸しロッカーに設置された監視カメラをチェックするし、監視カメラがついてなくても、偽装アドレスを使った形跡のあるネットワークを調べれば接続場所を特定できるから、貸しロッカー屋周辺の監視カメラをしらみつぶしに当たれば見つかる可能性が高く、やっぱりライフル銃のの密輸は現実的じゃない。ダーク・ウェブ上で仮想通貨を使って海外から薬物を購入すれば足がつかないと思っている奴の多くはこういった経緯で捕まる。フリーWiFiはまったくフリーじゃないしトーアだって万能じゃない。だったら国外から買うのは諦めて中国人マフィアから手押しで手に入れようかとも考えたけど、天安門事件の折に福建省からこの国に逃げて来た蛇頭を中心とした池袋の中国人マフィアの多くは二○○二年に中国と結ばれた犯罪者引き渡し協定によって中国に強制送還されて今では残骸しか残ってなくて、そんな残りかすのようなおじいちゃんの隠し持っている銃器のほとんどは旧ソ連で作られた年代物のトカレフやマカロフなどの拳銃だろうし、それも模造品の可能性があるから命中精度は期待できないうえに暴発の恐れすらある。狙いをつけて引き金を引いたら自分の手が持って行かれたなんてことになったら目的を果たせないばかりか、かたわになって仕事に支障をきたす。いっそのこと誰でも買えるライフル型エアガンの空気圧を高めて使えばいいんじゃね、なんてちらっと、ほんのちらっと思ったけど、二○○六年の銃刀法改正によってエアガンやガスガン、電動ガンの威力が○・九八ジュール以下に定められたおかげで、規制後のエアガンに空気圧を上げる改造を施したところで本物のライフル銃並みの威力になるなんてことはないだろうし、銃身が耐えられるギリギリの空気圧でボールベアリングだと偽ってアマゾンや楽天、ヤフーショッピングで売っている直径六mmの鉄や鉛でできたBB弾を至近距離から人に向けて撃っても皮膚にめり込む程度の威力しかないだろうし、俺は一○メートル以上離れた位置から比留間を殺す必要があるわけで、風の影響を受けずに運よく命中したとしても比留間は痛みを覚えるだけで死ぬことはないだろう。条件が悪ければ痛みすら与えられず服にしわを付けるだけだ。だからといって規制前のエアガンは人を殺せる威力だったなんて自慢気に木の板をパシンと割ったり鉄板にバスンと穴をあける動画をテレグラムにアップしている奴らと連絡を取って、規制前のエアガンを譲ってもらおうとは思わない。俺がエアガンで人を殺した事例を知らないからそう思うのかもしれないけど、規制前だからといってもエアガンなんてものは所詮空気圧でBB弾を飛ばすだけの代物だから、頭蓋骨をパシンと破壊したり心臓をバスンと撃ち抜いて人を殺す動画がアップされていない限り奴らの話をまんま信じることはできない。俺は確実に、一撃で、比留間を仕留めなければならない。そんなわけで他に何か武器になりそうなものはないかと見つけたらラッキー的な感じでアマゾンを見てたら、なんてことない、すぐに見つかった。クロスボウ*1だ。五○ジュールを超えるクロスボウが数万円で購入できる。それも照準器が付いてだ。クロスボウの先に足をかけて両手両足に力を込めてグイッと弦を引かなくても、グリップを握ったまま片手で弦を引くハンドガンタイプで二○ジュールを超える威力がある。と、説明書きされている。人ごみに紛れて比留間を狙うには服の中に隠せるハンドガンタイプが最適で、岩を派手に破壊できるペレット弾が使えるタイプや連射ができるタイプのクロスボウは必要ない。使うのは一度きりで殺すのは比留間だけだから命中精度が高く鉛製の先の尖った矢が使えるシンプルなやつを買うことにした。二○ジュールあれば一○メートル先から比留間の心臓を打ち抜けるだろうし、頭に当たれば頭蓋を砕き脳に突き刺さるだろう。運よく眼窩に命中すれば抵抗少なく脳に達した鉛の矢が脳を貫通して後頭部の骨を砕くかもしれない。使ったことがないから、だろう、かもしれない、と、しか言えない。とにかく俺は人を殺すことが出来る武器を手に入れた満足感から生まれた承認欲求の発露によって書き込まれた商品レビューを参考に、取り回しが良くて破壊力があって命中精度の高そうなクロスボウを選んで「ワンクリックで今すぐ買う」ボタンをクリックした。「ご購入ありがとうございました」のメッセージが表示されてから再度商品ページに戻って注文したクロスボウの写真を眺めながら、前後に警察官を従え川越警察署から護送車に乗り込もうとする比留間の身体に鉛の矢を撃ちつける自分を想像した。頭に鉛の矢が刺さった比留間がコンクリートの床に倒れて警察官や報道関係者が慌てふためく中、仇討ちを遂げる自分を想像した。そう仇討ちだ。江戸時代に奉行所からマーダー・ライセンスを発給されてリーガルに復讐ができたあの仇討ちだ。俺には歳の離れた妹がいる。いや先週まで六歳になったばかりの妹がいた。妹の梢は比留間によって拉致監禁され恥辱の限り犯されて嬲り殺された。素っ裸で廃工場の梁から延びた所々赤茶け錆びた鎖で片足を括り吊るされ、うっ血した顔で「やめて、やめてよお! 梢はこんなことされるの嫌なの、全然楽しくないの!」と叫び声を上げて何かを捉えようと懸命に動かすもう片方の足を比留間はレザーグローブをはめた左手でつかみ、それを支点に右手で梢の顔面をガコンガコンと何度も殴りつけ、殴られるたびに「ウグッウグッ」と小さな声を漏らす梢の顔は次第にジャガイモのようにボコボコと不規則に腫れあがり、赤黒く変色して内出血した箇所をめがけて比留間が馬のケツを叩く短鞭を振り上げてパシンパシンと叩きつけると、梢はその小さな体のどこからそんな声が出るのか不思議なほど大きな悲鳴を上げて、その声に呼応して内出血した皮膚が爆ぜて、裂けた場所から流れ出た血が髪の毛を伝いピタンピタンとコンクリートの床に落ちて血だまりを作る。梢が意識を失うと比留間は梢の髪の毛を掴んで顔を持ち上げ、血だまりの上に水の張ったバケツを持ってき手を放す。勢いよく顔からバケツ中に突っ込んだ梢はコポッコポッとかわいらしい気泡をバケツ表面に浮かび上がらせたあと、ゴボッゴボッと大きな音と一緒に水を吐き出しながら顔を上げて意識を取り戻す。すると比留間はバケツを足で払いのけ、梢の口を大きく開いて床に転がっていたボルトを口の中に詰め込んで梢が吐き出さないように抑えて、もう片方の手でポッコリ膨らんだ頬をガコンガコンと殴りつける。比留間は梢の口から手を離してボルトと唾液が混ざった粘度の高い血を吐き出した顔に向けて、またパシンパシンと短鞭を叩きつける。比留間は梢を殴っては叩いて、叩いては殴って、意識を失うと水を張ったバケツに顔を突っ込み意識を取り戻させ嬲り続けた。次第に梢の表情が恐怖から諦めに変わると、それを待っていたように比留間は梢の足を縛っていた鎖を解いて梢の身体を優しく抱きかかえて、抵抗することを諦め弛緩した身体を床の血だまりを避けて慎重におろした。血と涙と吐しゃ物でグチャグチャになった顔とは対称的に、この世の傷というものに触れたことがない白磁器のような梢の身体を比留間はコンクリートの上に使う順番を決めて並べられた道具を使って執拗に犯した。誰から聞いたのか知らないが「ねえねえ、お兄ちゃん知ってる? 女の子の肌は白い方がいいんだって」と言って幼いながらも日に焼けるのを極端に嫌っていた梢の白い肌を、比留間はコンクリートの床によって擦り傷が付かないように丁寧に犯した。上唇に大きさにコンプレックスを感じていた梢に俺が「少しくらいふっくらしてるほうがセクシーだよ」と言ったら「セクシーって何?」と聞き返した梢の小さな口に、黒いストッキングを何重にも巻き付けて、「アウアウ」としか発することのできない梢を比留間は「ハアハア」と息を漏らしながら犯した。「ねえ、お兄ちゃん、何秒間息を止めていられるか競争しようよ。梢は幼稚園の友達の中で一番長く息を止めていられるんだよ」と言って俺と一緒に息止めゲームをした梢の呼吸が止まると比留間は息を殺して梢を犯した。「おっぱいが大きくなったら公園にいる赤ちゃんみんなに梢のおっぱいをあげるんだ。だってみんな偽物のおっぱいを吸っているんだよ」と、八重歯をのぞかせ言った梢の膨らむ兆候すらない胸を、肺に空気を取り込まず上下に動くことのなくなった胸を、比留間はレザーグローブ越しに撫でまわして犯した。しっちゃかめっちゃかな状態の梢を比留間はしっちゃかめっちゃかに犯し続けた。比留間はその様子を撮影した『コズィ・ディストラクション』なる動画をダーク・ウェブ上のサイト『ハート・トゥ・ザ・コア』にアップロードして、梢はユージュアルなポルノでは満足できないド変態ペド野郎どもの慰み者にされた。心を砕くハート・コア・ポルノでしか興奮できないド変態ペド野郎どもの慰み者にされた。ド変態ペド野郎どもは打ちっぱなしのコンクリートに囲まれた廃工場の中心で、梁から延びる鎖に片足を吊るされ原形をとどめないほどボッコボコに殴られ、歪んだ口元からよだれを垂れ流し白目をむいて言葉にならないうめき声を上げる梢を観て慰み者にした。冷たいコンクリートの上に寝かされ、ありとあらゆる方法で比留間に犯される続ける梢を観て慰み者にしたはずだ。『ハート・トゥ・ザ・コア』のVIP会員でランカー・レイピストの俺が言うのだから間違いない。今となっては俺が『ハート・トゥ・ザ・コア』のレイピストなのは因果と言うか縁起であったとし考えられず、行方不明になった梢をモニタ越しに見つけた時の衝撃は今でも脳裏にこびりついて、ダウンロードした動画を観ることなくいつでも好きな時に比留間に嬲られる梢を記憶域から引き出せる。そこから湧き出る感情は比留間に対する復讐心や何もできなかった自分に対しての憤りに近いものなのだろうけれど、俺自身がハート・コア・ポルノを提供していた側の人間で、梢を慰み者にしたド変態ペド野郎どもを喜ばせていたわけだから、その感情を表す適切な言葉は見つからない。世界には言葉にできない感情が溢れていて、それがジェネラルだとされる感情であったとしても、適切で適当だと思って並べた言葉が意味合いの異なる言葉に化けることもある。だから俺が抱いている感情に見合う言葉を探すことはしないし、それらを表現できるほど言葉というやつは優れた代物でない。と、俺は思っている。とにかく比留間は『コズィ・ディストラクション』が元でお縄になった。俺が通報したわけではなく比留間が細心の注意を払って編集した動画の一部にピタッとはめたレザーグローブの人差し指の先、第二関節から先端にかけて不自然にたるんだ箇所が映り込み、ダーク・ウェブに潜り込み捜査だからといってチャイルド・ポルノやハート・コア・ポルノ、スナッフ・ポルノをせっせと集めていた警視庁のサイバー犯罪対策課が日本中の人差し指が欠損した人間を照会し比留間を特定した。四肢の一部もしくはすべてが欠損した人間、希少疾患、統合失調症、鬱、聾、吃音、麻薬中毒、アルコール依存、ギャンブル依存、近視、薄毛、右翼、左翼、LGBTQ等々、ありとあらゆる人間のデータベースを持つ警察にとってそれはたやすいことで、動画がアップロードされてから三日後に比留間は次の撮影対象を探しに出向いた埼玉県川越駅近くで逮捕された。俺も動画を観てすぐに比留間の犯行だと気が付いて、場所も『ハート・トゥ・ザ・コア』日本支部が管理している撮影所で、ランカー・レイピストのみが使用できる熊谷市の廃工場だと分かったから、撮影に使うスタンガンとアーミーナイフを持って梢を救出する方法や比留間を嬲り殺す方法を考えながら熊谷市の廃工場に向かったけど、そこには梢や比留間はいなくて、他のレイピスト数人が攫ってきた就学前の男の子をワイワイガヤガヤ痛めつけながら撮影しているだけだった。その場にいたレイピストたちに一応比留間の居場所を聞いてはみたけれど「放せ、放せよ!」と叫びながら左右に揺らす男の子の両手を掴んでいる奴も、バタンバタンと上下に動かす男の子の両足を掴んでいる奴も、涙でグシャグシャになった男の子の顔を見て笑みを浮かべて凌辱している奴も、ビデオカメラのISO感度を調整しながら犯される男の子を撮影している奴も、皆首を左右に振るだけだった。『ハート・トゥ・ザ・コア』のレイピストたちは『ハート・トゥ・ザ・コア』のサイトで繋がっているだけで、厳しい会員規則のなかで行動しているわけだから、他のレイピストの行動範囲や、ましてや住んでる場所なんて知っているはずなもく、だからこそ近年チャイルド・ポルノやスナッフ・ポルノのサイトが多数摘発されるなか『ハート・トゥ・ザ・コア』が生き残っているわけで、仕方なく熊谷の廃工場から家に帰って比留間を捕まえて嬲り殺する方法がないものか考えている内に比留間は逮捕され、比留間の供述によって梢は遺体となって発見された。しかし縁起は俺を見捨てないし因果は俺に結果を求める。その理の中にいるわけだから埼玉県で逮捕された比留間は埼玉県警から警視庁に移送されことになり、比留間を殺すチャンスが再び訪れた。東京都大田区にある比留間の自宅からは大量のハート・コア・ポルノが押収されて、その中には今だ行方不明になっている子供たちが含まれていたから、比留間が警視庁に移送されるときに収監されている川越警察署の前には大勢のマスコミが集まるだろうし、俺のような被害者遺族もたくさん来るだろう。もしかすると『ハート・トゥ・ザ・コア』の会員も来るかもしれない。『ハート・トゥ・ザ・コア』のレイピストも来るかもしれない。警察は事件関係者が移送現場に来ることを睨んで警察署の周りに私服警官を配置して集まった人間をチェックするはずだけど、それを知った上で『ハート・トゥ・ザ・コア』のランカー・レイピストである比留間がどんな人間なのか知りたい欲求が勝った会員やレイピストが集まるかもしれない。とにかくたくさんの人間が川越警察署に集まり警察官の人数もそりゃもう凄いことになって、その中で俺がここから先は入っちゃダメだという黄色い規制線をくぐり抜けて比留間に近づこうとしても、すぐに警察官に取り押さえられて両腕を後ろに回され身体をコンクリートの地面に押さえつけられて、両足をバタバタ動かしながら恨めしそうに比留間を眺めているうちに比留間は手錠の間に繋がれたひもを警察官に引っ張られながら護送車に乗り込み東京留置所に移送されてしまうのは想像に難しくない。だから俺は規制線の外からマスコミに紛れてカメラのシャッターを切るようにクロスボウで狙いつけてバシュッと比留間を撃ち殺すことにしたんだ。
"オーディナリー・ワールド"へのコメント 0件