ペンウィー先生の臨時授業。

巣居けけ

小説

3,422文字

ペンウィー先生はどうして大人なのに学校に通っているの?

五時間目の開始を合図する鐘の音が鳴った。次いで、放送室からの電撃の音が学校内に響き、放送担当の佐藤の声が聞こえてき
「あー。いわゆる待ち時間の中で、最も注射針を演じることができた人間だけが、松明の明かりと浮遊する石の電波の波を超えることができますっ」

佐藤はひときわ強い咳払いの後に再び、「あー、当日キャンセルの料金によって、始末のある世界の破滅と、膨らんでいるプラスチックがどこにでも現れる可能性について」とだけ吐き出し、自分の肺のあたりにつっかえている魚の小さな骨のような間違いを呈してから放送室の電源を落とした。
「はい。では佐藤先生の享受も終わったところで、五時間目の国語を開始します」

六年四組の担任教師・三津田が教卓を教科書でパシンと叩いた。すると最前列に座っていた田中が一気に立ち上がり、「着席っ!」と叫んだ。すると全ての児童が同時に立ち上がり、二度の柏手を打ってからお辞儀をした。
「起立っ!」

田中が叫び、一番最初に椅子に座った。それを視た他の児童たちも同時に椅子に座った。

三津田が教科書を開いた。百九十六頁を大きく破き、黒板に振り返ってチョークを握った。
「では、最後まで持ち上げることができた二番目の王と、その階段に唾を垂らして白線の中に始末をつけた数字の羅列について……」三津田は小さく呟きながら黒板に同様の文字を記していった。教室にチョークのカツカツという音が響いた。
「ではっ! この海外の斡旋と手腕による理解の投てきについて、わかる人っ!」

三津田が振り返りながらチョークをマイクのように見立てて児童たちに向けた。しかし板書を終えた児童たちは無言でそれを視ているだけだった。
「まったく。どうして消火器の中と外ではこうも違うのかしらねぇ……」三津田がため息を吐きながら黒板に振り返り、文字列に数字を足していった。それは黄色だったり精液の色だったりする羅列で、自主的に蠢く文字は黒板の隅に集まって最前列の田中のノートに乗り上げた。
「わあ! これで始末がつけられるや!」
「田中クン。答え、わかったかい?」

三津田がいつの間にか田中の席の前でしゃがんで訊ねた。

田中は鉛筆を三津田の右目に刺した。
「ふむう!」三津田が立ち上がりながらよろめいた。突き刺さった鉛筆を抜くと、崩壊した眼球からオーロラソースのような風味の茶色い液体が噴き出して田中にかかった。
「これが答えです」田中が起伏の無い声で答えた。
「正解……。あるいはそれらを超越した歴史の中心点」

三津田がポケットから絆創膏を取り出し、自分の右眼球に貼り付けた。正方形の絆創膏は眼帯のような役割を果たし、眼帯が性癖の田中の陰茎を勃起させた。

すると教室の前の出入り口の引き戸が勢い良く開かれた。
「ここはどんな箇所なんだろーなってねぇっ!」

入ってきたのは、カーキ色の短パンに白のワイシャツ、黒のネクタイに上から白衣を着た、不法侵入のペンウィー・ドダーだった。
「ペンウィー氏!」三津田が飛び上がり、教卓から色紙を取り出した。「サ、サインください……」
「まあ、いいだろう……」ペンウィーは三津田から色紙を奪い、白衣のポケットからボールペンを取り出してサインをキュキュッと書いて三津田に返却した。
「おおっ!」三津田は受け取ったサインの色紙を一気に引き裂き、細かくなったそれを重ねて口に放り込んだ。「ウマッ、ウマッ」
「まあ、いいだろう……」

ペンウィーが教卓の手前に居る三津田を押しのけ、黒板の前に立った。三津田は最前列の欠席の児童の机に着いた。
「児童諸君、私こそがペンウィー・ドダーだ。今日は特別講習として、私が医学の先端を諸君らに教えてやろう」ペンウィーはポケットから指揮棒を取り出してフェンシングのように振るった。
「そこの君!」ペンウィーは指揮棒で田中の股間を指した。「ちょっとこっちにきてそれを見せてみろ」
「ええ、でもっ」
「問答無用っ!」ペンウィーが叫び、指揮棒で教卓の脚を叩いた。田中が両肩をビクッと震わせた。
「さっさとこっちに来るんだ! 君の陰茎一つで世界が救われるって場面なんだぞ?」
「まあ、いいだろう……」

田中は二秒躊躇してから立ち上がり、ペンウィーの横に付いた。そしてズボンを下げた。パンツはテントのように前方に盛り上がっていた。ペンウィーが指揮棒でパンツの盛り上がりの先端を突いた。その瞬間田中が甲高い喘ぎ声を漏らした。どうやらちょうど良い刺激で快感を感じているようだった。
「こんなもので感じるとは、マゾの素質があるな……」ペンウィーは指揮棒を勢い良く振って田中のテントを引っ叩いた。「さっさと脱げ! このドマゾ!」

田中はにやけながらパンツを下ろした。白い布の下にあったのはすっかり勃起した陰茎だった。全体の八割を覆う皮は肌色で、先端の牡丹色の亀頭は丸々と肥えていた。
「ほれ! ほれほれ、ほれえっ!」ペンウィーが叫びながら陰茎を指揮棒で突いた。その度に快感が突き抜けてくるらしく、田中は一々喘いだ。ペンウィーは「ほれほれ」と連呼しながらさらに激しく指揮棒を動かした。そのうち田中が「ああっ! でるっ!」と叫んだ。同時に膨らんだ亀頭の先端から勢い良く白い精液が飛び出した。
「き、気持ちいいいいっ!」

精液は児童たちの座る席の位置に飛び散り、前から二列目の女子の山田の顔面にふりかかった。
「気持ち良かったか?」ペンウィーがまだ指揮棒で陰茎をいじりながら訊ねた。陰茎はびくびくと震え、微細な射精を繰り返していた。
「はいぃ……」

田中は生命力の無い声で答えた。

ペンウィーは指揮棒をポケットにしまい、田中を自分の席に戻るように促した。田中は力の無い腕でパンツとズボンを履き、しぶしぶと席に戻っていった。
「最後まで力学を信用していた風船の体内……。財団と視力と硝子の中間地点に挑んだ頭髪の鳴き声……。抑揚をつけた揚げ物の明日と、それらの最中の流れた学者……」ペンウィーは号令をしながら黒板の文字に唾を吹き付けて消していった。溶けるチョークの液体が下部の受け皿のような白い箇所に溜まってガスのような香りを噴出した。
「仲介手数料のマスコットキャラクター……。そして……」ペンウィーはチョークを握って黒板に新たな国と保健室の予想図を書き込んだ。白色の薄い膜のような粉に吹き付けた歯列とガソリンのような放送室に無数の教師が群がって波となってダウナーに寄り添う力を得ている……。ペンウィーは二度目の教師の人生に階段を擦り付けてからトマトの収穫に素手を伸ばす……。
「教科書二十三頁を開け……」

すると児童たちが一斉に歴史の教科書を開いて項目を読み上げる……。「時代を破壊した侍、黒花園未加……」
「演じている回転のバレエと数字の熱燗と花瓶が放火する音……。煙と盛り上がった筋力と表示される長いだけの頭髪……」ペンウィーが回転を始めて三津田の鼻孔に万年筆を指し込む。先端が脳にまで到達して眼球が吹き飛び、眼窩から白いどろどろとした液体が噴き出して児童たちにかかる……。
「これが理性だ」

ペンウィーが鼻孔から万年筆を抜いて先端の白いどろどろを舐める。塩気のある味が触れ、同時にペンウィーが上半身をのけ反らせる。「これば美味っ!」
「先生! 授業を続けてください!」田中が立ち上がってペンウィーに抗議する。ペンウィーはその額に万年筆を投げて殺害する……。

真実と掃除の大量発生する紙切れのような果実と果汁とそれ以外の教師たちの意志……。ペンウィーは回転しながら黒板の中央にチョークを投げていくつかの数式を表示する……。「これが解けるかな?」
「無理です! 先生!」

死骸となった田中が尻の穴を動かして甲高い声を出す……。ペンウィーが二本目の万年筆を投げて田中の尻の穴を封じる……。
「ではこれをよく見ていろっ!」

三本目の万年筆を取り出したペンウィーが下半身のカーキ色の短パンとその下のパンツを脱ぎ、出てきた割れ目に万年筆を中腹まで刺し入れる。
「き、気持ちいいいいっ!」

尻の穴から万年筆のインクを放射して白衣を汚すペンウィーが叫ぶ。
「気持ち良かったか?」

田中が肺を動かして訊ねた。
「はいぃ……」

ペンウィーは生命力の無い声で答えた。

すると同時に全世界の放送室の佐藤が起動し、教室の黒色のボックスから二回目の放送を再開する……。
「前頭葉の室内と気温の差というよりは、誠実な人間のどら焼きと反転している肉と血飛沫の柑橘系が叫んでからディスプレイを破壊するっ……」

2023年4月16日公開

© 2023 巣居けけ

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