サラダ・ラジオ。

巣居けけ

小説

10,233文字

「主治医の瞳孔が知りたいんだろ? ならおれと一緒にパーティー学級しようぜ! そうすればお前の母さんも、おれの母さんも、一緒になって踊るから! 意中のような、宇宙のような、踊りと踊りとプリンを一緒に食べようぜ! さらば世界の新天地! そして男は眼鏡を食らうんだ!」

瑠璃色の山羊と街道と、球体の晴天の春よ……。歴代の勢いが裂け目を呼び込み、次なる試練に導きと棘を呼び起こす……。そしてやってくる虹色の昆虫と階段の三つ目の抑揚や天候変化に対応したテレビ・システム……。
「それで? おれが世界を動かすって?」

教室の一番後ろの席に座るパーソナリティの一人は、隣の席のもう一人のパーソナリティに問いかけた。
「振動する歯ぎしりがあるはずだぜ? さらに翌朝の本棚に取り上げと唐揚げ……」
「なら恐竜の時代まで戻るのかい?」
「壁……」

泥のような温かい液体と動き出す脳みそ……。山羊たちが最高のパーソナリティを演出してマイクに吹き掛けている。執筆に飲まれたいくつかのキーボードと叩かれている万年筆……。頭部の中の黒色のカプセルやエピソードの証明写真。立体的な科学の問題と用紙による紫煙……。
「正義を執行するって?」
「それでも嫉妬をするんだろ? ならおれとお前で手足をちぎって、あの子の気持ちを引くしかないっ!」

そして教室の一番前で、ラジオのようなごった返しを演じるいくつかの赤色と青色の無数の顔……。

青色の歯茎のような不確かで不誠実で見返りの一切ない蠢くいくつかの触手のような腫れている人間の拳。

鳥類の観察を停止している休日の色どり。さらに鍋の蓋から飛んでくる空き缶のボイラー室と熱されたばかりの魚たち。タイトルと有料の頭皮保管場所……。
「君もいかないの?」
「おれはいいや……」
「どうして?」
「だって、亀だから?」
「なんだ……」すると身体をいくつか動かして二つ目の顔で答える。「ぼくは山羊だけど」

瓶の中を当てる数学的な食事のゲーム。差し出された作物と馬車の音。街に響いて溶けていく最後のイメージと脳のしわが増えていく酒場の様子……。シネマという名前のひょろりとした男。マイクテストを一日中やっているはげの調律師。
「まるで成人だね!」
「そうだね。君は違うの?」
「おれは星人だから……」
「おかしいな!」と叫んで机をバチンと叩く。「君の一人称は『僕』じゃなかったっけ?」
「へへ、一人称なんてね、いくつあっても足りませんからね……」

さらに、ガソリンにまみれた履帯……。さらにむき出しの転輪たち……。「ぼくおれわたしおらおでわたくしそれがし」

そして、瓶になった男。移り変わる季節のような学級崩壊。語り口調と電光掲示板の二本足たち。ギターの香りとアレンジされた音の集合体。
「つまり眠っているってこと?」
「そうとも云うな……」

二人は砂漠のちょうど中心のような声で次から次へと迫り来る山羊に演じた。

無数の重ねられたスケッチブックのような白色で光を放つ消耗品の高速の上の終わってしまう最後のよく冷えた音。
「大胆?」
「担々麵食べたいよ……」
「なら召喚すればいいじゃないか!」

電源を入れる次の手順を探す……。無音の時間で会議室の自慢話を聞く。幸福を知る山羊に問いかけを行う。「まって! どうして僕らが担当になったのか、わかる?」返ってくる音たちがおれの素手の中で楽器に変動する。「わからないな……」階段を転げ落ちる男がいくつかの風船を吐き出して自分の唾液をまとめている。おれはそんな彼に足をぶつけて修復を要求する。
「『夢の共通点』という奇妙で不確かな輪郭……」

水滴で萎れてしまうトマトの壁……。「おれは毎回必ず空を飛び、上から上級生たちを観察することがあるんだが、それによって得られるいくつもの瓦礫がおれの脳に突き刺さって離れない。おれは諦めて理解を示したつもりになって、無数の扉の部屋に向かった。すると光の人間たちはおれに素手を差し出してから、テレビに出ないかと誘ってきた。おれはすぐに了承して、二週間後には本当にあそこのディレクターをステーキを切っていた」
「それってとっても味があるね!」
「どうだか……」

そして教室に頭だけを突っ込んだ男は立ち去ろうとする。しかし身体がそこから動かず、男は困惑した顔つきでパーソナリティの二人を見つめる。
「どうして動かないんだろ」
「君のせいじゃないよ。ただ――」

すると教室の引き戸が勢い良く動き出し、男の首を切断してしまう。男はすぐに絶命し、教室の中に男の頭部が転がった。
「あらら……」
「残念だけど、彼のお便りを読むことはできなかったよ……」

断端を舐めている娼婦……。ソファーの上で踊っている理科の教師……。運動力を否定してから日本刀の輝きに飲み込まれた風上の太陽とメモリーの中腹あたりによる怪奇現象……。
「突き当りばったり」
「行き当たりばったりみたいに言うな」

軽度の鬱病を発症している赤色に染色されてしまった質量の無い虎。

三つのカウントダウンの内に破壊された街と壁……。財団の上の瘡蓋と褐色の消耗品……。

集合した蟻の巣たち……。整列する告白の文書と夕焼けに当てられた光沢のある葬式会場。
「解散?」
「ソドム」

ほとんどがボイコットをしている蜂の集団。唾を垂らしてレーダーの保管場所を当てる少佐の男。理解の里の人間たちは、外からやってきた黄ばんだ歯を持つ女にコートを与えてから頭の鼻を開閉させる。すると女は自分の右腕が義足になっていることを示してから、その里に唯一の学校を建築する。

砂漠の中の肉。ファッションの音と二つの色……。謎の多い学区内戦争や図書館の中だけのいくつかの椅子。
「始まるよ。連続した因果の方向と手斧の生産が……」
「砂漠に居た時を思い出すな……」

処理の穴……。断端を舐めている男の眼鏡……。鏡と焼酎の香りで白い飯を……、すみやかなチーズ作成技術による鉄の連携……。望遠鏡の救いの無い井戸……。
「どう? 終わった?」
「歴史に残る」

太陽と陽炎が訪れる。さらに会議を発言して空き缶の偶然を装う。パステル・カラーに制服をもたらしてから荷物を運び出し、空腹になった街と部屋に生のクレヨンを与える。
「いくつかのパターンと空の空間による放物線……。解体と包丁による投てき物や手裏剣の裏側。赤色と黄色と青色の血……。すぐに切り開く山の風と最終段階の麺類の叫ばれている小さな怪物たちの学級。

発熱する女児と立ち上がる兵士。水と水滴と鴉と皿……。にっこりとした円卓と球状のテーブル。引き出しを吸い込んで突然の退去に対応する」
「……すみやかな夜。追加されるサラダと神髄。カテキンの成分を検索して蕾と漆に時間の進みを教える。最後に猿と狸の革を噛み砕いてから駅員に成りすます。公園が近づいてきて方角を砂浜で示してくれる」

小さな二つの命よ……、おれはココア・マニアと共に待っているぞ……。さらに幻想的な硝子の破裂する日時や予定の最新日数がテレビに放送される。おれは必死に駆け出してから一時間のチャレンジに回避方法を入力してスイーツに突進をする。クリームの滑らかさがおれの頬によく馴染んで溶けて一体化する。

最高の景色がおれの背骨に入り込んで号令を叫んでいる……。
「太陽が、僕たちの存在を望んでいるんだよ……。僕たちは二日の休息の中で名作を読んでいるけれど、どうしても得られない係長の苦労がわかるんだよ」
「なら撤退線だな……」

一撃で吹き飛んでいく戦艦……。台所から流れてくるオーケストラとオペラの色を示した長い洗面台……。被されたハットと中国のような形の酒を飲んでいる高台の上の男……。
「どう? 再生は……」
「光」

収縮して荒れている土地……。最後の指揮棒とチョークの粉……。パン制作において最も大事なのは気力であり、他人の精液で流れる滑り台の上の遊び場が崩壊して放棄されている。

倒壊と駅……。桜色の湯舟……。炒められている吹き矢……。槍を貫通して三人にチラシを配っている料理人……。予定を調節するメモ帳……。大胆な刀鍛冶。

丁寧な掃除人。開けられた西への穴に、おれは素手で進む。さらに虹のかかる予測の教室と理科室……。二つの隠された部屋……。包囲網が展開されている……。カクテルの中身……。下水道と山猫。
「心中か……」と頭だけのおれは刑事のような声で呟く。すると脳裡で、向こうから山羊の頭を付けた男がタイヤの上で一輪車に乗って突っ込んでくる。おれは無いはずの右手で高速の雲をつかみ、男の胸倉に新しい街を建設する。
「どうして君は我々山羊を好むの? どうして?」パーソナリティが机の上から見下ろしておれに唾の玉を飛ばす。
「おれは街には入らない……」
「ならさっさとしまい込みなさい」

一体、どんな長い物語が好まれるのか。さらに、コンピュータ室で作られた絵画が公表され、覆面の作家たちが一斉に蟻のように這いずり回って日本刀を見つけ出している。
「急がなきゃ……」とおれは駆け出すふりだけをする。すると山羊の男が同時に走り出して来た道を戻っている。おれは彼の後ろ姿で風船でできないかを観察して溺れる練習をする。
「どうしてアンタは溺れているの?」
「それが予定だから」

山羊に見えるパーソナリティが叫んでいる……。筆を持つ山羊が最後の列の真ん中にたどり着いた時、世界の全ての山羊男が立ち上がる。そして目の前の座席に唾を吐き、自分がどうして今ここに居るのかを他人に話す。歴史の授業は、山羊だ……。
「水の音は好きかい?」
「多分」

抑揚と紫色のスーツを噛みしめている教師……。財団に向かう前の風船の職人。
「おれはタケノコを食うぜ……、くう、空前の灯火……、シビアだよ……、よだれかけ……」
「黙りなよ」
「そうだそうだ!」
「すみません……」

吸い出す連携の中の消火栓たち……。並んでいる定理の色と、それを当てるためめに五本の指を咥えている赤い少年よ……。おれは捌きを下すために天候を変化させる。そしてステップの中に厄介な黒い煙を伝える。

終電の始まりと鉄の道による舞台装置の発生。子供を助ける消防服が自分の感触に酔ってから水没した街の想いを噛みしめている。
「屍かい?」
「いいえ……」そしてラジオのスイッチを入れて電源を水滴に流す……。

湯舟の中心に休息の色を与えてから、作業の難しさに寄り道を所望する。さらに市役所の中からいくつかの声のする蟻の死骸を取り戻してから立体的な息吹の可能性を示す。
「僕はどうしても腸の抑揚が欲しいんだ……」
「おちつけよ」そして一番高い酒を呑んで繰り返す。「お前が焦っても、商品は届かないぜ?」
「そうだそうだ!」

足踏みしている都市の分厚い書物……。図書館の上に商魂が建築され、削岩機によって赤子の素手が砕かれている。おれはドリルの中から釣り糸を吐き出してから二階にあがる。

二階には烏賊の香りが漂い、さらに浮かんでいる金魚の男が男児に拳を当ててから秋刀魚の眼球を売っている。
「五円でどうだ?」
「ムリです……」

発売されない噂の器……。中断すべき文章の羅列や、詩人の男たちによる朝五時の勝負……。
「ほら、楽しくなってきただろ?」

西瓜の男が亜種の人間に問いかけている。おれは図書館のような静けさに頭を震わせて吠えた。

鋭い魚類の掃除機やカクテルの色を当てている胸の人体構造……。スイートポテトを食らっている腹痛の姉……。
「さて、第二、だ……」
「また始まるの?」
「ええ」とパーソナリティは女受付のような声で答える。「そうでした」それは秘書のような眼鏡だった。

男の低い声や裏方の舞台と主役を食らう山羊……。二足歩行の山羊……。腰に舌を巻きつけているダンボールの山羊……。オーロラと南に住んでいる山羊……。右手だけの山羊……。放屁を笑っている炎の山羊……。心中の山羊と多様性の世界……。ジャムといちごの色の山羊……。

動物のほのかな香り……。雨によって湿っている最上位の公園……。学校の酒場にたどり着いた一年生と蛙の男。
「なんだい、その動きは……」
「僕はどうしてもいかなくちゃならない」
「私はどちらでもいいよ……」

吹き飛ばす連続した風船の萎れた後味……。最後の神殿と置き去りの花瓶……。酒を呑んでいる男の後頭部に破片を投げつけて血を流させている。

すさんだ朝日と速い鼓動の言い回し……。泥で作られたタイヤと線を引いた校庭。経費が重ねて宣伝に頼っているココアのプロ意識。

三次元的な複数の透明で不鮮明で煙のような冷たい無機質の硬い人型……。鈍感な小中学生たちによる舞台演出……。紹介されている駄菓子と明るい色味や唾液が頬を流れる感触。
「茄子を食らうか? 茄子と茄子を食らうか?」
「いいえ……」
「なら焼酎を呑むか? 茄子を浸した焼酎を呑んでみるか?」
「いいえ……」

アップグレードされた茄子おじさんによる宣伝……。それを避けている少年とパーソナリティ……。

するとおじさんは自分の右手を上に上げて天井から茄子を取り出す。
「これなら食うか?」
「いいえ……」
「君は?」
「い、いいえ……」

カーニバルの音が呼んでいる……。修羅の道と茄子の庭園と……。

不誠実なイメージとそれを束ねる脳のしわ……。最後に発生した虹に輝く困惑の色たち……。鳥を食らっている親父に音楽のスピリチュアルを信じている少年……。部下の羅列を覚えようとしている財団の占い師……。太陽の力で炎を消す女。「惑星じゃないのか?」

全ての支持者を咀嚼して映画を作ろうとしている立体物。粘土のような柔らかい鏡に立ち上がっている煽動の女。四季を彩る風の向きと戦士のような頭たちよ……。
「これは木綿豆腐だから良いんだね? 君は何でも食べるんだね?」
「違いますけど……」

と不確かな罰の印が顔面に覆う……。

都市に向かっている列車……。インシデントを理解するマンションと管理人……。ピンポイントの音と落下するはげででぶの親父。

大胆な空き缶、それと混ぜ合わせる落第と家庭科室の日程。始末をする料理人たちの白い帽子や歯磨きに必要な階段の手順……。

それからおれは物語の中の嫉妬する午前中の流れに目を付けた。ひときわそれらを楽しむと、さらに向こうから下がってくるシャチの大群に目を奪われた。最後の万華鏡のようないくつものイメージが重なった絵画に見惚れていると、追加で海に放たれた語源のシャチたちがおれの頭を噛み砕いた。しわだらけになったおれはそれから沖に上がると、通行人の下半身に貼り付いて空中の寒さというやつを楽しんだ。
「きた! 天変地異だっ!」

と叫んでから二人のパーソナリティは立ち上がり、やってくる鐘の音に合わせて身体を左右に動かした。

インターネットに転がるサイケデリックな瓶……。花壇に人間の鼻を埋めることで作られる洞窟のような肉体の流れ……。最高潮の塩とサラダの中に含まれる舌の色をした教室。大きな空間の中で自由に発生する円柱の山羊。
「よし! 敬礼終わりっ!」

二人は何食わぬ顔で着席した。

つなぎ合わせて作られた長い文字の列と、それを噛みしめている複数の支援者たち……。彼らはおれのようなコートを好んで着ているが、それを他人に誇示することはない。請求書を綴ってから立ち上がり、二日の休みにベッドを吐き出す。

おれは自分の文字と頭の中のイメージが企業に発展することを願っている。さらに天候の変化でやってくる二度目の朝に敬礼をすると、昼食を投げている教師に典型的な警察官への道を示す。おれは電話で何かを伝えるのが苦手だったが、きっと酒の席で記号を当たることに関しても苦手意識やサラダを当てている。

朝、おれはやっとの思いで腹痛を電話で伝る。そして消耗した眠気を補うために布団の中の尿意をもたらす。そうすることで電波の悪い環境を複製してプレスの餌食にする。シャチたちは山羊を食らってから丸飲みへの後悔を叫ぶ。人間の立体物をどうしようもなく欲している……。
「明日休めば追加で二日休めるんだぜ?」
「でも電話は怖いよ……」
「今のところ一番怖いのはお前の蹴りと動画だけどな……」そして撮影ボタンを連打するパーソナリティ。再生と停止が繰り返し発生し、ブザーの音が階段に鳴り響くパーソナリティ……。
「天変地異ってやつじゃないのか? これって」
「どうだろうな……」と呟いたおれは目の前の酒をぐいっとやる……。
「君は学生なのに酒を呑むの?」
「それがおれの生きがいだからね……」

おれは流れる眼で彼らの長い髪を視る……。

車が連続で押し出され、トラックが発生する。さらにエンジンの音を聞いたマニアの連中がインターネットで動画を検索し、サジェストに蘇った歴史の教科書が女性の声を真似て出てきている。

おれはその教科書を握りしめ、部下たちは赤色の車を盗んでログアウトをしている。おれは目の前に発生した坂の先を見つめてからエンジンを発生させ、鍵を刺して腹を裂く。すると腸がタイヤに絡んで発進し、九時まで続く走行を演じさせる。
「でも君も女を抱きたいんだろ?」
「まあね……」

ナイフが肉を裂く音が響いている。絵画を産み出している演出家に脚本のことを質問する。手違いで事務局に電話がかかる。おれは一斉に駆け出したおれの分身たちと共に遠くに逃げる。

執筆に必要なのは昼過ぎまで寝ていられる大胆な力だけだ……。おれはカフェテリアで堂々と眠る術を見つける。そしてコピー機に向かって唾液を吐き出し、こみ上げてくる嘔吐の癖から逃げる。
「お前は逃げてばっかりだな……。まったく」
「それが生きるってことなんじゃないですか? だって、逃げた先で出会った人間たちが一番分かり合える……」

おれは一本の煙草からガスを取り出し、インプットの波に乗って眠気を吹き飛ばす。それから立ち上がり、立体物がすでに三つも出来上がっている事実に震える。イチゴの香りを嗅ぎ、注目されている手鏡の真似事をする。おれは自分が学者になったつもりで街を歩く。そして向こうからやってくるイメージの副作用に街を汚す。

音楽の喜びに浸る……。山羊の唾液で湯を沸かす……。アウトプットがようやくやってくる。おれはその時を見つめてから時間の流れに敏感になる。

執筆者はいつでも時間の流れを問いかけている。そうすることで自分が産み出す物語をいつでも観測できるようにしている。パジャマを脱ぎ捨て、紙で作られた飛行物体に飛び乗る。スイッチを押し込み、こみ上げてくる頭痛を抱えながら大空へと飛び立つ。故郷を思い出しながらエンジンへの燃料に分け隔てなく接し、踏ん張りをきかせて階段を下る。階段とは人生である。
「上がるか下るかはその人次第だ……」
「おれは階段でコサックダンスをするよ……」
「寄り道かい?」
「いいえ……」
「なら信じてみろよ」

いつもの否定のとろける声が反響する。おれはラジオ局を出てコンビニに入る。全裸の男たちがカセットテープを囲んで病欠を電話している。
「どうしてそんなに簡単に電話できるの?」
「君はできないの?」
「僕は苦手だから……」
「酒を呑めばいけるで」
「僕は酒を呑まないから」

それからおれは脳裡のコンビニでカクテルとジャーキーを買ってから出る。店員の山羊の被りものにナイフを投てきして逃げるように自動ドアを破る。硝子が砕ける音が響き、自動ドアの自動機構が破裂する。

肉体の中の太腿が大胆に動いている。おれは街の中から道化師を見つけだして彼に治療を頼む。
「どうだ、これで、できるか?」おれは滅んだ国の通貨で五セントを出す。
「無理だ……」
「どうして?」
「これだと銀行で換金できない」

ニ十分ばかりの待合室……。そして駅員が手にしている吹き矢の証明……。切手を貼り付けてから粘液を口の中で作り出す機構。自動的に破裂する硝子の十……。

細々とした無数の『章』が吐き出している恍惚とした物語の連続性……。
「ああ、第三だ……」
「退散? 僕らは逃げるべきなの?」
「どうでもいい……」

スキンヘッドの女……。ジャケットを羽織っているサングラスの男。二人の真ん中に立ち上がって熱中にしている透明なペトリ皿……。月曜日が始まる音……。

ベーシスト……。パイロット……。蜜柑農家……。薬品管理の会社……。他国を征服しようと考えている車の部品作成を演習している企業……。火曜日が始まる音……。二つの瞬間移動の音と消えてしまった山羊の首輪……。黄土色の傘……。薬局に出向いているコートの刃物職人……。射撃の屋台と祭りの夜……。三日月を食らっている巨人の女……。二つに割れた痴女の冠……。音が割れているエレベーター……。空気感の無い人間……。休止を決定した管理官……。法務部からの通達……。波に流れているデレビ局の男……。フルーツ咀嚼倶楽部構成員……。派手なコート……。試験管の中に遅れてやってきた温かいガソリン……。発火したいくつかの濯がれている雀……。羽ばたく全裸の男……。電波塔に登る男……。映し出されている未完成の男……。入れ墨を嫌う教師……。

前転の最中に時間が停止した体育倉庫……。マットレスを濡らす女児の背中……。排気管で暮らす鼠……。宅急便……。とても臭い空き缶……。真っ黒に満たされた狼……。山羊の中心地点……。ドラミングの停止ボタン……。鮮明ではない声……。水曜日が始まる音……。鳩の鉄砲……。トリカブトと舌……。デビューする前のユーザーの名前……。未提出の進路希望書類……。生徒会の今後……。物理学者のマイク・テスト……。

図鑑の中の実在しない昆虫……。劇場に紛れ込んだ市販の薬品……。券売機を破壊するためのドリル……。プラスチックで支払いを済ませる力士……。木曜日が始まる音……。水泳選手の死体……。土木のための食事……。奥の部屋の祭壇……。満たされない器とさじ加減……。スプーンの中の街……。眼球を修復するたのメス……。

動詞、と責務……。資金を下すための影……。軟体動物と人間の舌……。筋力を最大限弄んだ刀……。白紙と黒い紙と万年筆の流れ……。金曜日が始まる音……。テンプレートを発行する素手の手順や黄色の駅員……。

土曜日が始まる音……。発射される人間たち……。すみやかに退避する軍人……。カブトムシとチーズ……。成功した実験……。

リングの中の飛び跳ねるシダ植物……。爆発の音……。十回の成功体験……。肯定感と抑揚の始まり……。ストイックな選手……。日曜日が始まる音……。ストーカー行為と錠剤を飲み込む音……。
「一週間を終えた気分はどう?」
「何も変わってないじゃない」
「そうかもね」

パラシュートを開く前に地上に到達してしまった職人が、自分の素手の中に隠していた結婚記念日を束ねて飲み込んでいる。女優の懐に入り込んで自身の身分証明書を吐き出している男が次の月収でロボットを建設し、床の力で飛び跳ねている。

生徒の足跡とさらなる促進に努めた外気……。青色の空とそうではない空とそれ以外の空が一か所に集まってコインを投げている。おれはそのすぐ近くの騒音の会場に参加してチラシをばらまく……。足踏みの音が裏表となって迫ってきている。

七分と六ページほど過ぎているぞ……。おれは向かって来る正式な逮捕の予測を回避してから前転で街を駆け巡る。そうすることで洞窟の中の球体の姉妹を呼び起こす。赤子が飲酒を叫んでいる……。

今夜限りのパーソナリティを可決する。そして集団下校の後を追う。次に金属の色の食卓を強襲する。肉体を押し倒して畳に唾を吐く。
「中距離の火器で人を倒す。空を飛ぶはずだった鷹の赤色の嘴が放物線を描いて胸部に接近する。玄関の扉が開かれて空の呼吸がやってくる」

腹の中の怪物が命令してくる……。おれはおれがれっきとした社会人で、れっきとした探検家であることを示す……。鏡に映し出された噴射装置のボタンを押し込んで全てのスイッチを吹き飛ばす……。これは誰のマグネット装置なんだ?

口先で校庭の演説を演じる……。さらに呟いた時の感触を思い出して鍔を発掘する。男からの声がベルトの中心から聞こえてくる……。

召喚された肉片の呻き声……。乳白色の牙と黄色の全裸……。白紙になった進路希望の書類……。
「悉くを破瓜する女子高生の貫通した眼……。調節するリングの中の子宮。エレベーターで自殺する方法。ナイフでケーブルを切断する午後」
「鼓膜の伝播……」

処理の速度と落ちていくダンボールたち……。入浴する複数の女中に、胃液と昼食を同時に済ませる右手の移植……。

所持品を検査する赤色の警察官たちと、公園に寄り道してから例の事件について訊ねる。意味の無い消耗品を口に含んでから新しい進化の歴史を綴る……。苦味の大豆と二時三十分の歴代消火栓……。
「でも君は葬式で遊ぶんだろ? どうせ……」
「まあね」

戦慄する兜の先端と刃の帯……。おれは車に乗ってから夕焼けに誓ってプールに飛び込む。健康的な水泳の授業に呼び出されてからキーボードの中間地点を叩く。おれを呼ぶ声がさらに強くなっておれに振りかかる。

二度と外れないくじ引きとホチキスの構成された舞台……。永遠に転倒している塗装と突然の解体命令……。
「巨大な人形のようななにか……」

サディストたちが集まる駆除の対象。文学とビルディングとトーストの香りが交わる切断の音。バリアフリーを謳うテレビの役者たち。

風を呼び込む風呂屋の店員……。叫び声でベッドを揺るがす男。バレエシューズを購入する土木工事の連中……。つま先で無音の時間を稼いでいる家庭的な音と居候の影と人型。
「主治医の瞳孔が知りたいんだろ? ならおれと一緒にパーティー学級しようぜ! そうすればお前の母さんも、おれの母さんも、一緒になって踊るから! 意中のような、宇宙のような、踊りと踊りとプリンを一緒に食べようぜ! さらば世界の新天地! そして男は眼鏡を食らうんだ!」

2023年2月27日公開

© 2023 巣居けけ

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