そして浴衣を切り刻んでポトフにしようと企むパンチドランカーの男……。本棚の羅列を舌の上で感じ取る教師と刺身の中……。激烈な熱の中でオーロラソースを舐めている老人が、街の角でバケツを被っているぞ……。
「おれたちはどんな仕事をするべきなのか……。そして東の天井裏に震える素手を置き、滑車が動くのを待っている。滑りのあるカードデッキと店先に並んだガラスケース……」すると慢性的な商品を右手に持った営業の男が喋りかけてくれる。おれは彼の二枚目らしい顔つきと一体化するつもりで階段を下る。
「で? 消耗は?」
「②、だ……」
おれは提示された記号の中から自分にふさわしい音のする波紋を選んでからつまみ上げる。すると酒の入れる音が響き、地下鉄のような寒さが頬を撫でた。
「これから太陽に向かうのか?」と営業の男はおれの背中の中心に咲いている瘡蓋を気にしながら問いかけてくる。おれは右手に鉄パイプを持ったつもりになって強盗のふりをする。
再現性の無い列車挿入事件……。童心に帰っている、唯一無二の赤い、『駅長』……。おれは何度目かもわからない切符の売り買いに身体を挿入させてから冬らしいコートに着替え、ロッカールームの音を唇で演じる。すると水泳の選手たちが入場してくるので、おれはすぐさま見返りが欲しいことを証明する。
「君には無理だ」と判定の人間たちがおれに鉄パイプを向けながら話している。おれは巨大な人間が踏み荒らした畑のような顔を作ってから二十五メートルを泳ぎきり、審判になっている老いた水泳選手の右手にキッスを落とす。するとスイッチが作動し、百点の時の音が鳴って女児が下りてくる。
「満点だ!」と女児が話している……。おれは右手の中のショット・ガンで彼女の脳天を撃ち抜き、辺りに散らばる血の飛沫で乾杯をする……。「ほら、メリークリスマス、だ……」
「ハッピー・クリスマスだろ? そもそも今日は三が日ですよ?」
「おれは母親が歌うメリー・クリスマスが世界一嫌いだったんだよ……」
おれはそんなふうに阿呆な事を口走る判定の男に散弾を食らわせる。弾け飛ぶ音と共に男の脳が破裂し、粉々になった頭蓋と共に散って消えた。
照明が必要な季節感と摩擦の青春エネルギー……。おれは分離した五人目のおれと共にカクテルを作り、夜が過ぎていくのをココアで待った。女児らしい音が響き、盲目の男たちが水泳の判定のことで叫びあっている……。おれはうるさくなった室内で入力記号を思い出しながら、テーブルに置かれたカクテルを一気に飲み干してからテレビの中のアイドルたちの彼氏を想像する。
「なあ、アイツの男はどんな顔だと思う?」
おれは唇だけでジングル・ベルを演出している隣の男に問いかけた。
「なんだって?」
「ほら、このテレビに映っているアイドルのことだよ。こいつらどうせ、男がいるんだろ? 新鮮だもんな」
「そりゃあとびきりのイケメンじゃないか? それか金持ち」
「ははっ!」そこでおれは新しいカクテルを注文する。「輝く美貌は選ぶ事を知らないってか」
「そうさ。やつらは誰でも食えるし、誰でも使える。そういう世界なんだよ……」
そこで隣の男は自分のジンを飲み干し、おれの前に置かれたカクテルすらも飲み干し、嘔吐をしてからおれにキッスをした。
「なんだ? ゲイなのか?」とおれは記者会見の時のような表情で慎重に訊ねた。
「いいや……。おれはゲイじゃない……」
そして男は立ち上がることもなく静かに消えてしまう……。
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