女を拾った
胸のウスーい女
肌は褐色系で髪は茶色く、うっすら、うぶ毛なんてヒゲも生えていた
下品な様、セブンイレブンで公衆電話の前うんこ座りしていた
根元までセブンスターを、吸い込み
こちらに、この俺に、視線を絡ませてきた
どこか…いくかい?
うん…
乗りな
うん
ロールバーたっぷりの86LEVINの助手席に乗せた瞬間キスをした
酸っぱい瞬間だった
周りのことなど
全く気にせず
シート倒してキスをした
周りからはバカップルに、見える景色
まさか出会って五秒後の、光景には見えやしない
胸の薄い女はもっと唇をせがんできた
そして呟いた
気が狂いそう
気が狂いそう…
女はもっと吸い付いて来た
俺の何かをいや、何もかもを奪いたいのか
いや
ダメにしたいのか
薄い胸を擦り付けて、俺の呼吸を吸い取って、キスしてきた
あまりの激しさに本当に、気を失いそうになっていた
そして気がついたら俺は、車を走らせていた
俺の86LEVINは仲間の家へと、疾風巻き起こし走っていた
運河沿いのマンション
湿った風と工事現場のざわめき
木々達は魔法のように、揺れていた
おでこに馬鹿と書いてあるような、面構えの仲間は
俺からのTELを受け取っていてか
なんでも世の中、知ってるかのような面で
俺と胸の薄い女を迎え入れた
若いねー
何歳?
16よ
おー
5コしたかー
可愛いじゃん!
ありがと…
女はセブンスターを根元まで吸い上げ
フィルターはベッチョリ濡れてた
3人でウィスキーを呑んで、煙草の煙に抱かれながら永ちゃんの、アイラブユーOKを聴いていた
そのうち女は眠り落ちていた
胸の薄い、更に影も薄い女は
実は綺麗だった
鼻筋の通った美女だった
でも靴下が汚かった
靴下汚い、胸の薄い女を俺は抱き寄せ
時折キスをしながら
仲間は片方の女の手を握りしめ
時折、女の唇をチロチロ眺め
3人は
朝まで眠った
起きたら半年後となっていた
仲間は胸の薄い女と結婚していた
それくらいあの頃の俺達は、生き急いでいた
三年寝太郎というおとぎ話があるが
俺はそんなに寝れる、おとぎ話のような男ではなかったのだ
ただただ、俺は忙しかった
高校から付き合ってた女、カラオケボックスで知り合った女、ダイエーのショップ店員等々
正々堂々と当たり前のように
御多分に漏れず、いや我、特殊な才能により付き合っていた
何人もの女と付き合うには
それ相当の才能がいるのだ
そう・それは
名前を間違えて呼ばない事
まさにこの才能に尽きる
そうかなり
難しい事だ
誰も出来ない
そう・それは
個人が持つ価値観という道徳と、社会が持つ、規範的倫理を遥かに、ぶちのめし超えてゆく事だった
人を殺しては行けないという、倫理と道徳を
俺は持ち合わせているのに…だ
俺は女達を間違えて、呼ぶ事は決して…
なかった
そして胸の薄い女の事を、俺はhoneyと呼んだ
そう
女は皆、俺はhoneyと呼んでいた…
胸の薄いhoneyは
初めて会ったあのセブンイレブンで
本当は男と約束していたのだ
なのに公衆電話の向こうの
男はチッ
舌打ちチッ
何度も繰り返した
アタシ
妊娠したの…
悲しい舌打ちだった
そして
俺と出会い
俺に激しくしがみついてきたのだった
子供が生まれ仲間は親父となった
奴は真剣に胸の薄い女を愛した
その証拠に俺にお願いをしてきた
もう俺の女にキスをしないでくれっと
祝いの言葉もお金もいらない
もうキスはするなと
俺は少しだけ…頷いた…
薄い胸のhoneyはいつしか俺に言った
あなたはキスだけで
どうして何もしないの
指さえ…入れてくれや…しない…
あー…仲間はこっそり囁いたらしい
薄い胸の愛しきhoneyの耳元
あいつはやめときな…
変態だ…
女まるごと愛撫出来やしない…
そして時は…また流れてゆく
見事なくらい、薄い胸のhoneyの子供マルオはグレていった
仲間のまるごと大きな愛情なんて関係なかった…
舌打ち男の遺伝を見事に受け継ぎ
舌のならし、いつも道端に
唾を撒き散らしていた
近所の団地忍び込み、配線操作してバイク盗んで乗り回し
ペンキ屋からシンナー盗んで頭の配線をショートして遊んでいた
そしていつしか家を飛び出した
刺激を求め、マルオは星になるのだと
真夜中の湾岸、周りを切り刻む風を起こしバイクで消えていった
薄い胸のhoneyも追うように知らぬ男と何処かへ消えた
仲間は猛獣の様に泣き叫んだ
この悲しみわかってくれようか?
いや、分かるはずもなかろう
愛する事の意味
運が良いとか悪いとか
この世は白とか黒だとか
そんなことは俺からしたらどっちでも
良いんだよ
仲間が吠える
なぁお前
わかるか?
全てを時に刻んで
生きてきたのだろう?
お前はそうやって悲しみを
切り刻み生きたのだろう
でも俺は違う
あいつ以外になんにも
ない…
あいつがいないこの世は
ありえない…
なぁ俺を殺してくれ
あいつを殺してしまいそうだ
その前にお前が俺をそこの台所にある
デカイ包丁で一発で刺してくれ
なぁ
まて
仲間よ
よく聞け
心してよく聞け
人類ステージは醜悪な美徳と
純真な脳タリンの微笑みのバランスの上
成り立ち
わからん!
需要と供給のバランスは
美男美女の墜落を望み
わからん!早く!俺を
こ!ろ!せ!
まて
コンドームを握りしめた勇者が待ち惚け
愛を育み時を超えてゆく
わからん!
なにをさっきからお前は
言っているんだ!
髭女だ
なに!
…
髭をうっすら生やした女だ
あいつを馬鹿にするな!
仲間よ
あいつはマルオが飛び出したあの日
俺に言ったんだ
なにを!
俺に
ありがとうと
う…
もし
生まれ変わりがあり
また
会えるなら
この俺に会いたいよと
嘔吐するほどあいつは泣いていたよ
う…
お前を見るのもマルオを見るのも辛いのだと
嘔吐して泣いていた
う…
俺にもわからない
それは
わからない
う
なぜ、あいつはうっすら、髭を生やしていたのか?
何故に影は薄く
胸も薄かったのか?
とても綺麗な顔してさ…
じゃあねっ…てさー
またねっ…てさー
ゲロ吐いた唇…拭いて
そして
お前に
言ってくれっ…て
こめんね…
好きに…なれなくてー
ごめんーねーって…
仲間は
さっきよりも
化け物みたいに
大きく変化して
ゴーゴー泣いた
突っ伏した仲間
マンションの窓からは
湿った精子のような匂いが運河から
運ばれ
俺は
床にへたばる仲間の背中を
ヒトツキ
ドスンと
…
…
刺した
I love you, OK この世界に
たった一人のおまえに
俺の愛のすべてを捧げる
抱きしめればせつなくなる
俺のこの腕でいつも幸せにしたい
I love you, OK 振り返れば
長くつらい道も
お前だけをささえに歩いた
窓辺にともる灯りのように
俺のこの胸に
いつもお前が燃えてる…
I love you, OK
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