翅に刻まれた符号は、百年前から、あなたを待っていた。
あなたが生身の人間としてこの世界に生を受けたと仮定し 最も見たい触れたいと思うものはなんでしょうか
「落□とは、消えるこ□では――」短篇集『落丁』カットアップ・リミックス
満ちては引き、引いては満ちる。その中に、いずれ等しく紛れ込んでいく。
始祖の顔は、誰の顔でもない。欠けた頁は、消えたのではない。
復員して三月のあいだ、私は文字を書かなかった。書けなかったのではない。南方で最後に書いた文字が戦死公報の下書きであったから、指がそれを覚えているうちは何も書きたくなかったのである。
代々の記帳者は、誰に言われるでもなく、同じ場所を、空けてきた。
日誌は、正しい。ただ、数えるたびに、誰かが足りない。
もしもし、こちら交換。――あなたは、まだそこにいますか。
〈あらすじ〉 結婚って、しなきゃダメなの…? 世間との結婚観のズレに悩む中川沙子(28)。 自分だけ、周囲から遅れをとっているのでないか。 大人になれていないのではないか。 そ…
海のことを、私は生まれた島の言葉でパダンと呼ぶ。大阪に来て十二年、口ではもう海と言う。うみ、と言うたびに、言葉の底でパダンが一度沈んで、それから浮く。言葉は乾物と同じで、乾かして運んでも、水に戻…
何十年勤めて、一枚。誰もが、自分の書いたものを、自分の手で切り落としていた。
昭和二十三年四月三日の報せは、正確な日付を伴って届いたわけではなかった。海峡を渡る手紙は、書かれた日と届く日の間に、いつも十日、二十日の隔たりを持つ。届いたとき、島ではすでに山狩りが始まっていた…
私の日本語は、母がカリフォルニアの台所で使っていた日本語である。それは一九二〇年に広島を出発したまま、更新されることのなかった言語であった。私がそれを話すとき、鶴橋の人々は一様に奇妙な表情をする…
委、応、帳、録、目――これらの字だけが、消えていく。
白状すれば、私は活字で嘘を売って食っている男である。『裸線』という誌名からして嘘だ。裸のような真実を電線のように送り届ける、と創刊の辞にはご大層に書いたが、実際に送り届けているのは温泉場の醜聞と…
今、その影は、誰に一番近づいているのだろう。
手入れの朝のことを、私は箪笥の一番奥の抽斗にしまうように、内の言葉でだけ覚えている。
破滅派は同人サークルから出発していまや出版社となりました。
破滅派の書籍は書店・通販サイトでお求めいただけます。