駅へ向かうとベンチに老人が一人座っている。 年寄りは大体その辺にいる。あてもなくその辺にいて長い暇を無駄に消費しているけれど、もっと他にやることはないのだろうか。 まぁ、僕には関係ないけれど。 …
『すべて得られる時を求めて』第6話 ご飯を食べながら読まないでください。また、本作をお読みになって気分がすぐれなくなったら、本谷有希子著『腑抜けども、悲しみの愛を見せろ』(講談社刊)などの良質…
予備校講師も教え子を導く先生。講師は巣立っていく教え子のために、はなむけの言葉、そして人生最大の後悔を伝える……
「若さ」は「馬鹿さ」によって突き動かされる。若者は馬鹿者という世の定め。
(第2話) 翌日、依本は編集者の内田に電話をし、前日に聞き忘れたことを二、三質問した。 電話をしたのは、質問もさることながら仕事の依頼が本当に本当なのか探りを入れたかった…
東京のある町で、毎晩のように飲んだ暮れているアウトロー砂場恍には、実は、有能な心理カウンセラーという昼間の顔があった。彼の元には、今日も訳ありの相談者が押し寄せる。いずれも、他の精神科医が匙を投…
原文と現代語訳を併記しました。
車内は朝から疲れ切った大人で溢れている。誰もが黙って揺られている中、よしお君の前の席だけが一つ空いていた。誰かしらが座りそうであるが恐らく人々は互いに接触するのが嫌なのかもしれない。一人が座るに…
特に何があった訳でもないけど、彼は深夜に散歩する。永久に。カタカタと音を立てて、散歩する。どこがカタカタと音をたたているのかは分からないけれど、必ず、彼の歩きにはカタカタと音がする。
(第4話) 女は当然依本に視線を送ることなく、依本が今来た方へと進んでいった。 歩行者用の信号が点滅し、依本は渡りきってから通りの向こうを見やった。しかし女の姿はなかった。…
(第14話) 駅で内田と別れた依本はぜんぜん呑み足りなかったので、「大葉」の暖簾をくぐった。 いつもの壁際がうまい具合に空いていて、落ち着く場所を確保できたことに満足する。…
(第15話) 1冊分を書きあげた依本は内田に送った。 デビュー時には、直接手渡すか、書留で送るかだった。それが今や、メールに添付するだけとくる。レトロな感覚を持つ人間として…
(第19話) それから1週間も経たず、もう1作仕上げてしまった。 依本は書き終わると、すぐさま内田に連絡を入れ、メールに添付して送った。あまりの快調さに自分自身で驚いていた…
(第6話) 私鉄に乗って、待ち合わせの新宿まで30分と少し。その間、ぼんやり車窓なんか見ていたってしょうがない。せっかくなら資料本でも買って、電車の中で読んでいこうじゃないか。依…
(第9話) 松江は以前から、依本の落ちていく様を聞いても、同情や慰めの言葉を吐かなかった。依本が書けなくなり、仕事が減り、そしてなくなり、収入が激減すると同時に離婚もし、寂れた一…
(第12話) 謎の人物は伝説も生まれやすい。詠野Zにもいくつか噂があったが、その一つを抜き出すと、このようなすさまじいものだった。 それは詠野Zが、まるでタイピストが原稿を…
リード文が思いつかなくて十五分ほど悩みました。
猫に出会う日常を切り取ったとても短い文章
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