不慮の事故から目覚めた「私」は怪我の回復を待つ無為の中、過去への追想に耽る。しびれるほど優秀だった友人と再会するというアイデアに夢中になり、やがて再びMを探す旅を開始する。
Mに手紙を出した「私」のもとに彼女の母から返事が届く。「私」はその指示通り捜索を開始するが、奇妙な人物達との邂逅ばかりを繰り返し、なかなかMにたどり着くことができない。
部屋を探さないとならない。今すぐに
相変わらず仕事の見つからない「私」は、無為のまま旧友のメグに会いに行く。彼女はタクシーの中で言う。「プチンってやっちゃうんだって。脳の一部をプチンと。そうすると、ネズミが人間らしくなるんだよ。怖…
先行きは不透明。水槽も不透明。心も不透明。
はじめての。独りでできた。無人でできた。もう大丈夫だ。
会社に行った。ぼくはすぐに部屋を空けなければならないと知った。もらえる金もないことがわかった。
会社に行くのをやめた。もっと早くこうすればよかった。
世界はゼロじゃない。ぼくらはゼロだ。なにもない。なにもできない。持っていない。
無職になった「私」は恋人の家に転がり込み、同居生活を始める。すぐに職が見つかるでもなく、無為に時間を過ごしていたのだが……
美しい時代を過ぎて社会人になった「私」ははじめて勤めた会社で天才プログラマーの幹と出会う。
Mの家庭教師として過ごす「ぼく」にとって当時の記憶は圧倒的な色彩を帯びている。
若いころ僕は早く結婚したいと思っていた 家庭を持ってる男って何かカッコイイって、守るモノがあるって何かカッコイイって、思ってたからだ でも今の僕は… 守るモノなんていらないし、守りたくない …そ…
やがて、ひきこもりは書こうと思う。ついに、あのひきこもりが。北千住の河川敷で繰り広げられた社交劇、ついにフィナーレ。
ひきこもりはそれまで一度も働いたことがなかったが、ついに仕事につこうとリヤカーをひきはじめる。
愛するものについて、人は常に語りそこなう。ぼくはMとの出会いについて、ゆっくりと語り始める。
編者による異言――序に代えて
元ジャーナリストのクリボーはなぜかひきこもりに懐く。しかし、出会いがあれば別れがあり、ついにあのタイ人は……