「リシャのおひげは? テーブルに置いてたやつ」
リシャというのはうちで飼ってる猫の名だ。下の写真の天使がそう。リシャはメス。4歳。
リシャは猫カフェからひきとったときロシェという名前だったが、しらべてみるとロシェという言葉はフランス語で「岩」という意味だった。したがって同棲してる彼女がリシャに改名した、お岩さんはやだって言って。ちなみにリシャはラテン語で「結び目」という意味らしい。いやアラビア語だったかな。
猫の抜けひげは幸運をまねくらしい。俺はそれをさいきん知った。彼女からきいた。
で、彼女がリシャの抜けひげを置いたとされるそのテーブルだが、そこは彼女の私物に四割がた占拠されている。いつか彼女がのこり六割のフリースペースに旗を立てテーブルを征服するのではと俺がそう内心びくびくしてるってことはさておき、前述の彼女の発言を受け俺はテーブルのそばのゴミ箱に手をのばす。あさる。迅速な対応だ。するとリシャのひげはすぐ見つかる。ティッシュにうもれている。俺はゴミ箱からリシャのひげをとって彼女にさしだす。
「あったよ」
「なんで捨てるの?」
わからない。こっちがききたい。まあ単純に考えるとこうだ。ランチをすませティッシュでてきとーにテーブルを拭いたときそのティッシュといっしょにリシャのひげも捨ててしまった、そういうことだろう。にせよ、それはつまり俺は幸運を無意識にはねつけてしまったといえる。生まれてこのかた俺はそうやってぞんざいに幸運(の種)をあつかってきたのかもしれない。
あとがき。ゴミ箱からリシャのひげをとって彼女にそれをさしだしたときなんか気持ちよかった。
"暴徒の二人男女、もちろん猫も。その1"へのコメント 0件