山谷感人先生が酒に酔って長崎平和公園の噴水で溺死したと聞いて、新作を心待ちにしていた破滅派同人一同、とても深い悲しみに包まれております。私が破滅派同人の意見を汲ん弔辞を述べるのは大変恐縮ですが、次がつかえているようなので手短にお別れの言葉を申し上げます。
あなたと初めて会ったのは、ZOOM飲み会の席でしたね。スマホの画面に映るあなたは驚くべきことにラブホテルから参加されていました。白いバスローブを纏ってベッドの上で足を組み「フィルターが中に詰まって取れなくてさあ」と言いながら「カツン、カツン、カツン」とベッドボードにIQOSを叩き付けていました。何度も何度も打ち付けていました。私は、あなたが何故ラブホテルからZOOM飲み会に参加しているのかよりも、IQOSが壊れてしまわないかが心配になり、「フロントで紙タバコを買ってきてはどうですか?」と聞いたことを憶えています。それがあなたとの最初の会話でした。IQOS本体は数千円します。あなたが生活困窮者であることを破滅派の代表から聞いていた私は、IQOS本体を買い直さなくてはいけない事態にならないよう……。いえ、正直に話すと、スマホの先から聞こえてくる「カツン、カツン、カツン」という音が耳障りで仕方なかったからです。
ZOOM飲み会にはあなたと私、破滅派代表である高橋文樹さん、闇のハーフことJuan・Bさん、破滅派一の好角家、大猫さんが参加されていました。山谷感人といえば破滅派のみならず、文藝に身を投じる者であれば知らない者はいないほどの大作家ですが、代表はあなたのことを終始「ゴミ」と呼んでいましたね。「ゴミみたいなやつだな」などといった例えではなく、代表が山谷感人を表す人称が「ゴミ」なのです。あなたは代表から「ゴミ」と呼ばれることを受け入れていました。「ゴミ」とか「カス」とか「クズ」などと言われても嬉しそうに笑っていました。私は代表とあなたのやり取りを見ていて、二人の間に友情、いや、それ以上の絆を感じざるを得ませんでした。私はどんなに仲の良い友人であっても「ゴミ」などの人称で呼ばれると、その人物と友人関係を続けられる自信がありません。代表とあなたとの間にある絆は、あなたの広い心によって紡がれているのだなあと感心いたしました。
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