白痴

名探偵破滅派『禁じられた館』応募作品

諏訪靖彦

エセー

1,445文字

2024年2月名探偵破滅派参加推理。お題は『禁じられた館』

遅れました。ごめんなさい。
言い訳するとあまり良い翻訳でなくて、読みづらかった……。

 

私立探偵トム・モロウによって地下室に秘密の抜け道があることが明かされた。秘密の抜け道が提示されるまでは第二の手紙を地下室に置くことが出来るのはシャルル・シャポン及びその妻テレーズ(夫の目を盗んで鍵を入手)に限られていたが、別の人間が置いた可能性も出てきたところで課題範囲が終わった。

地下室の抜け道は第二の手紙を置くために使われたのみであり、ナポレオン・ヴェルディナージュ殺害後の逃亡には使われていない。抜け道を通ると服が泥だらけになってしまう。事件後現場に集まった人間の中でそのような人物はいない。唯一館の外にいたベナールは着替える時間があったかもしれないが、クロドシュは犯人を館まで案内している。近しい関係であるクロドシュがベナールに気づかないはずがない。また、ベナールが地下室の通路を使って館に侵入しヴェルディナージュを殺した場合には侵入痕が残るはずである。なお、実行犯が全くの外部犯であった場合、凶器であるベナールの拳銃はさておき犯行は可能だが、エレガントな解決ではないので除外する。

では、ベナールは無関係なのだろうか? 私はそう思わない。ベナールはデルーソー殺害事件の頃から館の門番をしており、地下の通路を知っていた可能性が高い。館にはベナールが隠し通さなければいけない秘密があり、それを守るために第一第二の手紙を送りヴェルディナージュを追い出そうとしたが、ヴェルディナージュが出ていかなかったため、使用人を絆し自分の拳銃でヴェルディナージュを殺害させた。

つまりベナールがヴェルディナージュ殺害の主犯である。ベナールが館の主を殺しても守らなくてはいけない秘密が何であったかは分からなかったが、ベナールに協力した人物の動機は明確である。それはヴェルディナージュの遺産である。館にいる人間の中でヴェルディナージュが死んで利する人間はシャポン夫妻しかいない。

ではシャポン夫妻のどちらが共犯者であったのか。シャルルはアル中である。アル中は入念な計画など立てられない。ベナールはアル中を共犯として選ぶはずがない。アル中の知り合いがいるので分かるがアル中はそう簡単には治らない。ヴェルディナージュはアルコールが原因で使用人としての業務を遂行出来ないことでシャルルを叱咤し、遺産相続権を剥奪すると言った。シャルルの妻テレーズは夫がいつまた同じ失敗を犯して遺産相続権を失うか気が気でなかっただろう。ベナールはそんなテレーズにシャルルが執務をこなせなくなる前に、ヴェルディナージュが遺書を書き換える前に、ヴェルディナージュを殺してしまおうと誘った。よってベナールの共犯者はテレーズ・シャポンでありヴェルディナージュ殺害の実行犯である。

ここで問題になってくるのはクロドシュが来訪者を館に案内するときにその人物がテレーズだと気が付かなかったことだ。テレーズがいったん館の外に出て戻ってくるのはベナールの協力があれば可能であっただろう。しかし、館の前まで案内したのはクロドシュである。いくらなんでも案内する人物が見知った人間であれば分かるだろう。帽子を目深に被っていたとしても、所作から男か女かぐらいは分かるはずである。この問題はいくら考えても答えが出なかったので、不本意ながらクロドシュが白痴であったことでこの問題を解決することにした。クロドシュは白痴であるが故に、使用人の顔や名前を憶えていない。クロドシュがの見知った顔とはベナールと世話をしている番犬だけである。

 

以上

 

2024年2月19日公開

© 2024 諏訪靖彦

これはの応募作品です。
他の作品ともどもレビューお願いします。

この作品のタグ

著者

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

"白痴"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る