超短編小説「猫角家の人々」その39
「苦労して、行政書士から弁護士になりあがったのに、ろくに収入がないんじゃ、無駄な努力だったってことじゃないの。馬鹿にしているわ。こうなったら、どんな汚れ仕事も引き受けて、大儲けしてやるわ。仕事がないなら、捏造すればいいのよ!」
四つの葉弁護士法人の代表弁護士、無法松浮奇子は、裏社会で生きていくことを決意する。同期の弁護士たちは、酷く疲弊している。頑張っている弁護士でも、年収が500万円そこそこしかない。これでは、その辺の無学のチンピラサラリーマンよりも低い。だが、現実に、弁護士のうち、500万から1000万の年収しかない階層が一番多いのだ。2008年に1000万以上の収入のあった弁護士は全体の45%近くいたのだが、2013年には、30%程度まで減っているのだ。
そして、職業としての弁護士の「輝き」も光を失っている。事業別平均所得で見ると、医師は上昇して2400万円くらいまで伸びているし、他の税理士、会計士、歯科医などは、少なくとも横ばいで推移している。それなのに弁護士だけが、右肩下がりで減少しているのだ。歯科医と同じレベルまで落ちてきているのだ。もうすぐ、税理士とも並ぶことになるかもしれない。
そして、新制度弁護士、つまり、20代、30代の若い弁護士の疲弊度が目も当てられない。500-600万円台の収入しかなく、旧司法試験弁護士の半分にも達していないのだ。何のために長い間、司法試験をパスするために苦労してきたというのか?市役所の窓口の姉さんだって、もう少しは稼いでいるではないか。こうなったら、手段を択ばない。裏社会御用達弁護士として、立派に汚い金を集めてやる!雄たけびを上げる無法松弁護士であった。(続く)
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