一つの丘に対し駆け上がる、息を整えては姿を思います。野草の強さを願うとき 目を凝らせば姿も浮かぶような、ぽつと明かり ともり ぼぉと照らしだす未知に沿って、拍動は抑えきれず漏れた声色はどこへ届くというのだろう。
傷だらけの溝に埋まる、正体を、君と名付けて見ようとした。けれど手紙を書ききれないように、齢が重ねられ、骨組みが組まれ魂がざわめくままに笑みが咲く。両手には持ちきれないほどの小花を摘み、腹を空かせたものが辿り着く場所へ、躰は撓み 歪み 曳かれ裂かれるより、つぶされるより膨らみ 薄く 底に痕を轢いていく。
今宵に参り 白木蓮の蕾 膨らみ、まだきゃしゃな幹に手をかけ軽く登る、重力を滅したものが。
黄昏を待たずに眠りにつくあとは。星星が揺らめくこと、凪のかなたへ漕ぎ出していた。
水辺は上昇し ここは離れて等しい。地から美しく光を呑み込んだ 月よりもただただ浮かんだ銀盤が。手を伸ばせば直ぐ届くほど、近づく素足で湖に降り立つ。確かに重みを持って、ぬかるみの存在が湛みゆく。空を仰ぐ。なにもない底冷えするような漆黒とやはり、私だけと抱きとめている。
その幸福が、厳しさが射るほどに焼きついて、道を覆って、重く伸し掛かる。
ずっと捕らわれている。どうか 定かにはできない けれども、
錆びた釘を置いて行列を成して翔ぶ烏が、方向を定めて暮れていたならば。春はもうすぐにでもやはり落花する。それは背を伸ばし続ける おしゃまなものであれば、よいのだろうと。
追い求めているのか、ここにきたばかりで歌も残されない何かを。それとも急かされているのか。ふさがれた 眦の 隅に たよりに 耳をすませては鼻を寄せた。
そのうち 眼裏に またたちはじめる。擦り込まれた 花香る。
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