ドバミミズやシマミミズの大群……。それは特別に雷管と呼ばれる消耗品で、アジア地域ではリトマス試験紙と併用され、銀行社会の最後の手段として立場が確立していった。おれはそんな粘土状の彼らの素手のような見た目に唾を飛ばし、玉のオーロラ色と共に地下へと進んでいった。
「キャラメル大佐……」とおれは思う……。そして降り注ぐ大量の商品や行方不明の名簿にキャンバスを書く……。大学の列に並び、教授の室内で尿を吐く妄想を続ける。
「そして、『理解者の森』か……」おれは街の中の山羊たちに違法薬物の取引を持ちかける。
「それで? 君は何キロの阿片を売ってくれるの?」おれは輝かしい少年のような声色を作る。(これはもちろん創作上の笑みで、本来のおれの癖などは反映されていない……)
「五キロだ……」山羊はいかにも売人らしい声色で五本指をおれに突き出してくる。「この街で私より安価で売ってくれ人は居ないよ……。どうする?」
山羊頭の売人はとろける不確かな声で囁く。おれはそんな彼の唇に指を押し付け、彼が見ていない視界の隅で小銭を誤魔化す……。彼の手の中の阿片の束を掴み、おれは早急にそこから立ち去る……。
山吹色の山脈に何があるというのだろうか……。廃棄物の中で戦争を起こし、起床時間に間に合わせるように喇叭を吹き続ける。すると騒音対策の耳栓の稼業が発達し、おれたちに小銭が降り注ぐ……。
おれは未来の事柄に原稿用紙を突き刺す。そしてバックダンサーたちにコカインを渡す。「これ、交番の前に落ちてました!」
「おれはダイナマイトよりも高くさばけるよ……」とおれは売人らしく呟く。すると手前の購入人がくしゃくしゃになってしまっている乾燥した五千円札をおれに寄越してくる。おれは小銭入れに札を押し込んでコカインの包みを一つ与える……。
おれは手前に突き出した腕をピストルの形にし、目標の山羊の尻の穴に向けて発砲する。するとすぐに後方からの支援の弾丸が降り注ぎ、山羊の尻が火傷を負う……。おれは焦げ付いた尻穴に指を入れ、山羊がアンアン喘ぐのを聞きながら彼の人間的な内部構造に驚く。「前立腺だぁ!」
それからおれはコンビニ専用の作業服を着、帽子には戦闘用の迷彩柄ハットを選び、マルチ・ボーイ坂に向かう……。
「どうした? お前も坂に呼ばれたか?」
「ああ! もちろんさ!」
「なるほど……」おれは指先で煙草を演出し、だんだんと見えてくる坂に注目する。隣の男はコンビニエンスストアで仕入れたらしいカッターナイフで自分の腕の毛を削ぎ落し、笑顔で落下していく毛を睨んでいた。
「どうしてツルツルにこだわる?」
「そうじゃないと女を抱けないからな」
男は明瞭な声で答えた。おれは唐突にこの男のことが気味悪く感じ、歩く速度を上げて離れた。十歩ほど歩いてから後ろを振り返ると、男は何食わぬ顔で毛剃りを続けていた。
「どうしてツルツルにこだわる?」……そうじゃないと女を抱けないからな。
おれは前を向き直して坂に突入した。四十五度ほどの坂はおれの足踏みを受け入れてくれた。おれは坂を登った。そうすることで自分の本来の姿が見えてくるような気がしていた。おれは横から乱入してくる女を視た。女は右手に四角い鞄を持っていた。どうやら女はエンジニアで、ノートパソコンを収納するための鞄を常に持ち歩いているようだった。おれは女を突き飛ばして足の速度を上げた。それはほとんど走っていると変わらない速度だった。おれはずんずんと坂を上がっていった。地平線のようになっている頂が近くに迫ってきていた。おれは唐突に後ろが気になった。なので素早く振り返ってみた。するとおれに突き飛ばされた女が転がり落ち、ようやく坂に突入したあの男の足元に来ていた。男は女の顔面を踏みつけた。グシャリ、という肌と肉が押される音がここまで到達していた。男は再び女を足蹴にした。女の白い肌が裂け、中の赤黒い肉が視えた。女は泣いていた。男も泣いていた。おれは走りながら泣いていた。このまま男と女を視ていると、どんどん涙が出てきて枯れてしまうのではないかと思った。おれは前を向いた。そして足の速度を上げた。すぐ近くに坂の頂点があった。
おれはそれから間もなく頂点に到達した。そして向こう側の景色を見下した。
「見えたのは……、人間の営みだったよ」
破裂している街があった。
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