電波とアイスクリーム。

巣居けけ

小説

2,844文字

すると例のアイス・クリイム屋の男が変形した虹色の頭の右手の口を開いて話しかけてくる。

そして全ての人間たちの唇が紫色に染まる……。おれは彼らの変形した手足をプールに沈めてから、スナック菓子の音と共に滑り台を楽しむ……。「入力か?」おれは街の乞食たちと手を組んで軍隊のような規律を線で描き、キャンプ場に川を作る。

騒音が形を成してから階段を下っているぞ……。そしてオペラ歌手が危険日に水道の先端を自分の膣に入れているぞ……。おれはガラスケース越しにそれを見てから、夕暮れの気配を鼻先で感じる。すると特殊部隊に居たことのある男がおれのコートを引っ張り、女児のような声でアイスクリームをねだってくる。
「どうした? イチゴ味がいいのかい?」とおれは話を合わせて彼女の声色を見る。おそらく精神科医との関りが原因だ……、と推測する。

女児はおれのコートを握りしめたまま答えてくる。
「私はチョコレート・ウンチ・アレルギーだから……」
「それはまいった!」

おれはポケットから(女児が握っているコートの側ではない方についている亀の皮膚で作られているポケットから)五十円を取り出し、道に停車しているアイスクリーム屋を指さす。「あそこに行こうか」

おれたちはアイスクリーム屋に近づいた。その道のりは何週間にも感じられたし、逆に数秒の事のようにも思えた。時計を視るとすでに崩壊した都市のような亀裂が入っており、おれは潮時を完全に見失ったことを実感する。
「すみません。イチゴのアイスクリームを一つ!」
「あいよ!」と叫ぶ店員は三日月色の鉢巻を巻き、黒のランニングシャツを着ていた。下半身は見えなかったが、おそらく軍用の長いズボンを着ているとおれは予測する……。
「ところでオニイサン、年末はどうやって過ごす?」
「……いつものように餅を喰うけど」
「そりゃあ良い!」
「あの、アイスクリームはまだですか? アンタさっきから、どうにも作業していないような気がするんだけど……」
「まあ待ちな! 寝て、待ちな!」
「ねえ、アイスクリームは?」

すると店員が女児の方に首を伸ばしてみせる。「まあ、待ちな!」

おれは手放しに喜べないこの状況に苛立ちを感じながらも、コートによる寒さ回避にありがたみを感じてから女児の顔色をうかがう。すでに空腹で倒れていないかだけが気になったが、彼女は右の人差し指を口に入れながら迷っているマドンナのような顔つきで待っていた。おれは改めて店員の顔を見てから、まだ来ないのかと声にならない声で呟いた。
「定期便です! お願いします!」それは右からやってきた声だった。

おれは右方向を眺めた。そこにはひょろりとした男が立っていた。茶色の短いチューリップ・ハットを被り、袖なしの黄色いシャツを着ていた。さらに彼は両手で巨大な長方形を持ち、口角が完全に上を向くほどの笑みを浮かべていた。
「ああ! 待っていたよ!」と叫ぶのは店員だった。おれは二人の関係性の中に特殊な精液が混ざっているのを察知した。
「小銭のような音で目が覚める。朝日のような音が続けて鳴り響き、おれは手前の落花生や焼酎の香り、さらには試験管の中身がとても気になった。だからこそ証明問題を解いた後に、女児の亡骸が天空に昇っていくのを胸の中で感じ、シャワーヘッドの入室に冷えていった……。『入札だ! 銃を構えろ!』おれの中の脳が喋っている……。『映画撮影は禁止だぞ……』おれはコートをゆっくりと脱ぎ、女児の素手を切り落としてから学友に鼻で作った冠を乗せる。するとアイスクリームだった店員が捕まり、取調室のような殺風景で酒をやる……」
「五十円になります……」
「はいどうぞ」

女児が俺から離れ、ゆったりとした手つき、まさにおれがコートを脱ぐ時のような手つきで五十円を取り出して差し出した。

百足たちの行進……。おれは調理の男になったつもりで海を切り開き、烏賊の数を指で数え、軍用の火炎瓶を盗み出してから味噌汁を啜る。天秤を聴力で審査し、向かって右側の男たちに小銭を渡してから虫かごを叩く。「消耗品なんだろ? なら見返りなんて求めるなよ……」という品種の百足が足元にわらわらと言葉を発し、おれのコートを新しく挿入する……。

新しい繁殖方法と出来レースによる実験二度目……。科学者連中が笑顔で試験管を割り始めたら、その研究室はいよいよ終わりだ……。肝に銘じて実験を開始しろ……。そして煙の失敗作で笑顔を作れ……。

そして、『裁かれたままの鮫』だ……。おれは西に向かうと共に女児の右手を思い出してからアイスクリームを舐める……。「なんだ、ウンチじゃないじゃないか!」おれはこけるふりをしてアイスクリームを前方のオヤジに投げる。「よし! 陸上競技の世界大会、始め!」

アンテナだらけの地方と妙なこだわり……。デミグラス・ソースの温かさや教鞭による摩擦の太陽……。「マストアイテムとはどこにいる宗教学者なのか。それともおれたちは坂による刺殺を避けることができるのか? 大方、地球以外の星を舐めたことによる舌の裏の火傷が原因だろう……。おれは兵士の役割を理解しているインシデントレポート……。対応による毒々しい身体たち……。表現の幅が狭まる? なら歯列を無理やりこじ開ければいいじゃないか! 死体たいが動き出すぞ……。それともタワーたちによる隙間の完成や、徳利だらけの旅館に足跡を付けるべきなのか……。

すると例のアイス・クリイム屋の男が変形した虹色の頭の右手の口を開いて話しかけてくる。
『君は童貞?』

おれは『イエス!』を答える。
『あっそ……。なら風船たちが君を迎えに行くよ……。ボクは未来で待ってるから……』

おれは必死に『ノウ!』を答えてから、彼の首元にある木目のような隙間に頭を挿入してから眼帯の切れ端を取る……。
『ボクらは西に向かうからね……』
『どうしてアンタらは西にこだわるんだ?』
『……連中?』

おれは頭を話してから首元に付着した陰茎のような温かい不快な硝子を素手で取ってから捨て去る。
『ああ……。もったいない』

おれは紙芝居の三枚目を切り刻んでから会話を終了した」
「需要がある限り作り続けろ……」と斥候の老人が震えながら唇の蠢きで囁いている……。おれは教室に入ることをためらっている学友の背中をモップで押してから豆腐のような切れ味の無い煌めきの中を進む。すると洞窟のような様子を呈している教壇にたどり着く。おれはチョークを右手に持って授業開始を合図する。
「それで? この問題を解くことができる人間は?」
「③です……」と最前列の学友が還暦を迎えているような声で沈んでいく。おれはひっきりなしに敬礼をしている二個後ろの席の女にチョークを飛ばす。
「どうして殴ってくるのですか?」
「数式の言う通り……」おれは授業を終了する音と共に教室から出ていく。背中の辺りに黒板消しの形が盛り上がって刻印される……。
『挑んでいる』男と相撲の神髄……。破れてしまったショーツに腰を擦り付けてから突破口を見出す。電話で卒業式をやっている集団、重火器の中に住処を見つけている男、百足の解体ショーを企画している痩せたディレクター。

2022年12月27日公開

© 2022 巣居けけ

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