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スルメイカとおむつと妹と

藻朱

小説

536文字

 

スルメイカを食べると、潮の香りが、口に広がる。それが好きで僕は今日もスルメイカを噛む。マヨネーズとか、唐辛子はつけないで、コンロの火で少しあぶって、人肌になったところを口に放り込んで、何度も何度も噛む。やりすぎて、歯茎から血がでることが儘にあるけれども、あまり気にしないで、かみつづけていると、スルメイカの肉片は唾液に溶かされて、徐々に口腔内の粘膜に浸透していく。肉片がなくなって、口の中は唾液しかなくなって、それでもかみつづけていると希に、スルメイカの風味がしみこんだ歯茎から、白濁液が勢いよくぷちゅっと、飛び出すことがある。白濁液はスルメの風味と似ているんだけれども少し違っていて、苦くて渋い。歯茎から血が出ているときに白濁液が染み出してくることが希にあるのだけれど、僕はそうなるとたまらなくなって、妹をトイレに連れ込んで、憑かれたように彼女のおむつを取り替える。はじめのうちはいきり立った僕の形相におびえていたようだけれど、最近は慣れてきたのか、乱暴におむつをひっぺがす僕をきゃっきゃっと笑いとばすようになった。

今年3歳になる妹を愛でながら、ぼくは今日もスルメイカを噛む。そして白濁液と血で口の中がべとべとになると、おむつをかえに妹を連れてトイレに行く。

© 2013 藻朱 ( 2013年3月4日公開

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