朝会を集めて囃し馬鹿課長
匿名希望
【講評】
朝の朝礼か、もしくは会議等を想像できます。課長が課員全員を集め、なぜ数字が取れないんだと騒いでいるようにも取れます。それを冷静な目で見ている詠人が〈囃し〉として表現しているのが読み取れます。
また最後の〈馬鹿課長〉という言葉、詩人の気持ちをストレートに表現するとともに詠人の反骨精神を垣間見ることができます。朝の息吹を感じさせるすがすがしい句です。詠人は営業二課に在籍する方ですが、今後の成長が楽しみです。
残業をしても一人
家路遠志
【講評】
もう誰もいない社内で蛍光灯だけが自分の席を煌々と照らし、何かスポットライトがあたっているような壮大な空間を句の最後に〈一人〉と表現することで創り出している作品です。読み手に強く現状打破を訴える何か感じるのは私だけでしょうか?
ただし、この句も前作同様に有名句を本歌取りしているのが残念です。次号に期待したいものです。
仕事せず喫茶で寝てて八千円
夢枕居心地
【講評】
この句の行動はいけません。詠人の日々のスタイルがそのまま反映した句です。最後の〈八千円〉とはよく理解できませんが、日給を意味しているのでしょうか?
それとも喫茶店での支払いを意味したものなのでしょうか?
喫茶店で一日八千円はないと思いますがよくわかりません。ただ彼の更生に期待したいものです。
この作品では仕事をもらえず、喫茶店で時間をつぶしているとも考えられるのですが、とりあえず、お仕事には頑張っていただきたいものです。
接待費使いすぎ申請できず ただ韜晦す
接待侍
【講評】
完全に句になっていませんね。変句とでも申しましょうか。ただ接待費が落とせず、あきらめにもにた感傷とこれから、どうしようかと詠人の逃げが感じられる作品です。この〈韜晦〉という言葉から想像すると大変な額であることは間違いないでしょう。このような句は応募規定に反しておりますので投稿時には注意してください。
食堂で うまい飯なし金かえせ
ブルジュワサブロウ
【講評】
そもそも低価格を売りにしている社員食堂批判です。かなり問題ですね。原価を切り詰めながらも社員の福利厚生に役立っているにも係わらず残念です。食堂の調理師さんに失礼きわまりない句です。ちなみにですが私は社食の料理好きです。詠人がブルジュワサブロウさんであることから、彼もしくは彼女のもっと美味しい社食が低価格で食べたいとの願望が見え隠れします。この句が投稿に値するかどうか、今後グループ内でよく検討していただきたいものです。ただ〈金かえせ〉は、強い意志を感じるだけでなく、予備知識の無い者への強烈なインパクトと社食への誘いを感じさせてくれます。
誤送信 不倫がバレて懲戒か?
噂 大好
【講評】
メールのやり取りで、一斉同報などでバレたのでしょうね。あの人がこの人と?
といった事件は今後もありますが、やはり不倫はまずいですね。〈懲戒か〉とするよりここは、〈休職か〉とするほうが、正しいような気がします。詠人の心配しているよ、というアピールの場で使っていただきたくありませんが、たしかに心配になります。ありがちなメール誤送信を大胆に不倫メールとすることで、次への展開の想像が膨らむ奥行きのある仕上がりとなっているところを鑑賞して欲しいものです。
猫でよい今が終わればそれでよい
過労不撓
【講評】
いきなり〈猫〉から句の冒頭にもってきています。猫はかわいいですが、人の役にはとても立ちそうにありません。ましては仕事の役には絶対に役立つことはありません。
ここの句で求めているのは「猫の手でも借りたいほど忙しい」と訴えているのか、癒しがない女性陣に対し宣戦布告しているのかの、どちらですかであると読取れます。
詠人の過労不撓さんからのネーミングから見て、明らかに前者です。最後の〈今が終わればそれでよい〉ただし、次の仕事も大変そうに予感できる構成になっているのに驚かされます。過労で倒れないようにお願いしたいです。
電故で客先行けず指名停止
営業三年柿八年
【講評】
電故とは電車事故の会社用語です。使用にあたっては注意が必要です。ただ電車事故で到着が遅れ客先に行けなかったよ。と、言っているだけの作品です。
注目すべきは指名停止です。お客様は自治体もしくは公共団体であると思われます。企業にとって官公庁の指名停止ほど恐ろしいものはありません。その間、お客様からの指名はできないだけでなく、契約もできないのですから。
かならずこのような不足の事態に備えて変わりの人を立てておくものですが、現実は人で不足で困難なものです。遅れないように気をつけていただきたいものです。指名停止処分が一ヶ月であることを願って止みません。
パチンコで定期の金を使い込む
金 有蔵
【講評】
誰にでもあるような経験ですね。特に遠距離通勤の方は6カ月定期の入金額が十万円を超えることは普通にありますね。
句そのものには同情の余地はありませんが、ストレートな表現で今後どうなっていくのだろうかと、想像してしまう構成となっています。ある意味期待が持てます。
仕事と称して〈仕事〉する。
金 有蔵
【講評】
仕事とはどういった仕事なのでしょうか?
ヒントは詠人が前作と同じであることですから、当然パチンコCR必殺仕事人であることは間違いありません。私もだいぶん大金をすられたものです。ただ〈仕事と称して〉と詐称におよんでいることから詠人には家族があることと推測されます。この句の奥行きに広がる暖かい家庭まで想像できる構成となっています。しかし、その後の修羅場も容易に想像でき、私達にこの句が自虐性を持つ二面性をもつことを詠人は教えてくれるのです。
無休で労働無給也今月困窮
過労不撓
【講評】
一見、漢詩を彷彿させる変句です。応募規定の逸脱にも関らず応募して止まぬ詠人の不撓不屈の精神が感じられる作品です。
明らかに労働規程違反ですが、長時間残業で会社から打刻カードを取り上げられてしまったのでしょう。この句は会社批判というよりただの韻遊びです。年休連続申請でなんとか標準月俸をもらって欲しいものです。
これだけ残業すれば困窮することはないでしょうが、ローンを抱えながらの自転車操業である場合、一定収入がないと大変です。過労さんの家計設計を見直して欲しいものです。
桜咲く花見の場所取俺一人
万年新人
【講評】
季題は〈桜〉と〈花見〉です。春の句ですが句の中に二つも季語を重ねることで春を謳歌した作品です。桜の美しさだけでなく、満開に咲き誇る桜の木の下で催される宴の光景が鑑賞者を捉えて離しません。
しかし、花見の場所取りとは概して面白くないのものです。新人の重要なお仕事の一つです。いくらすばらしい桜の木の下にシートを敷いて待っていても、宴会は夕方。電燈もない暗闇の中で花見をする破目に。ここの場所取ったのは誰だと、課長や部長が酔いに任せて怒鳴る光景も想像できそうです。
この句では花見の場所取は電燈の下が基本と詠人はそっと教えてくれているのです。
講評に戻りますが、〈俺一人〉という批判に満ちた作品となっています。現状に満足せず、何故自分がここにいるのかも不満であると訴えているようにも感じられます。
花見の場所取にはポータブルDVDが必要であることを痛感させられますね。これまでの句とは違う新境地を開いた忠告作品に分類できるものです。詠人の部署には新人が配属されず、いつも〈俺〉がやっていると部の批判を万年新人という思いを素直に出しています。詠人への深い同情を寄せることができます。詠人のネーミングも含め句全体を簡潔に纏め上げ、鑑賞者の心に強く訴えています。今回の応募はこの句しかありませんので、次回に期待したいものです。
今回応募が無いため休載といたします。
編集部より
なぜ女 だけに部内費半額か
男女同権
【講評】
部内費は組合費と違って部内で集める半強制金です。部内において金額は様々ですが、部内費を集めて飲み会や旅行の積み立てにするものです。しかし詠人の部内においては、女性が半額ということですね。
普通、女性はお酒飲まないからというのが、言い訳としてまかり通っており、そのことに異を唱えると部内の女性を敵にまわすことになりかねません。
ここでは詠人の切ない思いを鑑賞していただきたいものです。
しかし、ただの愚痴とも取れる危険性もあり、あえてここに投稿し訴えているのには編集部一同、共感を覚えます。今後も勇気ある投稿をお待ちしております。
文具品支給ないのは何故ですか
文具自腹
【講評】
文具品の支給がないのは、すでに予算超過で購入できないからです。会社が株価低迷で危険であるとかそういった問題ではなく、多分ですが、文具類を大量にフリーマーケットで販売している人がいるものと推察いたします。または各自文具類の支給が少ないので、溜め込んでいるのかもしれません。
いずれにしても文具がないのはしかたがありません。支給されるまで気長に待ちましょう。
休めない私に休めと云う上司
無休労働
【講評】
過労不撓さんと同じ悩みを抱えている作品です。ただし、過労さんと違って回りが気遣っているような暖かさを感じさせられます。私なら季題を夏として
夏休み取れない私 上司無視
編集部
としたいものです。これまでも季節を感じさせるものが、あまりありませんでしたが今後期待したいものです。詠人の今後の成長が楽しみであるとともに、特別休暇くらいは取得して家で休んでいただきたいと切に願います。
編集部後記
数少ない作品を厳選することでさらに高品質な句を選することができました。また多く皆様の支持のおかげにより、これまで継続することができ、紙面をもって厚く御礼申し上げます。
さて、掲載にあたって多くの苦情等が当編集部に寄せられ、これ以上の掲載継続が困難な状況であると同時に応募数の減少によりこれ以上の継続を断念いたします。本企画を見直すと同時に本企画「時々のうた」が再掲できる日を願って止みません。
編集部一同
選者飯田正也
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