中二の春、佐藤相平先生がわたしたちのクラスの担任になった。
先生の顔や体形はよく覚えていない。メガネをかけていた気がするけど、気のせいかもしれない。三十代半ばくらいだった思うけど、四十代って言われても、実はまだ二十代だって言われても、納得できる。
でも、ひとつだけよく覚えていることがある。
佐藤相平先生はハゲだった。
ハゲの印象が強すぎて、他の印象がうすいのかもしれない。
先生は頭を坊主にしていた。でも、その坊主は野球部の男子の坊主とは違っていた。輝いていた。夏の日差しが当たった時、うす暗い視聴覚室の照明をつけた時、先生の頭は光を反射した。
でも、ハゲの先生なんていっぱいいる。小学校にも中学校にいた。きっと高校にもいるだろう。おでこがちょっと広くなったくらいの人もいれば、髪がまったくない人もいた。髪をバーコードみたいに固めてハゲを隠そうとしている人もいれば、サイドの髪だけがのびてハゲが目立つ人もいた。もちろん、スキンヘッドもいた。
それなのに佐藤相平先生のハゲだけが、あざやかに記憶に残っているのは、先生がハゲについての授業をしてくれたからだ。
夏休みが終わったばかりだった。日差しはまだバカみたいに強い。しかも昼休みの直後。わたしはあくびをしながら、佐藤先生の授業を聞き流した。教科書すら開けていなかったと思う。前の席にいる瑞希のペンケースについたハワイ限定のキティちゃんのキーホルダーがうらやましくて、ずっと見つめていた。
クスクスという笑い声が聞こえてきた。理由はすぐにわかった。窓際の席の翔樹が、アクリルの下敷きを使って、太陽の光を先生の頭に当てている。男子がまたバカなことをしてる。って思ったけど、頭が反射した光が黒板をぼんやりと照らしていることに気づいて、わたしもちょっと笑ってしまった。
先生はチョークで板書するのを止めた。
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