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苦い朝、微熱

砂糖抜きのメランコリー(第1話)

都築 理都

揺らぐ輪郭のまま生きていく
不確かで美しい心の断片

歌集の第一章です

640文字

千切れたる翼のままで飛ぶという

狂気にあらずそれは寂寥せきりょう

 

映る影われにあらざる気がしては

爪を立てたる冷たき鏡

 

夕映えの空に溶けゆく鳥の影

永遠と須臾の境を渡る

 

言葉とは光の粒子降り注ぐ

沈黙の海に沈みゆくもの

 

深呼吸する肺の中酸素満つ

シアノバクテリアの遺産なりけり

 

通勤の人波に揉まれ思いおり

群れる本能魚の時代

 

何色のリボンにしましょう?無料なら

一番強い色をお願い

 

ひそやかに面の裏の紅濡れて

夜の底なる鬼を抱きおり

 

さよならの輪郭だけが白くなる

冷蔵庫から卵をひとつ

 

冬の海へ石を投げれば沈むまで

母の記憶が波紋となりぬ

 

暗きより炎のごとく湧く言葉

鬼も仏も胸に棲みけり

 

りんご剥くその指先を濡らすのは

冷え冷えとしたわが身の情念

 

荒ぶるは月の光か水底の

砂金もろともすくいあげれば

 

『好きだよ』と言えば言うほど嘘くさく

なりゆく言葉の賞味期限

 

息をするたびに内側削られて

鉛筆の芯の様な冬空

 

母の忌や仏壇の前でふと思う

あの人今も煙草吸ってる?

 

愛される理由を欲して海に来た

足首までを塩が満たして

 

つめたいを正当化するセーターの

毛玉をむしる夕暮れの部屋

 

つかの間の命を燃やす蝶々の

羽音の如くお前は消えぬ

 

燃え殻の微熱を抱く灰皿の

底に静かに月は満ち足り

 

また明日ねと手を振る君の指先が

少し寒そう八月なのに

© 2026 都築 理都 ( 2026年8月8日公開

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