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嬰児交換法

鷹枕可

想像と幻像と妄想と現象の溪間に、それとなく晩年は掛けられているのであった、

タグ: #散文詩 #自由詩

342文字

凍薔薇の下、
十字階段に靠れて
安息週間の為に実母を殺めた
少年に
鳶色の遺髪を求たれば
地下納骨を追葬とする
旧伽藍堂に燃える八月
洗礼
医療器具
綻ぶ棉花を血に染みながら
日本人霊歌を悼みたまえ
_
白磁の膚隔てて屹る百合を
宛も吾も
亡柩さえも
つかみ損ねて
複頭樹の雪花石膏には咆哮を
聴音と遺し
響き亙った死の婿、離散
それは諸諸の虚燭に燈されて猶も
円錐曲線を擬える
死の屈指に胸戸を開き
華燭より礎は退く
卵塔の釣鐘に淡く繊細なる眦を置いて
_
症例a、
肺臓に青き菊花を泛べて
驟雨の街窓にそぼ降る
壌を嗅ぐ
呼気に濡れる
車窓に球体の咽喉を
沈静し
眩暈のごとき工蝶群は死に逸るとも
消炎器に堰き止められ
果敢の営為は
秘匿裡の侭
打ち捨てられるべき疵持つ為に
_
蛇苺の篭を取落して
少年の学生帽は
雑踏に揉まれ離れる
たったひとつの絶唱なるべし

© 2020 鷹枕可 ( 2020年9月10日公開

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