白濁のコップの池に小蝿死ぬ
夕焼けは空を眩き朱色に染めては人を立ち止まらせる
駐輪場働く人の尊さに世の人間で勝るもの無し
雷は時にぴしゃりと鳴り降りて子供泣かせる神の気紛れ
雷に騒ぎて大人は子供還り
蜘蛛の糸空に向かいて唯伸びて
蝉の声鴉も鳴きて今は夏
和服着て鏡を見れば死に姿未来の自分拝みて笑う
ビル群にさても巨大な大阪城夏の凋落今はかすみて
黒色のボロ切れ道に倒れ伏し黒猫の死かと思いし夏の日
雨の露心の奥まで腐る夏
道端に破れし原稿風に吹く若者どもが夢の跡哉
天気雨屋根は光りて燃えて見え
制服の幼稚園児を見る度に脳裏過ぎるは育ちの差なり
地獄とは死後にはあらず世にありて人は生きては地獄巡らむ
海月の生きる姿を手本にしこの世に浮かぶ我はうつけか
ふと見ゆる青空の青浴びてみて一握の幸思い出される
葛切は漆黒に浮かぶ羽衣か清涼の白に我浮かぶ
吠えるのも寝転がるのも愛しきや我が紬の黒き瞳光る
曙の駅は鳩ども飛び交わし朝寝坊の人間を笑う
朝日出て武蔵野バスがドア開く
畑出て朝日と共に土に会うミレーの絵画と同じ様に
滝の音の岩場の陰に葉の浮かぶ
夫婦の背慶沢園に佇みて池のせせらぎ鳥の囀り
夏の陽に人は皆々傘指して我はそれ見て木漏れ日恋しく
岩肌の如き手に線香の香染み付いて祖母よ貴方は壺菫色
お盆の日祈りの花の花畑
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