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生活の中の断片的な詩集Ⅶ

人間賛歌(第68話)

山雪翔太

無季俳句・短歌中心。書き溜めてしまったので長いです。

タグ: #俳句 #短歌

691文字

白濁のコップの池に小蝿死ぬ

 

夕焼けは空を眩き朱色に染めては人を立ち止まらせる

 

駐輪場働く人の尊さに世の人間で勝るもの無し

 

雷は時にぴしゃりと鳴り降りて子供泣かせる神の気紛れ

 

雷に騒ぎて大人は子供還り

 

蜘蛛の糸空に向かいて唯伸びて

 

蝉の声鴉も鳴きて今は夏

 

和服着て鏡を見れば死に姿未来の自分拝みて笑う

 

ビル群にさても巨大な大阪城夏の凋落今はかすみて

 

黒色のボロ切れ道に倒れ伏し黒猫の死かと思いし夏の日

 

雨の露心の奥まで腐る夏

 

道端に破れし原稿風に吹く若者どもが夢の跡哉

 

天気雨屋根は光りて燃えて見え

 

制服の幼稚園児を見る度に脳裏過ぎるは育ちの差なり

 

地獄とは死後にはあらず世にありて人は生きては地獄巡らむ

 

海月の生きる姿を手本にしこの世に浮かぶ我はうつけか

 

ふと見ゆる青空の青浴びてみて一握の幸思い出される

 

葛切は漆黒に浮かぶ羽衣か清涼の白に我浮かぶ

 

吠えるのも寝転がるのも愛しきや我が紬の黒き瞳光る

 

曙の駅は鳩ども飛び交わし朝寝坊の人間を笑う

 

朝日出て武蔵野バスがドア開く

 

畑出て朝日と共に土に会うミレーの絵画と同じ様に

 

滝の音の岩場の陰に葉の浮かぶ

 

夫婦の背慶沢園に佇みて池のせせらぎ鳥の囀り

 

夏の陽に人は皆々傘指して我はそれ見て木漏れ日恋しく

 

岩肌の如き手に線香の香染み付いて祖母よ貴方は壺菫色

 

お盆の日祈りの花の花畑

© 2025 山雪翔太 ( 2025年8月14日公開

作品集『人間賛歌』第68話 (全69話)

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