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夭折の作家

pera_pera

10年ほど前に少しばかり流行った作家のことを、覚えている人はもう誰もいない。

小説

648文字

 眠らない街とは言われるけども、住宅街のほうに行けば東京だって案外静かですね。街灯の光だけは相変わらず眩しいけれど。蛾なんかが集ってけんかしているのが見えます。あの攻撃的な光になんとなく惹かれる気持ちはなんだかわかる気がする。あの蛾と僕に違いがあるとすれば、周りに広がる静かな闇のさみしさを僕は少しでも理解しているということなのだろうか。こんなに家はたくさんあるのに、僕の家はどうして、ああ、一軒もないのさ!いけね、こんなことを考えてたら繭になっちまいますね。危ない危ない。

 

 辿り着いたのは小さな公園で、そこには小さな滑り台がありました。上に登って寝転ぶと、星一つない曇り色の空。地上の光が自分達より明るいもんだから、お星様は忸怩として逃げていったのさ。攻撃的な光!どの世界でも弱肉強食は永遠の理なのです。

 こうやってひとりで寝ていますとね、遠くに聞こえる電車の音と、身体を流れる血液の鼓動がどごっどごっと共鳴して、嗚呼生きてるーって感じがする。そいで、その血の音をじぃーっと聞いていると、体の内部がだんだん膨れて、耳が内側から押されて破裂しそうな、変な感じ。あと少しでタガが外れて、ああもう爆発する!ってときに、いつも目を開けて止めてしまう。助かった、って気持ちと、失敗した、って気持ちが混ざって、総合的にはちょびっとだけ後悔します。結局これもつまり、僕が臆病者であるからなんですね。あとちょっとのところまで行っても、その先進む勇気はないんです。僕もここまでです。ごめんね。ごめんなさい。

© 2022 pera_pera ( 2022年10月31日公開

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