所長の犬を大田さんと2人で見に行った数日後、
「石渡さん」
大田さんに呼ばれた。
「なんですか?」
「これなんだけど」
と大田さんは1枚の紙を渡してきた。
それを見ると
「料理教室?」
「現場のリーダー達の親睦を深める為に企画しろって上から言われてさ。お願いなんだけどリーダー達に言って参加してもらいたいだけど」
「大変ですね。まぁ声かけてみますね」
「ありがとう!あ、もちろん石渡さんも参加してくれていいからね」
「はぁ」
頼られた事、誘われた事、嬉しくないわけじゃない。
ただ自分の貴重な休みを使って参加する意味あるか?と考えてしまった。
それに料理はそこそこ出来るので特に興味がわかなかった。
でも頼まれたので現場のリーダー達に声をかけて募ったがあまり参加してくれる人達が居なかった。
「大田さん、すいません。あまり参加人数居なくて」
「いや、数人でもありがたいよ。助かる。まぁ休みがバラバラだししょうがないよね。で、石渡さんは?」
「へっ?私ですか?」
「うん、俺責任者だから俺も行くし、写真撮ったりもしないといけないんだよね」
大田さんも来るのか、この日私はちょうど休みだ。人数合わせで出た方がいいのか?
リーダー達だけに任せて管理者が出ないのも良くないか…
「用事あるかな?」
と大田さんに聞かれた。
なんとなくだけどこれもチャンスなのではと考えてしまった。
「ちょうど休みなので参加します!」
と言ってしまった。
自分でも驚いた。でも管理者の立場だから…うん、そうだよと言い聞かせてる自分もいた。
「ほんと!良かった~」
と、大田さんは笑顔で言った。
あ、笑った…ヤバいかも…
「当日よろしくね」
と大田さんに言われたので
「はい、こちらこそ」
休みの日に大田さんに会える。そう思ってしまった。私の頭の中でどんどん大田さんが広がっていく。お互いに相手が居ることを完全に忘れていた。
連絡先交換はしたけど、犬を見に行った時しかやり取りはしてなかった。
恋人ではないし…お互いに相手いるし。
だからこそ他で接点が欲しかったのかもしれない。
この日から、私は料理教室が楽しみになっていた。早く日にちにならないかなと。
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