家まで送ってもらってから、私達の関係はより親密になっていた。お互いがお互いに意識をしてなるべく2人きりになるように15分休憩を取るようになっていた。
それでもまだお互いの連絡先は聞かずたわいもない会話をするだけだったが、私はそれが楽しくて嬉しかった。男の人と話すのに心がドキドキするのは生まれて初めてだったからだ。25年間生きてきて初めての感情。
遅い春が来た気がした。
でも私達は勤務体制が違っていた。私はシフト制、大田さんは土日休み。今までは土日の仕事は私にとって楽だった。彼氏という関係性の彼と会わずに済むのもあったが、人が少なく取引先の人達も休みだし、やっかいな同僚も休みでのんびり仕事が出来ていたからだ。
でも大田さんと話せば話すのほど土日出勤が寂しく感じていた。
そんな風に思っていた平日の日
「おはようございます」
といつもの様に事務所に入ると、大田さんの姿が見えなかった。いつも私より先に来ていたのに。身体が勝手に大田さんを探していた。喫煙所見ても居ない。就業時間になっても大田さんは来なかった。
休みかな?でも他の人には聞けないし…とりあえずいつも通り業務を始めた。
貴重な平日の時間、今日は会えないのか…残念。
そんな風に思っていた。
その日の午後、一段落した私は事務所に戻った。
「お疲れ様」
聞きなれた声が聞こえ見るとそこには大田さんの姿があった。しかも私服で。
私達の職場は制服があり、大田さんはスーツで出勤してるのは知っていた。
私服姿を見て、私の心が揺れた。
あ、普段そんな格好なのか…え、てかなんでいる?
「お疲れ様です。大田さんどうしたんですか?」
「今日調整で休みだったんだけど急遽仕事出来てちょっと来た。すぐ帰るけどね」
「そうなんですね」
平常を装ってたけど、私の心はバクバクとして煩かった。
今日は会えないと思っていた事、まさか私服を見るとは思わなかった事、その気持ちが私の心臓を揺らした。
やっぱり私この人に恋をしている。
恋を知らないのにそう思った。
これが恋をするという事。私の世界に彼が入って来た。お互いに相手が居るというのに。
ああ、そうだ。居るんだよ…自分の気持ちに気付いたと同時に現実が頭に浮かんだ。
"この世で最愛で最低な君へ"へのコメント 0件