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うんち味の……。

巣居けけ

悪魔頭蓋骨三世は西側の教室を破壊した。彼は、常に筋力を調節することができる体質だった。生まれた時、医者の切開ではなく自らの手刀で母親の腹から脱したほどだった。

小説

1,969文字

悪魔頭蓋骨三世は西側の教室を破壊した。彼は、常に筋力を調節することができる体質だった。生まれた時、医者の切開ではなく自らの手刀で母親の腹から脱したほどだった。

彼が最初に食したのは姉が排泄した人糞だった。美味だった。しかし、人糞のねっとりとした感触が二週間以上も舌先に残ったという。彼は、ここで気付いた。つまるところ女性の人糞とは、その女性の本来の性格よりよっぽど執拗で香ばしい。なので、彼は旅の中で無数の女性の人糞を食らった。街で、可愛らしい女性があれば人糞を食わせろと命じた。そうして彼女に、その場で下半身の衣類を脱ぎ、股を開けながらしゃがみ、地面に人糞を排泄しろと命じた。それからおれがしゃがんで、あの自動販売機の下に潜む硬貨を探り出すかのように舌先を伸ばして、人糞を食らうから、どうか、どうか足元にしゃがんでみてほしいと願った。

東に、可愛らしい女児があれば彼はすかさずお願いした。しかし女児は、どうにも腹の調子がいいと断った。彼は、落胆しながらもドーナッツを購入した。そうだ、あの日、姉もいつでもドーナッツを食べていた。彼は、ドーナッツというデザートの役割とは、いつでも人糞を快く排泄することなのだと思った。そうして女性にドーナッツをまずは食えと命じるのだが、女児はこれを、ただ彼が思いやりによって与えてくれたものだと勘違いを起こし、喜んで食べた。彼は、むしゃもしゃと口を揺らす女児を視ながら、ああここから、女児の尻穴から人糞がせり出てくるのだと思うのだけれど、女児はそれに反して、なんにも気にせずドーナッツを完食した。
「うまいか?」
「ああ、うまい」

待ってみようと、少し思った。

それから、彼は珈琲というものを知った。苦い飲み物だった。ドーナツツのように美しいものだった。彼は、このカフェテリアというものの座席のひとつに可愛らしい人を視た。それは、なんともスーツを着た長身の短髪の人だった。
「どんな、職業なのですか?」
「秘書であります」

その人は、そんなふうに彼に対し理路整然としていた。彼は、いつの間にかその人の対面の位置に座り込んで、珈琲を頼んでみて、それでも、目の前のその人が珈琲を啜る様子を視ていた。
「人糞……」
「え?」
「人糞……」彼はまるで珈琲を飲み干すかのように呟いた。「クソをしてくれませぬか」

それは、まさしく愛の告白だったのだけれど、彼は、生まれてから愛というものなど、少しも知らなかったので、ただ、目の前のその人にだけ、ああこれは愛の告白だな、と映るだけだった。
「私の、どこがいいのですか」
「珈琲を、飲んでいましたね」彼はまた力んで呟いた。喉の筋肉で喉が破裂してしまうほどだった。「それがいい」
「では、最高の珈琲を造ってみてください」
「なるほど……」

彼は、そうした相手の申し出に困ったなと落ち込んでいた。なぜなら、彼はどうしても、その珈琲というものの造り方について、わかっていなかった。見当がつかない。どういうわけか、あんな苦い、人糞そのもののような色をした液体を、造ることができるのか。あれは、人の手によって造られているものなのか。彼にはまったくわからなかったし、どういうわけか、理解したいとも思えなかった。
「教えてほしいのです」

ただ、彼は唯一、その人の口から、珈琲についての情報を聞いてみたかった。
「豆があるのです。豆を、砕いて、それから、湯に溶かすのです」
「なるほど」
「豆は、店主が持っています」
「なるほど」
「どうか、造ってみてください」
「まかせろ」

そうして、彼は席を立ち、すぐさま店主のもとに向かった。この店主という人は、気の弱い優しい男で、彼が自らについて説明すると、何か嫌そうな顔などせず、さっさと厨房を彼に提供した。

彼は、それからまず珈琲豆というものを手に取った。それは、なんとも苦そうな風味のする豆だった。確かに、これから珈琲が造られているのだな、と納得のできる色だった。彼はそのまま、右手をぐっと握り込んだ。豆は手のひらの上にあるので、そのまま圧迫されると粉々に砕け、彼はカップに豆を落とした。湯を造り、ゆったりと注いでいくと、茶色い水面がもっこりと現れ、彼はそのカップを慎重に、あの人のもとへ運んでいった。
「どうぞ……」
「まさか、本当に造るなんて」
「はやく、飲んでほしい」
「ええ、もちろん」

呟くと、その人は丁寧な所作でカップを持ち上げて、それから中の珈琲を、ずずいと啜り上げていった。彼は、その様子を眺めていたのですが、その、ずずいという音によって、ああ、母親がよく、深夜に、パソコンの前で鼻を啜っていたな、などと思い出した。
「うんちの味がする」

その人はそれから、彼の手のひらを想って呟いた。さらに数秒後、椅子によって圧迫されたあの尻の内側から、ぶぶ、という音が鳴った。

また、待ってみようと思った。

© 2026 巣居けけ ( 2026年2月22日公開

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