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昨年。

巣居けけ

「亜毛増死手汚目出棟御座居眞巣……?(どうにかして『あけましておめでとうございます』と喋りたいのだが、生まれもった宇宙的な発音機能による彼との差異によって、彼と同様の発言が実現せず、もどかしいながらも努力をし、最低限の発音でどうにか彼に察してもらおうとしている宇宙人の声)」

小説

1,849文字

「あけましておめでとうございます!」
「亜毛増死手汚目出棟御座居眞巣……?(どうにかして『あけましておめでとうございます』と喋りたいのだが、生まれもった宇宙的な発音機能による彼との差異によって、彼と同様の発言が実現せず、もどかしいながらも努力をし、最低限の発音でどうにか彼に察してもらおうとしている宇宙人の声)」

などと早漏らしく呟いたのは立方体……。そうめんのような体たらくでみんなを道連れにしたいと考えている動画投稿者の一味……。誰もが、いいや誰でもない空のような存在であっても、いつでも明日という朝日のために仕事をしている。ポテトラサダらしい顔つきが似合っている……。みんなが工具を持っているわけではない。しかし、誰であっても、街に住んでいるのなら注文した住宅街の破壊と殺戮と天使と悪魔と世界規模の再生成とゲームカセットの破壊を求めている……。

ゲーム機械が破壊されてゆく音が聞こえる……。指先が五つに視える……。スプーンの痕が頬にはりついている………。数学教師の連中が、試験管の在りかについて真面目に論じている……。教団が靴を造り、階段だけが得をする時代がもうすぐやってくる……。いったい誰が、こんな仕組みを悦ばしい協定だと思っているのだろう……。教室の隅で絵を描いている少女がいる。僕は明後日ではないのだけれど……。だから市役所に警部補がくる……。
「酒を」
「ここは行政ですけれど」

などと口走る受付係の女を警部が殴る……。おれの階級はおれが決める、などと頬を赤らめて酒を啜っている………。おいおいおい、ここでミスをするんじゃない。手錠をかける相手を間違えるんじゃない。サメのようになりたいのか……?

それとも、お前はいつかのコートの男のように死にたいのか……。死にたがりの首吊りマシーンが女児のにおいを思い出している……。歌手が歌い、僕たちはあの天変地異よりすさまじい咆哮のようなどよめきで舞台を刺激する。いつでも両腕に神様が宿っている。人々は誰であってもゲームカセットの裏側を視たことがないし、店員どもは酒をのみながら仕事をしたことがない。「おれにいわせれば、酒を知らぬまま仕事するなんてありえない」数学教師を強姦しながら警部が呟いている……。インターネットで視たばかりのライフハックが強姦されている。テレビの向こう側の全てが信用できなくなる。階段が嘘をつき、赤い国旗の中に美女が浮かび上がる……。
「博士、これはどういうことなのですか?」

助手たちがどよめきながら歌手のように呟いている。
「これはな、立方体花形早漏機電装置という」
「なんですかそれ」
「それはな」
「なんですかそれ」
「これは一種の国民心理抑制装置に分類されるものなのだよ。つまるところ、誰であってもこの国旗を視れば、自分の理想の美女が視える……」そうしてワシはこんな美女に貫かれてみたい。八九式の自衛隊のような小銃を持つこの美女だけが、弾丸と発射装置と、その宿命のような道筋を許可されている……。
「博士、博士、僕たちには山羊が視えますけれど」
「君はケモナーだったのか……」それならこれを観ておけ、という号令と共に、国家の中に例の獣だらけの明るい声色のアニメが放送される。「よくわからんが、第二期だけはエ・ジーだといっていた……」和服の男のことを思い出す。「ヤツは散髪をしらなかった」

警部が研究室にたどり着き、警部補の時の手帳を提示して手錠を示す。
「おぬしはどうして刑事をやっているんだ?」

博士はそれでも国旗抑制装置のことを信用していた……。彼は、生まれつき理解力が人より達者だったのだ……。まるでコンピュータであるかのような聡明な考え方……。なぜ、人々が電子的な快感を常に求めてしまうのか、というところについて彼は理解しているのだ……。
「腕が疲れるのだよ。さっさと切り落としてくれ……」

果てしなき・ドーナッツを食べながら命令する疑心暗鬼の男……。警部は空を見上げた。この空も、あの空も蜃気楼で繋がっている……。警部はいつの日かの、あの医学の男が持ち出していた蜃気楼発生装置について思い出していた……。脳裡に硫酸のような思考回路がつねに巡っている……。惚れた女が歌手となり、そうしてアニメの主題歌さえ歌っている現実ににやけている……。なぜ、人々は自分の背丈さえ忘れて、理想に手を伸ばそうとするのだろうか。
「今なら蒸着だってできそう……」

夜が明ける。新年がやってくる。そして、超宇宙刑事ギャバンインフィニティ、放送開始です。みんな観ようね!

© 2026 巣居けけ ( 2026年2月16日公開

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