
実のところ、石ころは魂を持っている。そして彼はこう考えたのであった。
「あぁ、人間って云う奴がいるなぁ、そんな奴らに蹴飛ばされ、転がされてきたんだ。人間ってのはそんなに偉いもんなのか?」
よく分からないが私は人間に蹴りに蹴られて川辺にたどり着いた。
そこには二十代前半だろうか二人の男女がたむろしていた。
男が言う。
「俺はこんな川みたいに純粋になりたかったんだ」
女が返す。
「そうだねぇ、何も考えずこの川が流れるように生きていきたいよ」
石ころはかんがえた。二十代にしては厭世的すぎるだろう、と。
また男は続けた。
「そういう生き方もあるんだけどさ、流れるままに生きていると飽きてしまうんだよ、そう思わない? まあ僕の考えだが」
女がかえす。
「確かにそうかもしれないけれど、流れるように生きていくというのが無難な生き方な気がする。」
男が私を見つけると、手で握った。私は思った。《あたたかい》。
その私の心が通じたかのように男は両手で私を握りしめた。
隣で見ていた女が
「あなたと違ってその石ころは冷たいのね」
男が返した。
「俺だって冷たいよ。手だけあったかいフリしているだ」
石ころは思い出した。
「心の冷たい人は手が暖かい」
どこかできいたのを思い出しのだ
その時洪水が起きて石ころも男も女も葉っぱも木も枝も全部海に流された
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