マァイケル・ドピターの将来の夢は小児歯科医だった。という話を信じているものは誰一人として居ない……。彼は幼少の頃から女性の歯列というものに性的興奮を抱いて興味関心すら得ていたが、それは自分が最上級の権力者であることの表れであり、つまり、彼は、彼というものは、存在は、概念は、白衣マニアのこの男というものは、女児の歯列をむき出しにして鑑賞するということこそが自身の中で発生している生きがいであるということを信用している……。
そのマァイケルというものは常に巨大な鞄を持ち歩いている……。その鞄というものの中に投入されている書物とは二種類……。女児向けの雑誌……。女児を強姦する小説が掲載されてる週刊誌……。それだけ。それのみ……。
「おいセンセ、その鞄の中にはなんだい? 犬でも入っているのかい?」
いくつかの花の形を造った大学生が鞄を指さしていかにも工業製品っぽく尋ねてくる。彼らはそれぞれが船乗りだったり漁師だったり山師だったり数滴研究者だったりという有名な地主だった……。しかしマァイケルに、何か、他人の雰囲気だけで出生を理解するほどの心理学的な趣向は一切無い。
マァイケルはその鞄を持ち歩きながら二つの公園を傍観してココアを飲み干してから大学のカフェテリアの人数を数える練習をしてマンションを後にする……。女児の雨のような香り……。女性的な大気が背中を追うように付いているマァイケル……。
この精神医学大学というものは硝子製の建物で、極めて静謐で、いかにも学者らしい湿度の中に重苦しく在った。
そしてマァイケルは、自分でも測定不可能はほどの粘つきによってようやく予定の教室の扉の前に到達していた。
「ご苦労様です」
受け付けの女性が身振り手振りでアナウンサーらしい滑舌を選ぶ……。
「まるで僕が何かをやった後のようじゃあないか!」
マァイケルは右手にかかる重さを意識しながらさらに進めてゆく。
「恐れ多いです」
「そうかい。まぁいい。それで君」マァイケルは自分が引っ張っている鞄を少しだけ持ち上げて指差しをする。「稀にね、この本の中に本物の女児とヨイショをすることができる場所が記載されるのだ。稀にね」
「それは、どれくらいの頻度なの?」
「僕が知っているって? はは、まさか」受け付けの女性に向かって応えるマァイケル……。そう、マァイケルは中学時代からその雑誌というものを読んでいるが、そういう住所のようなものを黙読した経験は一度も無い……。
「それで、君、ここを通ってもよいものなのかな?」マァイケルはいつかの航空会社のような口を作る……。自分の指の一本一本がまるでチョークのように数式を導いているものだと認識しながら眼前の陶器のような大学教室の扉を開いて入ってゆく……。
まてよ、この大学には来たことがあっただろうか……。いいやないはずだ。「それでもかまわないさ。僕は歯科医なのだから」
全ての大学生が一斉にマァイケルを視る。視ている。首が向いている。石炭と石灰岩の中間地点に在るような焦げている頬の軍団……。それは週末に予定していた映画の発売を想起させるほどの香りの集団……。さらに幻覚にすら到達する人々の影と重さと周波数……。ありとあらゆる概念がラジオ・ボックスで聴取できる時代……。全てが科学的な根拠ともにあるのだから……。
「ええと、ありがとう」
その視線というか圧というか、どうにも物理的な感情の粘つきが一斉にマイケルにのみ投入されてゆく……。
マァイケルは自分がはく製にすら成るほどの天才的なコメディアンに成ったつもりで教卓に両手を置く……。巨大カメラを探しながら鞄の中の教科書を取り出す……。
それから教科書を展開してホワイトボードを展開して折りたたんで女児を想って停止したが動き出してインターネット上の低俗な動画――インターネットなんて皆、絵、なのだよ――をいくつか閲覧した後に透明な粘液におかされている教卓に戻って数名に減った大学生を眺めた後にため息を吹いて授業を再開する……。チョークの位置を最前列の生徒に訊ねたことが一つの嗤いが発生する……。マァイケルは自分の素手を眺めるがそれは黒い指。五本の黒い棒……。マァイケルは静かな顔つきで咳払いをして蟻をはらってから自分の指だけで授業を続けてゆく……。
「いいかい、まるで――」マァイケルはコンクリートで作成されいる磨かれていない埃だらけのこの大学教室の大きな教卓についた後に自身の両手を使って見様見真似で講義を開始する。マァイケルは四十三年の人生の中で一度も誰かに向かって何かモノを教えたことが無い……。
「いいかい、まるで僕がアダルトビデオで興奮している淑女のように語られているが、それは大きな間違い。当たり前だろう? だって僕というものはつまり王冠なのだから。この街という王様が被るべき王冠」マァイケルは王冠という単語をとても気に入っているため丁寧に扱うことがある。舌を丸めて柔らかさを主張した後に口腔内部の唾液を懸命に操作してぬらぬらと震える王冠を前方に突き出して他の鼓膜に浸透させる……。僕が王冠と言う時は他に聞かせるときではなく他に魅せる時……。マァイケルは唐突に海老ぞりをして自分のただ二つだけの乳首の位置を主張してくるので大学生たちは驚く。マァイケルはそれを視認した後に自分の歯列体験を語り出す……。
「まずは女児をみつけることだ。慎重にな。あれらは繊細で、だからこそ美しいのだけれど、だからこそ、すぐに母親だの父親だの教師だの友達だの兄弟だの山羊だの医者だの卒園した幼稚園の先生だのといった邪魔者を呼ぶのだ。迷惑だ。とてつもなく迷惑だ。さっさとやらなくてはいけない。さっさと捕獲しなくてはいけない。まぁ安心したまえ。女児というものは他に比べて発達が遅いのだ。それは肉体的な話として成立する仮説ではあるが、違う。今話題にしているのは精神的、あるいは人権的なものだ。つまり女児というものは肉体的な誕生と人権的な誕生の瞬間がずれている。だからこそ、我々の手の中に落ちてくる。簡単ではあるが、慎重に、だ……」
そこで独りの生徒が手を上げてマァイケルに合図を送る。マァイケルは彼の脳髄の数式を素早く解き明かすふりをして無視をする。「ええと、次いで――」
「この人で無し!」生徒は下品というだけでは物足りないらしい欲求不満的な態度の沸騰した糸のような形状の怒気を浮かばせながらさっさと起立してマァイケルに威嚇をする……。それは女児よりも女児らしい女々しい態度だったが女児ではなく……。マァイケルは自分の貧乏ゆすりの連携で大学を一周した後にその生徒の脳髄の数式に混入物をとろとろと差し込む……。彼の小さな盗撮のような貴重な悪臭の孔の、その奥の部分から二本の血の赤色が垂れて隣の女性生徒にまとまって飛散する……。それは赤子が母親に貼り付く様に似ているが異なった痴態……。女性生徒が味わっている途中の色が抜けきっていないガムのような質感の声で抗議をするがマァイケルには聞こえていない……。マァイケルは大学の名誉教授の心地で椅子に座るふりをする。白衣だけが冷たい床に触れてマァイケルの背骨が側弯症を描く……。
「まず女児を捕まえたな。それで、ええと、あの、つまりだな、僕は彼女の歯列を覗いて観たいと思ったのだ。へへっ。すごいだろ。みたい、とね。うん。それだけさ」そこからマァイケルの周囲の風景が先月の刑務所の中へと移る……。マァイケルの額の汗のような湿り気が宿る。マァイケルの膝が真新しい貧乏ゆすりを演じる。対面している女性取締役の表情のようなものが引き締まる。彼女の頬にべっとりと粘着している血のような赤の色彩と鉄っぽい風味に腹が鳴る……。
「ああ、僕はあの日の女児の歯列を視たいと思ったさ。確か、だよ」
マァイケルという唯一の彼は自分の歯列の形と数を計算して計画するカウンセラーのような態度で進める。前回の取締役の顔と女児の熱を思い出すように探って語り出す……。「工場の跡地のような場所に彼女と向かったんだ。そうだ、昼下がりだった。彼女はまだ僕がキャンディーを与えてくれる神父だと信じていた。馬鹿な子だよ。だって当たり前だろ? 神父が工場の跡地になんて居るかね、普通。けれどあの子はそういう部分を考えることができていないのだ。きっと発達が遅いというだけではないのだ。おそらく母親が怠慢なのだ。親がだらけている人間なのだ。それだと子供も思考を停止してしまう。あの、なんだったか。ええと、ほら、スマートフオン? フオオン? だったか。あれのせいだね、きっと。まぁとにかく、僕はあの子と工場跡地に入って椅子に座った。彼女はまだ異変には気付いていなかった。その跡地というものは僕の手術室だったのだ!」そこでマァイケルは立ち上がる素振りをする。素振りだけ……。マァイケルの太い腕は二つとも椅子によって拘束されている。事情聴取の最中に事情聴取対象者が腕を自由に動かすことは国そのものがまだ認めていない……。「なんということだ」マァイケルの唇がそうやって再開する……。「で、だ。彼女をこうやって、拘束したんだ。ぐぐっとね。まるで初恋みたいにね。ぐぐっと。へ、そこで彼女はついに気付くのだ。自分の乙女のような部分に、自分ですらまだ自覚していない部分にわからない素手が迫って来ているということを自覚するのだ。へへ、けれど遅いっ。ふふっ、へ。へへ、へ、へ。へへ。遅い。もう遅いのだよ、君……」マァイケルの唯一の声がまるで神父のように反響する。周囲の光景が工場跡地のような場面に到達して外気が広がる……。
手術台のすぐ横に直立しているマァイケルは右手の拘束具を女児に取り付けた。それは特注のものであり、マァイケルが知り合いの裏側の技師に多額を支払って制作させたものだった。つまり、今マァイケルが対面しているこの女児専用の開口工具であり、その曲がりくねった手錠のような外見の金属装置は彼女の口にはまって動かなくなっていた……。彼女の硝子のような声が変動する。それは分厚い布の下から聞こえているような声、詰まって潰れたティッシュペーパーのような声。乙女が自分の乙女的な部分を必死に主張する時の声。美声……。男を発火させるためだけの悲鳴……。彼女がそういう艶やかな情緒に至った瞬間……。マァイケルは右手の医療的メスを彼女の唇に添えてゆく……。
肉は柔らかく、身体は熱い……。震えている肢体はきっと美味……。甘美な風味がマァイケルの舌の上に再現されてゆく……。素手が恍惚で震えながらそれでも進む……。唯一の彼女の貴重な内側から垂れてくる血はどこかの取締役の頬に在るものよりも色濃くて深い臭いのだ……。
「ああ、喜悦だったね。間違いないよ」マァイケルは誰に向かってというわけでもなく回答を上げる。それこそが自分の中の使命であると信じていたし、何よりマァイケルは、自分の中の女児への愛を信用している……。
対面している女性はメモ帳を無視してマァイケルの右肩を眺めている……。
マァイケルは自分の医療的メスを引いていく。女児の声がさらに上がってキィキィ踊る……。太ましい唇が嫌気をさしたように剥がれてゆく……。マァイケルはそれを手伝うように引き剥がす。女児の声が艶やかに落下する……。マァイケルの男性的なメスの部分が整いながら懸命に発火を開始してゆく……。素手の中の医療的メスをもう一つの下部の唇に添えて引き絞る……。「血が、多いね。拭こうか」
唖然と唾液の風味に包まれている大学生男女の中で、唯一、白っぽい硬い広いティーパーティー的な対応を続けているマァイケルは、それから、二人の女児に同様の刺激を与えたことを語っていった……。
それはまさしく神父の様相だったが、彼は、幼少期に神父の父から尻の穴を二乗させられているため血相にはむしろ警察官のような執念が浮かんでいた……。
「あの、先生」大学生女性がたった独りきりで挙手をする……。その素手にはアトピー性皮膚炎の香りが残っており、マァイケルはその内側の血の雰囲気に誘われる精神病者の顔で前進して彼女の隣に座る……。「まぁ座りたまえ。どうしたのかね、ええ?」
「ええと、あの」という動揺を隠している女子大生はするすると、巻き戻ってゆくような血相で自身の尻の残り香に戻る。「あの先生、先生はいわゆる小児性愛でしょう? どうして私の血に?」
「んんん、違うね、君」
「はい?」
「違う。全く違う……」マァイケルの声がまるで消毒液のように彼女の素手の中に浸透してゆく……。「まず僕は神父だし、君は、自分の過去の経験と今の僕の話を照合して語り掛けているはずなのだ」マァイケル上等技能神父が頭突きのように立ち上がっている。「そう、まるで聖母のように!」両手をYのように開閉して小走りで教卓に上がって放尿を続けながら裾から当時の医療的メスを取り上げて臭いを嗅ぐ……。「うん。まさにそうだ。彼女なのだ!」
「先生、まさかあなたはっ――」
叫び声に反応するように彼女の頬の中に医療的メスが飛散する……。剥がれかけている下部分の舌の肉が完全に離脱するように落下して床に向かう……。
しかし横から伸びた素手によってナイス・キャッチを演じられてしまう……。
「まったく、なんだねっ、君は」マァイケルが素手を戻して教卓から降りながら問いかける。机の下側から顔が浮き上がる。
「これはワタシが貰いますね、先生。……いいや、へ、神父さま」
彼女の下顎に女子大生の唇が綺麗に挿入されて一つに成って発声がガムから見事に鮮明へ至る。その頬には、甘い甘い赤色の模様のような血飛沫……。
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