気付けば少し前まで降っていた雨は止んでいた。輪郭がはっきりしないほど辺りは暗い。磯の空気はいつにも増して湿っぽい。水溜まりが車道にたくさんできている。僕はできるだけ道の外側を歩く。それでも気遣いのない車が水溜まりの上を走れば、水飛沫は僕の傍まで飛んでくる。歩道が浜辺のほうへ折れるところまで来て、僕は歩みを緩める。ゆっくりと外灯から遠ざかる。微かな波音、そしてそれに応えるように船が何かに擦れる音。フナムシたちが僕のために道をあける。月明かりだけが頼りだ。ずっと向こうの埠頭の光がぼやける。家に着く頃には睫毛は濡れてしまうだろうか。
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