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破滅派の破滅、それは何時訪れるのか――、暫し御笑覧ください。

タグ: #合評会2026年3月

2,236文字

 

死體の山を接木をしたかの様な白燐弾が散布されている此の市街に於いては、
貫通銃創の少年達は貴重であるがゆえに<止めよ>と叫ぶ、
竜胆の話言葉が創作者達の忌憚の無い惡趣味であるならば今すぐに止めてくれ、
蛇口を絞ると純金の貨幣が出て來るのは18世紀倫敦での話、
直ぐ様散れ、と叫ぶテュダー朝の薔薇が抜身を提げて嗤っている、
銃眼野には第一象限から欠落した昇降機の雪が散っているからか、
普く眞實は虚言である、
チェダーチーズの鱗粉が目蓋に降りかかる、
一切は投光器の投網に掛った硫酸爆撃機の呟きであるとしたのならば、
現實狂時代の仮想通貨は血であり水である、
かんふらんふるたいてんの櫻花を戴冠した贋教皇!!
重篤な十徳ナイフを呼覚ませ、
鑑別所の指定審問員が十三時のベルを鳴らすと、
永遠の相談窓口には死海文書の指紋を求める痴愚者の列、列、列!
諸諸のダンテル紙には諸君自身の電話番号が走り書きされているであろう、
今直ぐに止めてくれ、
嗤った傷口から阿片色の繃帯が溢れて已まないのだ、
少女‐少年‐靑年‐老婆
都合百三名の列聖の出来上がりだ、
人間が人間である事を証明し得るのは自らの頸を括る時だけだ、
然して何という黑い断頭臺であろう!!
雛罌粟の紋章の一輪が捺された
叙階名簿から次々と投身をしてゆく聖カエキリアの首が、
聖句を呟くならばガソリンを掛けて焼き殺すが良い、
もんどりうって草臥れ果てた病葉草子の齲歯に射す金環触、
全ては既に遅いが故に時計は皆止まって見えるであろう、
硬化したアンモニュウムの螺貝を裏返すと蠕動性のココ・シャネルが露呈をするだろう、
君は遠くに僕は近くに、
あなたがたは此処から飛降りる事さえ適わない愚図だ、
死に方を教えて遣ろう、
諸君は何時でも百羽の鸚鵡を籠に閉じ込めていて、
その鳴き方を眞似しているに過ぎない、
自身の鑰を所有している心算が
自身の籠の内に決して入る事は決して叶わない、
餞別の百鳥百花図譜さえも
誰も総覧する事は適わないのだ、
一億の号令に跨って新しい時代がやって来る!!
新しい時代は何時も血と水を垂れ流し、
葡萄の貨幣の骸骨しか遺らないであろう、
死の舞踏譜を企図をしたのは一體誰であったのか、
通牒紙は信用に耐え得るエニグマを諸君に遺したのであったか、
それも全てが終る昨日に於いて白紙と為って仕舞った、
ホルムズ海峡に核爆弾を投下する
われらが正義の母国「アメリカ」に哀悼の斬肝状を贈り、
空母の母を撃つ鳩群の死骸を
燔祭の生贄として奉り、
より佳い世界戦争の到来と
より佳いメシアの再来に備えつつ、
豚の肝臓を裁く贋教皇への哀悼の記帖とさせて頂きたい、

 

何時でも誤報が鳴り響き、
何時でも鐘は鳴らされる、

 

あの日あの時、傳えたかったやわらかな春の木洩れ日のなかで、
うつくしい日本語を流暢に喋っていたのはアメリカのピアニストであって、
薔薇の鐘にむらさきの舌を差し出だすひどく餓えた被曝の少年は、
丁度直射光から箪笥の影になっていたので、
火傷をほぼ負わずに済んだのだけれど、
外に急いで飛び出して見ると馬車馬は仰向けに黒焦げになって、
馬丁さんは背中に附いた火をひどくおそろしい、
けだものの様な聲をあげて振り払おうとして
走り廻っていた、
ふと山の手のほうを見るとおおきな柱のような雲があがっていて、
僕はなにが起きたかよくわからなかった、

 

嘔吐、下痢、髪が抜ける等の症状がはじまったのはその日から
三日目のことだったと覚えています、
ほら、癖っ毛でしょう。ですから櫛で髪を梳くとごっそりと、
蛇かみみずがのたくった様な黑いものが落ちますと、
ああ、もうどうでもいい、このまま死ねたなら、と思った事を覚えています、

 

咽喉が渇く、
誰の所為か
誰の仕打ちか
誰の慈悲か、
そう呪うべき聲がもう無い、
咽喉は爆風で焼け爛れ、
しゅう、しゅう、としか音が鳴らない、
壊れた管樂器の様に為って、
脇腹に目を遣ると、
割れた無花果の胴の様に、
臓物が零れ出していることに気づいた、
これでは、水を飲む事も
炒米をかっ喰らうこともできない、

 

破れた嚢が目に入った、
蛆虫の様に焼け焦げた銅銭が
ばら、
ばら、
ばら、
と吹き出して日に炙られていた、
俺のはらわたも似た様なもので
もはや、臓器商人に売る臓器も残っていないのだと思うと、
何もかもが急に莫迦莫迦しくなって、
鳴らない咽喉で
しゅう、しゅう、と笑っていた、

 

死んでほしい程憎み蔑んでいた父母、兄弟姉妹が
ふと懐かしくなった、

 

尤も、何処かで黑い骸になって燃え燻っているのだろうが、
侮蔑、等という日常の些末が心底どうでもよくなった、

 

或るオンラインサイト――破滅派とかいったっけ、
そこに今はもうない屈託を投稿してやろうと息巻いていたのが、
心底馬鹿馬鹿しい矮小な自尊心であることが、恥ずかしくなった、

 

孰れにせよ、この曝心の影響だ、
物体としてのサーバーも只では済まないだろう、

 

細細とした憎悪を振り撒いていたかれらも元気かな、
などと息も絶え絶えの俺が言うのも可笑しな話だが、

 

そんなことが気に掛かった、

 

もう眠いから、
目を閉じてもいいかな、
焼け焦げた目蓋が降りるのを、
必死で繋ぎ止めようとして、
無駄だと知る、

 

何だ、俺のほうがみんなより先に死にそうじゃないか、
焼き切れた、咽喉で笑った、

 

――2026年8月、戦後81回忌、或る世界上にて核兵器が使用された、「或は」の記録

© 2026 鷹枕可 ( 2026年3月11日公開

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