おれはこの世の悪事の三割を負担している……。たとえば、あのピラミッドというものを逆さまに設置し直し、ツタンカーメンの配色を逆にし、あのモナ・リザの手の位置を上下逆さまにしたのだっておれだ……。カメレオンがなぜ変色するか知っているか……。おれから逃れるためだ……。黒色の目が視えているぞ……。注射器を持ち、桃色の薄い表情をした憎たらしいあの看護婦が歴史的な生物学について喋っている……。チョコレートの菓子が流れ込んでくる感触がする……。精神汚染を受けた白衣の患者たちはいつでもカルテを読み込んでいる……。そうしていないとやつらは保てないのだ。自らが精神病患者とは異なる世界に立つことを強いられている事実に耐えられない。階段を駆け上がり、隔離病棟の中で朝焼けを視て投薬を指示する連中……。
「どうしておれたちがポッキーゲームをしなければならないのか……」
その議題についてどんな大学も明確な答えを出すことができずにいる。連中は統合失調症や特異な神経系の先天的な問題について、その特異性のきっかけや予兆を暴露することさえできていない。まだ完了していないのだ。どの大学のどんな聡明な教授連中も、頭の中で常に個人的で偏屈な、少し気取った色とりどりの会議を開催しているものなのだ……。その情報がどこかに漏洩することはありえないし、誰か別の学者に共有されることもありえない。
「やつらは喋ることが嫌いなのか……?」疑問と同時に応えが明確に浮かび上がってくる。「やつらは人に伝えたがるはずなのに……」
街のどんな刑事だって検察官だって死刑囚を研究している医者だって、牧師でさえ、教授連中を逮捕したいと思っている……。二年前のあらゆる騒動の主犯だと誰もが新聞紙の裏側でヒソヒソ会話を交わしている……。組織のごく少数の警察官はその事実に気付いている……。どんな阿呆な警部だって、学者が何か隠し事をしているのだと気付いている……。しかし逮捕しない。発言しない。コーラと炭酸水を間違えて挿入しない。カタツムリを食べたり吐き出したり、ミートソースでマシンガンを連想しない。そんなことは山羊のすることだ……。警察連中は金属製の輪を持つだけで満足する。稀に回転式拳銃を使って乱射事件を発生させる。波打つ警部が呟いている。火炎放射器なんて知らない……。
「だってあれは世界大戦の武器だろう?」と街中の警部が酒と共に呟いている。劈いた悲鳴がする……。あらゆる街の中のコンビニエンスストアの中で、炸裂した火炎が店員を包む事件が発生する……。どうしてあの連中に限って、新鮮なポッキーゲームをしているのだろうか……。やはり時期というものなのか。そういった数学的な恋愛の出来事というものがなんにでも発生するのだろうか。存在しているとでもいうのだろうか……。太陽が昇る時期や夕暮れが溶けてゆく時期……、昆虫たちが交尾をして新しい生命に道を繋げる時期というものも定められている……。私念に溢れた独りきりの男が、よれよれのシャツの下から火炎放射器を取り出している……。路地裏で液体を被り、そのままコンビニエンスストアの中に入ってゆく……。どうして彼はそんな薄い隙間から火炎放射器を取り出すことに成功したのか……。なぜ彼女は、濡れた男が自動の入店退店専用扉を越えて入ってくることをいかにも教授らしく止めることができなかったのか、という部分についてコンビニエンスストア店員たちは議論しない……。
おい、やつは放火犯だ……。おい、おい、チクショウ、気をつけろといっただろう……。火炎が商品棚に陳列されて焦げてゆく……。
「まったくふざけた展覧会だ……」
火炎の中で身体が溶けてゆくことがわかる……。視界の全ての白色が熱されて溶けている……。全ての商品棚が焼け焦げている……。天井が砕けて伸びてしまっていることがよく視える……。消防士はまだなのか、それとも医療係は……? 燃え盛るコンビニエンスストアの中で警部たちが口々にキスしている……。事件現場の中心地点でカマキリがカマキリを食らっている様子が中継されている……。長い長い手足を啜るように咀嚼して互いの三角形の顔面が近づいてゆく……。ピラミッドを逆さまにしたような三角形……。ぼくは君とセックスなんてしなければよかった。
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