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分け入っても分け入っても深い闇

積 緋露雪

老齢に入ってもまだ、現在に藻掻き苦しむことの面白さは格別である。

タグ: #散文詩 #自由詩

604文字

山頭火に「分け入っても分け入っても青い山」と傑作の句があるが、
去来現のうち現在にいつも置いて行かれる現存在としてある私は
去来現の来、つまり、未来に向かって分け入るのであるが、
頭蓋内の五蘊場では過去と未来を行ったり来たりしながらの道行きであるから、
私の場合は「分け入っても分け入っても深い闇」となる。
だからといって、私は大の闇好きであるから、
深い闇へと分け入るのが楽しくて仕方がない。
未来に希望を見て、それが光輝くことはなく、
仮に光輝いて見えるのは、
単に錯覚してゐるだけで、誤謬である。
未来は過去と往き来できる蓋然性がある故に闇ばかりである。
だから未来は面白いのである。
闇の中に深く深く分け入るのであるからこんなに面白いことはない。
手探りでしか闇の中では進めぬから、
何にかを見出したならば、
僥倖でしかない。
しかし、それが正しく人生といふものだ。
あるものは未来により報はれ、
あるものは全く未来に報はれることなく
人生に幕を下ろすから生きるのは面白いのである。
これが、平等に幸運が皆に振り分けられてゐるのであれば、
これほど人生が面白くないことはない。
人生で金の鉱脈を見つけるものもいれば、
何にも見つけられず、
恨み辛みで人生を終へることになるものもいればこそ、
人間は生きる活力を享るのである。

分け入っても分け入っても深い闇
これこそ人生の醍醐味もなのである。
誰もが暗中模索できる自由がある限り、
人生はげに面白いのである。

© 2023 積 緋露雪 ( 2023年4月30日公開

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