一疋の鷹が岩礁に留まつてゐた。
隣には鷹匠の男が立つてゐた
菅笠が風に呷られてゐた。
鷹は悠々と佇んでゐた。
さうして男の鞢に留まった。
波は厳荘としてゐた。
寸分の憂ひさへ在つた。
岩礁に砕けて悲しさうに哄つてゐた。
鷹匠の男は荒磯から波濤を俯瞰してゐた。
静かな朝であつた。それでゐて喧騒であつた。
ほんの少しの優美さへ在つた。
鷹は悠々と佇んでゐた。
悲しみばかりが彼らへの救済であつた。
波は厳荘としてゐた。寸分の苦しみさへ在つた。
波は騒擾としてゐた。
鷹は悠々と佇んでゐた。
波は蕭然としてゐた。
寸分の虚しさを混ぜた、充実した、しかしどこか焦燥とした波だつた。
一疋の鷹は岩礁に留まつた。
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