模倣犯 第二幕

模倣犯(第2話)

gehena

小説

341文字

「終幕」
非常に心地が良いのはなぜだろう。
 僕はもう自由の身だな。
 生とか死とかそんな軽い次元にはいないのです。
 もっと大切なもので大事な人とつながれている快感。
 僕の人生に幕が下りた。
 終わりです。

確か、最初に話しかけられたのはちょうど1年前だろうか。
冬、寒い日。
白髭と白髪を生やした老人が話しかけてきた、気がする。
もちろん、話した内容は全く覚えていない。
さほど重要でもないので忘れてしまったのだ。

僕はその日以来、彼の話を毎日聞き続けた。

全く迷惑な話である。
帰り道に名も知らぬ老人に淡泊な妄想を聞かされるのだ。
自分としては一刻も早く家に帰りたいのだが、人間の本能だろうか、老人に声を掛けられた時、それを無視できないのだ。あるいは自分が作り出した強迫観念かもしれない。いずれにせよ善意は全くない。そう、全くないのである。

と、そんなことを考えつつ寝床につくわけであるが布団の中に入ってからは何も考えなかった。何も考えずただ力が抜けた。
理想の入眠状態である。

これが僕の最後の安眠である。

2023年12月21日公開

作品集『模倣犯』第2話 (全4話)

© 2023 gehena

読み終えたらレビューしてください

この作品のタグ

リストに追加する

リスト機能とは、気になる作品をまとめておける機能です。公開と非公開が選べますので、 短編集として公開したり、お気に入りのリストとしてこっそり楽しむこともできます。


リスト機能を利用するにはログインする必要があります。

あなたの反応

ログインすると、星の数によって冷酷な評価を突きつけることができます。

作品の知性

作品の完成度

作品の構成

作品から得た感情

作品を読んで

作者の印象


この作品にはまだレビューがありません。ぜひレビューを残してください。

破滅チャートとは

"模倣犯 第二幕"へのコメント 0

コメントがありません。 寂しいので、ぜひコメントを残してください。

コメントを残してください

コメントをするにはユーザー登録をした上で ログインする必要があります。

作品に戻る