XV
ねえ、デートしようよ。
あの子がわたしをじっと見る。睨むように見る。
イヤ、なのかな?
そうじゃないけど。なんで?
好き、だから?
そう、ありがと。
予想しづらい彼女の反応にわたしはちょっと苦戦する。
私の写真、撮る?
どうしようかな。こっそり撮るのがいいんだよ。ここで撮る、なんて言ったらこっそりじゃなくなっちゃうし。
でも、ばれてるよ。
わたしの気持ちとかブライドとか、そういう問題。たぶん。
そうなんだ。
どこか気のない返事の後、失念していた肝心の答えをやっと思い出したように、しばらくしてから「いいよ」とあの子が言った。
写真、撮る?、なんて愚問でしょ。と、わたしは心の中で思っていた。撮るに決まってるじゃない。あの子をデートに誘った理由はいくつかある。近距離の盗み撮りがひとつ。でも、一番の目的は、私服の彼女を撮ること、かな。お休みの日、友達とのお出かけで、さすがに制服は着てこないでしょ。そういう常識は持っているはず。彼女が普段どんな私服を着ているのかわからない。想像してみるけれどわたしの脳内では制服姿が結構強固なデフォルトイメージになっていて、どんな服を着せてみてもしっくりこない。正直、それほどセンス、良さそうでもないし。そのあたりの謎を解明して、わたしの彼女に対するイマジネーションに刺激を与える。
さて、どこに連れて行こうかな。
どこへ行くの、何しにいくの、と彼女は聞かない。だからわたしもどこへゆくのか、何しにいくのか伝えないことにする。
わたしはなるべく彼女に不似合いなシチュエーションを考えてみる。もちろん“健全”な範囲でね。カワイイカフェや雑貨屋さんはどうだろう、と、考えてみたけどこれはまあまあしっくりはまってしまう。カワイイ場所は、わたしが彼女を可愛いと思ってている分馴染みやすいみたい。私服と言えば、あの子どこで洋服買ってるんだろう。彼女が洋服屋さんで自分の洋服を選んでいる姿はあまり想像できないな。私服姿のあの子と併せて是非見てみたい。人通りの多い賑やかな街をあの子はどんな顔して歩くんだろう。人混みに紛れてしまう彼女の姿を見てみたい。
撮りためた彼女の写真を眺めながら、約束の日を心待ちにするわたし、だったよ。
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